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『メルヘンヴェール I』うぉぉぉぉぉぉぉ!(スペースキー連打

勇者の塔 50F
No.0193

発売年1985年
販売/開発システムサコム
ジャンルアクションRPG
発売機種PC-88、PC-98、X1、FM-7、MSX2、ファミリーコンピューターなど
※画像はすべてPC-98版のものです

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「メルヘンヴェール」とは?

さて、新年最初のレトロゲーム紹介記事ですが、今回紹介するのは「メルヘンヴェール」という作品です。実は、この作品についての紹介記事は最初2012年くらいに荒い下書き程度に書いていたんですが、どういうわけか途中で止めてしまい結局お蔵入りになってたものです。2年以上経過したところで、改めて今回書き直してアップしたいと思います。

「メルヘンヴェール」は、「DOOM」、「38万キロの虚空」などの「ノベルウェア(小説のようなAVG)」で有名な「システムサコム」が、1985年に発売したファンタジーアクションRPGです。

コミカルで可愛いらしい登場キャラクター達に、童話や児童書を思わせるような美しいビジュアルステージ、幻想的なBGM、そしてそれらに似つかわしくない「キツイ難易度」が印象に残る作品でした。

本作はタイトルにわざわざ「I」と表記があるように、最初から続編を作ることが想定されており、物語そのものも本作だけでは完結しない内容になっていました。

実際続編となる「II」は発売されたのですが、PC-98のみで発売されてしまった為、それ以外の機種で「I」を遊んだ人は、その結末が解らないままという悲しい結果になってしまいました。

ちなみに本作は1987年にファミコンディスクシステム版が「サンソフト」から発売されており、こちらの方はグラフィックが劣っていたり内容が若干アレンジされてはいるものの、操作性やスクロールのスムーズさが向上しており、かなり遊びやすい作品になっていました。

案外こちらのほうが知名度が高いかもしれませんね。

ストーリー

フェリクスの森の国王は、自分の愛娘、王女の花婿に相応しい相手を探すために、国中におふれを出しました。国王は集まった花婿候補達に次々と試練を与え、それを乗り越えたも最後の一人を花婿にしようとしたのです。そして最後に2人の若者が残りました。フェリクスの湖の王子と、若者に姿を変えた魔法使いです。

しかし王女は先に湖の王子に心を奪われてしまい、二人は愛を誓い合います。
それに怒った魔法使いは、魔法で王子をフェリクスの遥かかなたに飛ばし、自分は王子の姿になって王女を我が物にようと企てました。

王子が目を覚ますと、そこは見た事もない荒れ果てた世界でした。起き上がった王子は、自分の姿が異様なもの(ヴェール族)の姿に変わっていることを知ります。愕然とする王子ですが、唯一身につけていた王女からの贈り物「アルミラ」、これさえあればどんな姿に変わっていようとも、王女は自分に気がついてくれるはずだ。

王子は姫のいる王国に戻るため、見知らぬ世界を歩き始めるのでした。

ゲームの目的

本作は見下ろし型のアクションRPGとなっており、プレイヤーはテンキーの8/2/4/6キーにて主人公であるフェリクスの王子(以後:王子)を上下左右に動かすことができます。

フィールドは1画面毎の切り替えスクロールとなっており、王子を画面の端(通行可能な場所に限る)まで移動させると、その方向に画面が移動し新たなフィールドが表示されます。

王子を操作し定められた目的を達成すると、そのステージ(本作では「シーン」と呼ぶ)をクリアしたことになり、絵と文章で物語の展開を知ることができる「ヴィジュアルステージ」を挟んだ後、次のシーンに行くことができます。

全部で8つのシーンをクリアするとエンディングになりますが、最初に述べたように本作だけでは物語は完結しません。

シーンクリアの条件は基本的に各シーン毎に定められている目的地に王子を到達させることなのですが、ただそこまで行けば良いという訳ではなく、道中で特定のアイテムを取得したり、特定の怪物を倒したりする必要があり、そのシーンで何を行えばいいのかについては、ヴィジュアルステージにそのヒントが隠されていました。

戦闘

さてゲームの目的は王子を特定の場所まで辿り着かせることなのですが、だからといってそう簡単に目的地まで辿り着けるほど本作は甘いゲームではありません。

フィールドのいたるところに怪物が生息しており、体当たりや弾を吐いて王子を攻撃してきます。スペースキーを押すと王子向いている方向に、王子の剣「アキナケス」から魔力の弾を発射できるので、これで怪物を倒すことができます

画面の上部中央にある「青いバー」は王子の現在の体力(パワー)を現しており、これは敵の体当たりや弾を受けることで減少していき、無くなると即ゲームオーバーになってしまいます。赤いバーは王子の体力の最大値を現しており、回復アイテムなどによりこの値まで体力が回復します。

