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『38万キロの虚空』スペースコロニーは果たして人類の新たな居住空間になりうるのか?

賢者の塔 71F/No.0241

システムサコム「ノヴェルウェア」シリーズ第5弾。

今回はシステムサコムが後年に注力した「ノヴェルウェア」の第五弾である「38万キロの虚空」の案内をするぞい。

「ノヴェルウェア」っていうのはあまり聞きなれない言葉ね?どういうものなのか気になるわ!

本記事を読み進める前に…

本記事を読み進める前に、以下の点についてご了承願います。

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  • 筆者は本作品において、100%の知識と十分なプレイ経験を持っているとは限りません。誤りがある部分については、コメントにて優しくご指摘よろしくお願いします。
  • 記事に書かれている内容についてはあくまで投稿時の状況や筆者の認識であり、現在の状況や筆者の認識と必ずしも同じではない場合があります。ご了承ください。

38万キロの虚空の基本情報と概要

本作の基本情報

タイトル38万キロの虚空
シリーズノヴェルウェアシリーズ
ジャンルコマンド選択式アドベンチャーゲーム
発売年1989年
販売/開発システムサコム
発売機種PC-9801、X68000、FM-TOWNS
前作ソフトでハードな物語Ⅱ(※)
後作闇の血族(※)
※シリーズとしての前後作であり、作品としての繋がりは無い

本作の概要

システムサコムが発売した「ノヴェルウェアシリーズ」の第五弾にあたる作品。プレイヤーは、人類初のスペースコロニー(SC)のオープンセレモニーに先駆けたマスコミ用の視察に招かれたONN記者「相場謙」となって、SCの安全性や問題を取材しつつ、突如SC内で発生した事件を解決し、最終的にSC計画の裏に潜む陰謀を暴くのが目的となっている。

プレイヤーが行える行動が、従来のアドベンチャーゲーム(ADV)のような共通で用意された「行動」と「名詞」の組み合わせによる選択ではなく、その状況に合わせて用意された3つの具体的な内容(行動や台詞)から選択するものであったり、今の状況に対して自分がとるスタンス(立場)を批判的・好意的・中立的から選んだりするものであったりという特殊な仕様が特徴。

ちなみに本作は、日本で始めて「MIDI音源」に対応した作品としても有名である。

ノヴェルウェアシリーズとは

シリーズの概要

「ノヴェルウェアシリーズ」は、1988年から1991年までにかけて全部で7作発売されたシステムサコムのアドベンチャーゲームシリーズである。「ノヴェルウェア」という言葉は、「ノベル(小説)」と「ソフトウェア」をくっ付けた造語であり、その名の通りゲーム性よりテキストを読む事に重点が置かれたシリーズとなっている。

ノヴェルウェア第一弾「ドーム」

ジャンルとしては「コマンド選択式アドベンチャーゲーム(ADV)」に類するが、従来のADVに比べてテキスト量が圧倒的に多く、一方で従来のADVと比べてプレイヤーが介入できる部分、さらにビジュアルによる表現部分が圧倒的に少ないのが特徴。テキストを読み進めながらたまに表示される選択肢を選んでいき、その選択によって展開が少し変わったり、エンディングが変わったりする。

当時は技術の進歩によりビジュアルで訴えかけるADVが主流だったのもあってか本シリーズは発売時にはそこまでヒットしなかったものの、1990年代に一世を風靡した「弟切草」や「かまいたちの夜」などに始まる「ノベルゲーム(サウンドノベル)」は、このノヴェルウェアがその源流とも言われている。

シリーズ作品一覧

Vol.タイトル発売年
第一弾ドーム1988年
第ニ弾ソフトでハードな物語1988年
第三弾シャティ(※)1988年
第四弾ソフトでハードな物語Ⅱ1989年
第五弾38万キロの虚空1989年
第六弾闇の血族1990年
第七弾闇の血族 -完結編-1990年
※本来の順番では第二弾だったが、諸事情によりソフトでハードな物語の方が先に発売された。

ちなみにシリーズ第一弾である「ドーム」の原作は、あの夏樹静子氏の「ドーム 人類の箱舟」じゃな

へー!あのサスペンスとかミステリードラマで有名な夏樹静子さんの?