また赤いバーは「経験値」の意味も持っており、特定の敵を倒す、目的を達成する事でこの値は上昇します。

怪物は種類によって、その場に留まってただ弾を吐くもの、王子が近づくと近寄ってくるもの、一定の方向のみに移動するものなど様々で、また王子が発射できる弾は連射はできるものの画面内で一定数しか撃てず、撃ち切ったら弾が画面から消えるまでの間無防備になってしまうので、怪物の行動パターンをしっかり把握して対応する必要がありました。

アイテムと障害物

フィールド上には王子と敵の他にも、アイテムや障害物などが存在しています。

アイテムは取得することで王子の体力が回復するものや、王子の攻撃力(発射できる弾の数や威力)がアップするもの、ゲーム進行のキーとなる必須なもの、または直接は必要でないものまで様々存在していました。

障害物には害は無いが文字通り進行の障害となっているものや、触れることで即死してしまう危険なものなどがありました。また通行できないばかりか近づくと転落してしまう崖なども、障害物に含まれるかもしれません。

岩や木などの一部障害物は弾を撃ちこむ事で破壊することができ、そこからアイテムが出現したりもしますが、同時に敵が出現する場合もあるので壊す際にあまり近づかないのが基本テクニックでしたね。

壊れない障害物や通行できない崖などの場所は、上手く利用すればその向こうにいる怪物を接近させずに倒すことができるので必須のテクニックと言えたでしょう。

しかし、同様に障害物や崖の向こうから攻撃してくる敵がいるということも覚えて置かなければならず、フィールドの地形によってはこれが恐ろしくいやらしい状態になることもありました。

ドル○ーガの塔?

さてここまで戦闘とアイテムについて説明してきましたが、これに関連することでちょっと面白い(?)話があります。

まずアイテムについてなのですが、本作のアイテムの中には「ある一定の行動により出現するアイテム」というのが存在しています。一定の行動というのは例えば、フィールド上にいるある敵のみを全部倒すとか、逆に敵を倒さずにフィールド上のあるものに触れるなどの事です。何か思い当たりませんか?

また戦闘についてですが、敵が吐いてくる弾に関しては王子が正面で受けた場合にバリアーで守ることが出来ます。ただしこれは王子が攻撃をしていないときの場合であり、攻撃をしているときなら王子は左側でバリアーを張ることが出来ます。おや?これも何か思い当たるものがありますね。

そうなんです、これらは1984年にナムコより発売されたアーケードゲーム「ドルアーガの塔」にあったシステムの真似なんですよね。そんなのたまたま一緒だっただけだろ?と思うかもしれませんが、なんとこれゲームの説明書に記載されてるんですよ。

「ナ▲◎社のド★アー※の塔、あれと同じです」ってハッキリとねw
(当然ながら、別に真似したら悪いって話では無いですよ?)

キツイ難易度の理由

アクションゲームとしてヤバい

この記事の最初に本作が「キツイ難易度」だと言いましたが、本作を御存じない方はここまで読んでも特に難易度が高いという理由がわからなかった方も多いでしょう。まあ意図的にそこには触れてこなかったのでそれも当然です。ではここから本作を「キツイ難易度」だといった理由について説明していきましょう。

まず第一に、主人公である王子の移動スピードが異様に遅いということです。移動が恐ろしく遅いのに敵は容赦なく追いかけてくるわ、あちこちから弾を吐いてくるわですからかなりキツイです。

ゲーム中にF5キーを押すとゲームスピードを3段階まで変えられるのですが、最速にすると確かに移動は快適になります。ただし敵のスピードも同じく上がるので意味が無いのです(涙) ※ちなみにあるアイテムにより、移動速度はちょっとだけ上がる

第二に敵が出す弾なのですが、王子は上下左右の4方向にしか弾を撃てないのに対し、敵は斜め方向に対しても弾を撃てる敵が存在します。障害物が多かったり崖がある細い道などを通過しているときに、遠くからバンバン斜め方向の弾を撃たれたらかわす事も、バリアーでガードすることも酷く難儀になるのです。

第三が「崖」の存在です。王子は崖の近くに来ると転落してしまい、一定時間内にスペースキーを死ぬほど連打して這い上がらないとゲームオーバーになってしまいます。

この判定がシビアで、ここなら落ちないだろうと思った範囲でも転落してしまったりするうえに、狭い通路で敵が遠くから容赦なく弾を撃ってくる場合もあるので、ガードしようとして転落、復帰してはまた転落を延々と繰り返す羽目になります。