ストーリーと登場人物

スペースコロニーへの移住計画に絡む陰謀

西暦2049年。地球人口は増加の一途をたどり、まさに飽和状態をむかえていた。

増え続ける人口に対し居住可能土地面積は増えることはなく、超高層化された住宅施設にも限界があった。そして住環境以外にも、増大した人類の生活を支えるための資源の枯渇、自動化された産業構造の結果の失業者増加など、地球はもはや閉鎖系の一環境の限界に達してしまったのである。

この状況を打破するために世界各国が共同で開始した事業、それが宇宙移民計画である。

太陽系小惑星資源をもとに、アメリカが主導して開始されたこの計画は、地球人類を宇宙空間に移住させ、新たな社会構造を築こうというものであった。人工の居住空間”宇宙移民島=スペースコロニー(SC)”を作り、地球の余剰人口を軌道上の無限の空間に住ませる。最終的には月への移住をも目標とするこの計画は、様々な困難を乗り越えながら一歩一歩進められてきた。

そして2049年、計画の最初の成果であるSCが遂に完成した。

主な登場人物

《相場 謙》
本作の主人公であり、プレイヤーの分身となる人物。日本人。日本在住だがアメリカの「ONN(オンラインニューズネット)」社会部に在籍する事件記者。なぜ自分がSCの取材クルーに選ばれたのかもよく解っておらず、SC計画についてもまだよく解っていないため現時点では「中立」という立場。同行する同僚達のように宇宙工学にも政治経済にも詳しくはないが、事件記者なだけあって人間の心理的な変化を感じ取れる能力がある。

《リンダ・サンプソン》
大手テレネット「ABC」の人気女性キャスター。出来事を批判的に捉えるニュースが得意で、その姿勢からアメリカの特に独身男性に圧倒的支持を得ている。本来であれば今回のSC取材にはABCの別の人気キャスターが取材に来る予定だったが、その人物がSCへの不振から取材を断わったため、彼女に白羽の矢が立った。

《ステファン・ベルドリッチ》
ONNに所属する国際政治系担当記者で謙の同僚(だが実際に顔を合わせるのは今回が初めて)。SC計画には過去に起きた宇宙基地爆発事件の事もあって懐疑的。SCの取材についても政治的経済的視点で計画にまつわる疑惑や問題を探し出そうとしている。昔、リンダと恋仲を噂されたことがあった。

《ドワイト》
ONNに所属する技術系担当記者で同じく謙の同僚。宇宙工学に造詣が深く、コンピュータ技術者としてもかなりの腕前を持っている。科学を信奉しているので人類の未来のためにもSC計画には肯定的だが、一方で実際の技術的な問題点については冷静に受け入れる部分もある。

《アレックス》
ONNにおける謙、ステファン、ドワイトの上司。今回取材に同行せず、地上から謙たちの送ってくる記事の評価をする(ヘビースモーカーなので、煙草が吸えない宇宙に行きたがらなかったとか)。

《ジャック・ドレイファス》
謙が事件記事を書く上で頼っている情報源のひとつだが直接的な面識はなく、彼がどこで何をしている人物で、いったいどこから情報を得ているのかなどは不明。謙がSCの取材クルーに決定したことを知り、謙に妙なアドバイスをする。

38万キロの虚空のシステムや特徴

画面構成と操作方法

本作の画面は以下のような機能で構成されている。

メインウィンドウ。
主に主人公である「相場謙」の発言やモノローグ、見えているものの説明などが表示される。
ビジュアルウィンドウ。
現在の情景や回想のイメージが表示される。
会話ウィンドウ。
謙以外の人物の会話内容が表示される。ウィンドウは人物単位であり、同時に会話する人物が増えるとウィンドウも増える。
コマンドウィンドウ。
常に表示されているわけではなく、主人公の何かしらの行動(思考)が必要になった場合に表示される。

本作の画面は「ノヴェルウェア」というだけあって、通常のADVに比べて画面に対して文字が占める割合が多くなっており、またビジュアルウィンドウに表示される画像も頻繁に変わったりもしないし、アニメーションもするわけでもない。しかもモノクロ表示を非常に地味でありこの時期のビジュアルを前面に出したADVと一線を画すものになっていた。

操作方法については、コマンドウィンドウが表示された場合にはカーソルキーの上下でコマンドを選択、スペースキーでコマンドの決定と非常にシンプルなものになっている。またゲーム中はリターンキーを押すことでいつでもシステムコマンドのウィンドウを表示されることが出来、メッセージスピードの変更や、ゲームのセーブ/ロードなどが可能になっていた。

画面があちこち文字だらけで、クラクラしちゃうわねこのゲーム…

ちなみにシステムコマンドから、ビジュアルウィンドウを非表示にすることも可能じゃぞ?

挿絵すらねぇ!

ゲームはスケジュールに沿って進行

本作で主人公である謙は、SCのオープンセレモニーに先駆けたマスコミへの事前公開に取材スタッフとして参加することになるのだが、これはSCを管理する企業「NSCA(ナショナル・スペース・コロニー・アソシエーション)」からの招待ということになるため、基本的にNSCAによって行動スケジュールが事前に決められており、そのスケジュールの中でプレイヤーは行動することになる。

スケジュールについては以下のようになっており、ゲームとしては軌道エレベーターに乗るところから始まり、オープンセレモニー当日を迎えることでエンディングとなるが、基本的にこの流れについてはプレイヤーの意志でタイミングなどを変えることはできず、ゲームを読み進めることで強制的にどんどんスケジュールは進んでいく。

初日軌道エレベーター
宇宙ステーション
SC行きシャトル(※)
2日目SC視察(1日目)
3日目SC視察(2日目)
4日目SC視察(3日目)
最終日オープンセレモニー
(※)実際はシャトルの中で3日間過ごす

また本作は「ノベル(小説)」らしく第1章~第8章までの「章」でも区切りられており、こちらはスケジュールの区切りとは関係なく、あくまで物語の区切りで章が変わるというようになっていた。その為、ひとつの章の長さはまちまちとなっている。

選択肢(行動について)

一般的なADVでのゲームの進め方と言うのは、いくつもあるコマンドからその場面に必要なものを選択・実行して、そのリアクションにより次の行動を決めていくというものが殆どだが、本作が一般的なADVと大きく違うところは、ゲームの基本的な進め方は選択肢を選ぶことよりも、とにかく流れてくるテキストをひたすら読むことだという部分である。

本作においては、プレイヤーが何もしなくてもどんどん画面にテキストが流れていき、人々の会話が流れていき、物語は勝手に進んでいってしまうので、兎に角それを追いかけていく必要があるのだ。

ではプレイヤーの介入できる部分はどこにあるのかというと、しばらくテキストを読み続けていると、あるタイミングで画面に選択肢が表示されるので、ここでその状況で主人公である謙にとらせる行動を3つの選択肢から選ぶ事が出来るのだ。そしてここで選んだ選択肢により、それに該当するリアクションが帰ってきたり話の展開が変わってくるようになっている。

ただし注意する必要があり、従来のADVのようにひとつの選択肢を選んだ後に別の選択肢を選べたり、何度も同じ選択肢を選んだりということは出来ず、3つの選択肢の中から何かを選んだらこのタイミングでの選択は終了となり強制的に話が先に進んでしまうのである。ちなみに当時こういった仕様のADVは非常に珍しかった。

こういう選択肢が出てくるゲームって今では普通にあるけど、当時はまだ珍しかったのね?

あんまり無かったと思うのう。近いのだと同じ1989年に発売された「バーニングポイント(エニックス)」あたりか?

選択肢(立場について)

本作においてゲーム中にプレイヤーが介入する事が出来る選択肢には謙(プレイヤー)の「行動」を決めるものとは別に、謙の「立場」を決める選択肢というのも存在した。

立場とはどういうものかというと、物語の冒頭にて謙は上司からSCに対する自分の立場を明確にして記事を書けと言われる。そのためゲーム中のあるタイミングで、プレイヤーは現在の状況に対する自分の立場を否定的、好意的、中立的の3つから選択することを求められるのである。そしてプレイヤーが選択した「立場」を謙はメモに残し、それに従って後々記事を書くことになるのだ。