だからこそセーブは重要になるのに…

そして最後、これが一番キツイかもしれないゲームのセーブについてです。

本作ではフィールド上の「フロッピー」というアイテムを取ることで進行中のゲームをセーブできるのですが、このアイテムは1個につき1回しかセーブできないうえに、セーブは安全地帯(水色の円)の中でしか出来ないのです。

フロッピーは使用すればまたどこかに出現しますが、次にセーブするためそれを探して敵の猛攻の中、危険な道を移動してまた安全地帯に戻らないといけないのです

また恐ろしいことに、シーン途中でセーブをしてその後なんとかシーンをクリアしたとしても、体力は全回復しないうえ、シーンクリア時に進行状況がセーブされることはありません。

なので、次のシーンに入ってフロッピーと安全地帯を見つける前にゲームオーバーになると、また前のシーンの途中からということになります。

それを防ぐには、前のシーンでフロッピーを使わないで次のシーンに持ちこせば、次のシーンの安全地帯ですぐセーブができるのですが、敵は何度も復活するのに対して回復アイテムは再出現しないので、1つのシーンで何度もフロッピーを取りに行くのはここまで挙げてきた理由も考えると、こちらの消耗が激しくなるだけです。

なのでそのシーンで一番難しいところの前でセーブをし、そこを突破したら再度フロッピーを取って目的地に急ぐ、あるいは逆に突破してからセーブ、フロッピー取得して目的地へなど、フィールドの構成や敵の配置、フロッピーの再出現場所などを吟味した上でセーブのタイミングを決めるというのが大事になってくるのです。

しかしさすがにこのセーブ仕様は鬼過ぎたのか、次回作の「II」では最初からフロッピーを所持しているうえ、セーブしてもフロッピーは無くならないという仕様に変わっていましたね。

最後に

この「メルヘンヴェール」という作品は、同時期のアクションRPG(「トリトーン」や「ザナドゥ」など)と比べて、グラフィックがとにかく綺麗だったという印象がある作品です。

BGMも作品の雰囲気にマッチしたものであり、難易度の問題はあるにしてもゲーム性も決して悪くないし、あともうちょっと操作性が気持ちよければ2年ほど早くイースのような作品が登場していたかもしれません(言いすぎかな?

発売元の「システムサコム」は本作と翌年に続編を作った後、主に選択肢のある小説というタイプの「ノベルウェア」をメインに発売していき、それが後にチュンソフトの「かまいたちの夜」に代表されるような「サウンドノベル」の系統に繋がっていきます。

本作やその続編のアクションゲームでありながら、挿絵付きの童話のようなヴィジュアルステージで「物語を読ませる」という点は、ある意味「ノベルウェア」の源流であったのかもしれませんね。

余談ですが、私は当時本作を友人の家でPC-88版を何度かプレイしたのだが、
シーン1すらクリアできなかった。
無理じゃボケェ…。

≫EXIT

お疲れ様でした!

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コメント

  1. K より:

    ここまでしっかり記事を読ませてのこのオチw
    >>コミカルで可愛いらしい登場キャラクター達に(中略)「キツイ難易度」が印象に残る作品
    これはSFCのサンドラの大冒険にも言えますね(システムは大違いですけど)。メルヘン調で鬼難易度とか大好きです。
    しかし当時の常なのか、難易度の方向性が変化球気味でマゾ趣味的な味わいなのが、再プレイの難しいトコロですね。ちなみにサンドラは今でもやりますけれど……。

  2. ソンゴスキー@れとろげ より:

    >Kさん
    サンドラの冒険はやったことないんですが、難易度が高いって話は聞いたことがあります。
    それでも操作性は良さそうな印象でしたから、まだいいほうなのかもしれませんw
    絵がメルヘンチック名ものはたまに「女の子を取り込みたかった」という理由だと聞きますが、プレイしてみたらゲーマーならともかく、絵がきれいだからって遊ぼうとした人には無理だろこの難易度…って思いますよね。

  3. にゃんこ より:

    メルヘンヴェールのBGMは、斉藤学さんが作曲されてたんですよねぇ…
    元々クラッシック方面を専攻されていたそうですが、他にも、ソフトでハードな物語のコミカルなBGMを作ったり、闇の血族のOPみたいな歌謡曲っぽいBGMも作ったりと、とにかく様々なジャンルの曲を書ける方でした…
    若くして亡くなられたのが残念でなりません…(´・ω・`)

  4. ソンゴスキー@れとろげ より:

    >にゃんこさん
    いま確認してみたら、わずか22歳で亡くなられてたんですね。
    なんとも残念な話です。
    遺作の「38万キロの虚空」は今度是非プレイしてみたいですね。