この「立場の選択」は前述の「行動の選択」とも間接的に関係している。自分の立場というのを決定するには当然だが「情報」が必要になるわけで、そしてゲーム中に得られる情報は選択した行動によって変わってくることもあるのだ。なぜなら当たり前だが批判的な立場の人に意見を求めれば、批判的な情報が帰ってくるのだからその情報に流されれば立場も批判的なものに流されやすくなるのだから。

1日の最後には記事編集作業

SCでの1日目と2日目の終わりには、これまでのことを纏めて記事を編集しパブリックネット(この世界のインターネット)にアップする作業が入る。しかしこれはプレイヤーが実際に書くわけではなく、その日に謙が記録した前述の立場のメモを元に謙自身が自動で記事を書いてくれるのだが、実はこの時にもプレイヤーの介入するタイミングが発生する。

それは、残したメモの立場を元に記事を書く際に、思うままに書く、薄めて書く、書かないという選択で、例えば批判的な立場でメモした内容について、遠慮無しに批判をぶちまけるか、ちょっと手加減しておくか、あえてそこには触れない(書かない)というのを選べるのだ。そして出来上がった記事はネットワークにアップされ、その内容によって翌日に上司であるアレックスや、記事を読んだ様々な人物たちから反応がある。

SC計画に対して好意的なことを書くと、SC計画に反対している(またはそれにより不利益を被る)であろう人物たちから、ツイッターのクソリプのような反応が返ってくるのは妙にリアルで面白いところだ。

この時点で、メモした立場を変えることはできないの?

出来んのじゃよ。なんで立場を間違ったと思ったら控えめに書くか、いっそ書かないかという選択じゃな

データベースで基礎知識を

選択肢によるゲームへの介入とはちょっと違うが、本作ではあるタイミングでプレイヤーがこの世界で用意されているとある「データベース」を閲覧する事が出来る。

ゲーム中にテキストで表示される内容はテンポを落とさないためか、用語や団体・組織名、過去の事件などについて、その世界の人間なので知っているという前提で詳しく触れられないまま話が進んでいく事がわりとある。そういうものに対してはデータベースを閲覧して、そこで用語、団体・組織名、事件などについて調べる事ができるのだ。

データベースの閲覧はゲーム上必須になる行為ではないのだが、本作の物語には政治経済、団体や国家の利益、または組織の陰謀、人物関係のパワーバランスなどが絡んでくるので、データベースをしっかり読んでおけば、物語の表面に出てこない裏の部分もかなり見えてくるだろう。

重要人物たちの「関連付け」

本作の中盤辺りにおいて、主人公はあるとんでもない事件に巻き込まれる。しかしこの事件そのものは解決するのだが、その事件の裏で「本当の陰謀」が企てられていると知った主人公は、物語のラストにおいて誰が陰謀の黒幕なのかを推理することになる。

推理とは言ったが、実際ここでプレイヤーが行うのは陰謀の推理ではなく「人間関係の整理」、このSC計画に関わる企業や団体の重要人物、この人物たちの関連付けを行うのだ。具体的にはコンピュータ端末(作中では「メモパッド」)上にある重要人物のリストから一人を選び、今度は関係者のリストから一人を選んで「関連性がある」と設定するのだが、これが非常に難しい。

というのもリストに出てくる重要人物も関係者も、その殆どが謙が(プレイヤーも)一度もあった事がない人物ばかりなのだ。一般的な刑事探偵もののADVならプレイヤー自身が重要人物や関係者に聞き込みをして、それにより関連付けがされていくものなのだが、全く会ったこともなく誰かの会話の中にちょっと出てきていた情報だけで、陰謀に関係するような人間関係の整理なんて出来るわけがない。

前述したようにデータベースで勉強していればある程度は関係も見えるのだが、それでも正直情報が足りない。その為、カンニングではないがこの作業をするときは、端末(メモパッド)やネットワークを使用して重要人物や過去の事件などの情報を調べる事が出来るので、これを隅々まで調べ上げればなんとか関連付けを完了することは可能だろう。

そして見事関連付けを終える事が出来たならば、コマンドから「推理完了」を押すことで物語は解決編へと進んでいくのである。ちなみに関連付けは100%正解でなくても良いらしいが、全くやらない(または情報があまりに少ない状態)で推理完了しても、やり直しになるので注意である。

これ…めっちゃ面倒くさい作業ね…。しかもゲーム中の説明だけじゃどうすればいいのか解りづらいし…

最後の重要な部分なのにマニュアルにも記載が無く、一応ゲーム中にHELP機能があるんじゃが正直読んでもよく解らんのじゃよな

日本発の「MIDI音源」対応作品

本作の特徴についての最後は、本作の音楽についてである。本作はここまで説明してきたように、ビジュアル面での押しが弱く、プレイヤーがゲームに介入できるところも少なく、ゲーム中はテキストを読まされている時間が多いという作品なのだが、その分雰囲気のある良質のBGMが適切なタイミングで流れゲームの盛り上げに大きく貢献していた。

本作でゲーム中に使用されているBGMは、ノヴェルウェアシリーズの音楽を担当していた「斉藤学」氏によって作曲されたもので、彼の作った曲は非常に評判が高く、現在でもゲーム音楽の話題に本作の名前が挙げられる事も多々あり、早世した氏を惜しむ声も多く聞かれる。

「斉藤 学」

システムサコムにて多くの作品の作曲を担当したゲーム音楽家であり、最初はアルバイトとして参加していたが後に正社員となる。その後ノヴェルウェアシリーズの音楽、また「38万キロの虚空」においては日本初のMIDI音源対応などを手がけるが、1992年に22歳という若さで腎不全のため死去した。

また本作は日本発のMIDI音源対応作品としても知られており、FM音源とはまた違うその深みとリアリティのある音楽は必聴の価値ありである。「38万キロの虚空」についてはサントラなども発売されていたが、現在ではプレミア価格となってしまい入手もなかなか困難な状況である。

これに関しては今現在、ProjectEGGのミュージック配信にて「38万キロの虚空 コンプリート・サウンドトラックス」が発売されており、こちらには作中で使用されたBGMが、PC-98/X68000版のFM音源、MT-32/CM-64版のMIDI音源の4バージョンで収録されているという非常にお得なものとなっているので、気になった方は是非購入をお勧めする(ちなみに曲は全てmp3形式での配信となるので、視聴に特別なソフトや環境は必要ない)。

これわしも購入したぞい。いい曲がいっぱいあるんじゃが中でも”MEMORIAL GLIDE”という曲がお気に入りじゃ!

あー、ジャズっぽい曲好きだもんねぇ?

この曲に限らず全体的にジャズテイストな曲が多いんで、たまらんのですよ!

《物語の大筋》事件記者のいるところ事件は起きる?

2049年宇宙への旅

西暦2049年、ONN社会部に所属する事件記者「相場謙」は軌道エレベータのステーションにいた。

地上から38万キロ上空のラグランジュポイントにコロニーを作成し、そこに人類を移民させようとする「スペース・コロニー計画」。その最初のひとつSC1が完成し、オープンセレモニーをあと数日後に控え、それに先駆けたマスコミ向けの視察取材にONNの代表として謙、そして同僚のステファン、ドワイトの3人は参加することになっていたのだ。

しかし謙は、自分がこの大きなイベントにONNの代表として何故選ばれたのかがいまいち解らないでいた。ステファンは国際政治の面から、ドワイトは宇宙工学の面からそれぞれの担当分野で記事を書けるが、自分は単なる事件記者でありSCに関する知識も高くは無い。選ばれる心当たりといえば、せいぜい最近自分の書いた記事のアクセス数が多かったというくらいである。

ジャックからの忠告

宇宙へ旅立つ3人を見送りに来た上司「アレックス」からの餞別の言葉を聞きながら、謙はあることを思い出していた。それは彼の仕事上の情報源の一人である「ジャック・ドレイファス」の事だった。ジャックは謙がSCの取材に向かうことを知り、珍しくジャックのほうから謙にメッセージを送ってきたのである。

それにはこう書かれていた。
「SCに行くなら、情報の出し入れには気をつけろ。ネットのメッセージも安心するな」
と、まるでネットにアップされる前に情報が漏洩(あるいは検閲)されているかのような事が書かれていたのである。さらには「何かあったらこれを使え」と、メッセージの暗号化プログラムまで送ってきていたのだ。