  5. にゃんこ より:

    >管理人様
    個人的には、素人ながらDTMにハマるきっかけを与えてくださった方なんですよヽ(=´▽`=)ノ
    13歳から亡くなられた22歳までの僅かな時間で、実に2000曲も作・編曲されたそうで…
    しかも、ゲーム業界だけではなく、クラッシックを中心に、音楽業界からも注目されていたとか…
    言っても仕方が無い事ですが、もし今もご存命でしたら、すぎやまさんや植松さん達みたいな…ひょっとしたらそれ以上の音楽家になられていたのではないかと…
    そう思うと、本当に残念です…(´・ω・`)

  6. 江保場狂壱 より:

     こんにちは管理人様。江保場狂壱です。
     メルヘンヴェールはプレイしたことはないです。あとファミコンしか知りません。
     でもファミコンのはもりけん先生のイラストがかわいかったのを覚えています。
     ストーリーは王子が可哀そうだと思いました。小学生時代だったので、まだスレていない時期だったから(笑)
     斉藤学さんは初めて知りました。動画サイトでメルヘンヴェールのを聴きましたが、よい曲でしたね。
     わずかな時間で2000曲も作・編曲されたとは驚きです。
     
     かわいい絵柄と世界観でも、実際は難易度が高いのは当時のゲームでは普通だと思います。そもそもゲームは男の遊ぶものだった気がしますね。女子でゲームをプレイしている人は少なかったと思います。
     では。

  7. にゃんこ より:

    >江保場さん
    確か、ファミコン版が1番ゲームとしては完成してたと思います…
    88版やMSXシリーズ版は、PCのスペックの関係か、異様な難易度でしたから…(´・ω・`)
    王子の運命で泣く前に、敵の速さに対する王子の動きの遅さと、上下左右にしか攻撃出来ない王子に対し八方向に攻撃出来る敵とかに泣きました…w
    ちなみに、斉藤学さんの曲は、ユーフォリーとかも良いですよヽ(=´▽`=)ノ
    あと、38万キロの虚空や闇の血族の、MIDI音源版の曲もかなり良いてす☆
    機会が有れば、是非聴いてみてくださいねヽ(=´▽`=)ノ

  8. ソンゴスキー@れとろげ より:

    >にゃんこさん
    そんな凄い才能を持った方を、あまり存じ上げなかった自分の不明を恥じます…

  9. ソンゴスキー@れとろげ より:

    >江保場狂壱さん
    お、ファミコン派はこちらにいらっしゃいましたかw
    ファミコンが流行り始めた当時、ファミコンを持っていた女の子はいましたが、とりあえず流行っているからとか兄弟が買ったからという女の子が多く、ガチゲーマーと言える人はホントいませんでしたね。
    あるいは、存在したけど隠していたかですかねw

  10. にゃんこ より:

    >管理人様
    当時は、ゲーム開発のいちスタッフがそこまで前面に出て来る様な時代じゃなかったから、あまり知らなくても何の不思議もないですよ(´・ω・`)
    当時、前面に出て来るといえば精々各社の名物プロデューサーと呼ばれた方々(Falcomの木屋さんとかT&Eの内藤さんとか)くらいでしたから…
    ミュージックコンポーザーに焦点が当たるきっかけを作ったあの古代祐三氏の様に、Ysの様な爆発的な人気を得たソフトが有れば前面に出て来た可能性も有ったのでしょうが…

  11. 江保場狂壱 より:

     管理人様>誤解を招く文章を書いて申し訳ありません。
     正確にはメルヘンヴェール自体プレイしたことがありません。ファミコンもプレイしたわけではなく、あくまで雑誌で知った程度です。もりけん先生のイラストは雑誌の広告を見ただけでした。動画サイトで動画を見た程度です。
     勘違いさせてすみませんでした。では。

  12. ひろの より:

    メルヘンヴェール懐かしい。ログインで記事見てすごく面白そうに見えて発売後即買って激ムズで結局クリアはできませんでしたが、世界観が好きでした。
    しかし、その数年後秋葉原の中古屋さんを見ててある事実に気付きショックを受けました。
    自分が買ったメルヘンヴェールはPC-8801/mkII版でその他にSR専用版があるという事実。
    ええ、即買いしましたよ。買ったままプレイしてないですけど。
    長い間、BGMが無いゲームなんだなと思ってました。

  13. ソンゴスキー@れとろげ より:

    >ひろのさん
    > SR専用版があるという事実。
    そうでした!88版は2種類出ていたんですよね。
    当時X1ユーザーだった私には、その辺の違いが良くわかってなかったんですが、
    なるほどmkII版は音が鳴らなかったんですね…。

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