ジャックからのメッセージに不安のようなものを感じながらも、謙たち3人はアレックスに見送られ、他の報道関係者と軌道エレベータに乗り込む。軌道エレベーターから宇宙ステーションへ向かう道中、ABCの人気女性キャスター「リンダ・サンプソン」と交流を持ちつつ、ステーションからシャトルに乗り換えSCへ着いた謙たちを待っていたのは、とても「歓迎」とは呼べない状況であった。

SCで待っていたもの

謙らを迎えたのは、取材班の案内役を名乗る仏頂面の女性と、武装し銃を構えた警備兵達だった。SCに入るための身体チェックだという案内役の女性だったが、余りに物々しく緊張した雰囲気に何か裏があるのではないかと感じる謙。それでも身体チェックを終え、宿泊用に充てがわれた住宅に到着した謙は、ここまでの出来事を記事にまとめ、パブリックネットにアップしてから就寝した。

翌日、昨日アップした記事についてのアレックスの批評や、記事を読んだ閲覧者からの反応メールに目を通す謙。しかしそのメールの中に差出人不明のものが入っており、そのメールにはこう書かれていた。

「SCは乗っ取られている」

それは荒唐無稽な内容ののメッセージだったが、しかしそう考えればあの異様な緊張感に包まれた身体チェックも、またジャックの妙なアドバイスも腑に落ちる点がある。このメッセージを信頼できるものとしこれから行動するのか、悪質なデマだと無視するのか、あるいは信頼できるものとしつつ敢えて静観するのか、それはプレイヤーの選択如何なのだ。

よく「探偵のいるところ事件は起きる」などと言うが、本作ではまるで宇宙工学も国際政治も門外漢である「事件記者の謙がいるところ」だから事件が起きる、とでも言うかのような展開になる。それこそ荒唐無稽な話にも思えるのだが、実はそれが当たらずとも遠からずか?というところがこの物語のキモなので、是非そこをプレイして確認して欲しい。

《注目点》3つの視点から描くコロニーのリアリティ

前述の物語本筋以降の内容については、プレイヤーの選択如何で変化があるので、ストーリーのここがこうだったと言う話はし難い。そこで注目して欲しい点として、本作が本作の舞台であり大きなテーマでもあるSCの存在について、3つの視点からのリアルに描いていると言う話をしたい。

宇宙工学的視点

本作では、単に「未来はSCに人が住めるよ、やったね!」という空想レベルのものではなく、SCは地球に住む人間が「移民するもの」であり、かつSCはひとつだけでなく今後は増やしていくという計画である事が「現実的」に考えられ描かれているのだ。

まずは宇宙工学的な視点である。例えばだがひとつのSCには最大で50万人が移住できるらしいのだが、順次移民を進めていくうえで人が移動するたびに、毎回大量の燃料を消費してロケットなりスペースシャトルなりでSCに運ぶことになるのか?となるわけだが、それに対して本作では地上から「軌道エレベーター」で宇宙ステーションまで行き、そこからシャトルでSCに行くというプロセスが描写されていた。

軌道エレベーターというと、OVA版の銀河英雄伝説にも登場してたわね

結構昔から小説やアニメなどでも軌道エレベーターは登場しておるのじゃが、ゲーム作品でとなるとこの時期だとこの作品の他に思いつかんのう…

他にも正直筆者は宇宙工学については詳しくは無いが、シャトルからSCへのアプローチの理屈や、SC内での自給自足が可能な理屈など事細かに設定されており、非常に納得すると共にゲームのスタッフはどれだけ勉強したんだろうと感心してしまった程である。

国際経済的視点

次は国際経済という視点である。

また作品内の世界では人口の増加と「ある問題」によって決して住みやすい世界ではなくなっており、特に日本やアジア諸国ではその状況がより深刻なものになっている。そんな状況でSCという快適に生活できる空間(しかも一軒家も与えられる)へ移住ができるとなれば、どういう人達が移住したがるだろうか?もしそうなると困るのはどういう国だろうか?

ちなみに「ある問題」については非常に面白い内容だったので、後述する。

またSCはほぼ自給自足が可能であり、地球上の資源を必要としない。そういうものが増えていけば、地球上で資源によって利益を得ていた国々はどうなるだろうか?そしてそういう国々はSC計画に対してどんなリアクションを取るだろうか?そういった政治経済的な面からの話も、薄寒くなるほどに現実的に描かれていた。

安全面的視点

そして最後、これは物語の冒頭からラストまである意味本作のメインテーマとも言える部分で、「SCの安全面」だ。

もし自分が本当にSCに行くことができるとなった時、絶対考えるのが「本当に安全なのか?」という事だろう。いくら向こうが「安全ですよ」と言ってきても100%の安全などあり得ない。作中でも軌道エレベーターからステーションへ、そこからシャトルでSCへというもしこのどこかででも事故が起きればまず間違いなく死ぬだろうという移動において、主人公や周りの取材スタッフなどの「安全だとしても不安」という様子がよく描かれていた。

今現在使用されている飛行機だって車だって、「絶対の安全」なんて保障はないものね

飛行機で人が移動するようになった時代にも、こういった不安や反対はあったんじゃろうなぁ

また技術的な安全面だけでなく、人為的な問題に対する安全面というのもあるだろう。つまり「テロ」だ。SCは水、食料、エネルギー、そして空気などほぼ自給自足できるようになっているが、もしそういった施設を破壊、または占拠されてしまうと「だったら他から持ってこよう」と簡単にはいかないので、それだけでSCの住人に死の影が落ちることになる。そういった安全面についての不安も作中では多く語られており、そしてこれこそが主人公が遭遇する事件につながるのである。

このように本作では単に夢物語としてのSCではなく、もし本当にSCが存在したら浮き彫りになるであろう危険を技術、政治、犯罪の面でからしっかりと描いているので、非常にリアリティを感じられ物語に没頭させられた。

なるほどね。ドワイトは宇宙工学、ステファンは国際経済、そして謙は犯罪事件とちゃんと「役割」が割り当てられていたのね?

上司のアレックスは人為的な事件が起きると知っていたわけじゃないじゃろうが、起こりうる可能性を考えて謙をメンバーに選んだんじゃろうな

《思った事》2049年の日本はどうなっているのか

本作の世界における2049年には、様々な労働がロボットにより行われるようになっているのだが、これについても空想した未来の実現というだけでは終わらず、それが引き起こす問題がリアルに描かれていた。

ロボットが人間に代わって労働を行うようになれば、当然ながら人間の仕事がなくなってしまう。ただでさえSCを作らなければならないほどに人口の増加が問題になっているのに、その上仕事がないとなればもう不景気とかいうレベルでは無い。なのでこの世界では高い科学技術か溢れている陰で、そこに住む人々は非常に低い生活水準を強いられていたのである。

ちなみに主人公である謙は、東京在住なんじゃが家はもっておらず常に車中箔らしいぞい

2049年は住むところすら容易に得られない時代なのね…

そこで世界的に提唱されたのが、ロボットを導入したらそれに合わせて人間も雇うという「雇用法」だった。それにより雇用法を導入した国家では、失業率は減ったものの国家経済としては成長しないという変な状況になっていたのである。しかしこの雇用法は「強制」では無いため、導入しない国家もあったのだ。それが日本を含むアジア諸国である。

筆者はこれを読んだ時に「普通にありそう」という妙なリアリティを感じた。ことさらここで政治に対する批判をするつもりは無いしそういう論議もしたくないが、ただこんな2049年の日本にはなって欲しくないとは思う。それにしても、30年以上前の作品でこんな未来が予想されていたとは、中々に驚きである。

《最後に》ゲームとして、小説として

では最後に「38万キロの虚空」という「ゲーム作品」についての評価であるが、「ノベルウェア」と名乗るだけあってストーリーはしっかりとしたSF小説であり、最初は説明が多くてちょっと大変だが、話が進むにつれてどんどんのめり込んで、本当に小説を読んでいる時のように先が先がと気になってくる面白い内容だった。また収録されているBGMも文句なしで、良い意味でゲーム離れした良曲が多く、それぞれが適切な場面で使われているのでプレイヤーの物語への没入感を高めてくれる。

ただし、コンセプトである「パソコンで読める小説」という部分に拘りすぎたか、やはりゲームとしてはあまりにビジュアル面が貧弱だったのが、ユーザーが中々食指を動かせなかった原因かもしれない。また従来のADVにあった「見る」「聞く」「話す」といったコマンドではないタイプの選択システムや、「自身のスタンス」を明確にする選択するという試みは画期的で評価できるが、ゲームの内容にそれほど大きな影響を与えないのがちょっと残念でもある。

また「パソコンで読める小説」というコンセプトにしてはちょっと不親切なところもあり、まず初期設定だと画面上のメッセージは全て自動的(強制的)に流れていく、つまり通常のADVのようにメッセージウィンドウがいっぱいになったら一旦止まり、スペースキーなりを押す事で先に進めるというようになっていないので、読み終えていないのにどんどんスクロールしたり、会話が終わった人のウィンドウが勝手に消えたりしてしまうのだ。

一応これはシステムメニューからメッセージのスピードを「∞(無限大)」に設定する事で、従来のADVのような仕様にすることは可能なのだが、であれば初期設定をそっちにして欲しかったと思う(まあゲーム前にマニュアルをちゃんと読めば書かれているのだが)。

ちなみにちょっとフォローしておくと、この自動読み進めの機能は2週目以降遊ぶ際には便利じゃぞ?

ノベルゲームのオートモードみたいなものねw

加えて不親切感があるのは、テキストの巻き戻し機能がない事である。前述のようにメッセージが自動で流れるような仕様であれば、当然プレイヤーが読み終える前にメッセージが流れていってしまうことも多々あるだろう。であればテキストを前に戻す機能は思いついて欲しかった。確かにそれは従来のADVにも無い機能ではあったが、パソコンでとはいえ「小説を読む」というコンセプトならば既読のページに戻るというのは「必ず出来る」機能なのだから。

ということで本作は、結果的にゲームとしても小説としてもやや中途半端な状態だったといえるだろう。ただそれは決して「駄作」という事ではなく、説明してきたとおり十分に名作になれるポテンシャルは持っていたと思う。せめて本作がこの後の作品である「闇の血族」くらいビジュアル面に力を入れていたら、それだけでもかなり目立った作品になったかもしれない。

では最後に、もし本当にSCへの移住が可能になったら、あなたは移住しますか?

遊びたくなったら?

もし今回の記事を読んで38万キロの虚空に触れてみたい、また38万キロの虚空を遊んでみたいと思った方は、以下のサイトを参考にして欲しい。

パソコン版

レトロゲーム配信サイト「ProjectEGG」にて、PC-9801版が現在配信中。また他のノヴェルウェアシリーズも配信されていますので、良ければチェックしてみてください。

≫EXIT

お疲れ様でした!

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コメント

  1. etc. より:

    >コロニーへ…
    「38万キロ~」は、X68Kで遊びました。
    プレイした当時を思い返すとAVGの要素をもっていますがSF小説の趣が強いと思います。
    疑似的に体感できる小説とでもいうのでしょうか。ペーパーアドベンチャー並みの選択肢があるわけでもなく、一定の選択肢によるいくつかの帰結にたどり着くこともないので、また主人公は一介の記者に過ぎないのでそこまで大事に関与する(関与できる)わけではありません。割と淡々とお話が進む印象でした。
    ただ、コロニーというと生物学ではなく、ガンダムに意識がいく当代の人間としては、より現実味のある内容でした。
    ガンダムUCを読んだとき、「以前そんなパソコンゲームがあったな」とも思いました。
    私は、ニュータイプになることを期待して「移住する」を選択します。…でもコミュニケーション英語の点数低いので書類審査で却下されそうです。

  2. ソンゴスキー より:

    >>1
    >主人公は一介の記者に過ぎない
    本作のエンディングについては尻切れ蜻蛉と言ったような意見もありましたが、主人公が元エージェントなり元コマンドーなりであればあの後巨悪と戦う展開みたいなのもあるかもですが、仰ってるように一介の記者ですからね。陰謀を記事にするしかないし、一貫して主人公の視点で描かれていた本作で事件の顛末が描かれていないのであれば「そう言う事だった」と解釈できるとも思うのです。
    > コロニーというと生物学
    一瞬何の話だ?と考えてしまったほどコロニーはSFって認識が刷り込まれてます私w
    そうですよね、コロニーは同種生物の群という意味でもありますもんねw
    > コミュニケーション英語の点数低い
    ニュータイプの素養があるなら、言葉の壁だって越えられるはず!

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