勇者の塔 3F
No.0003
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感情移入できなさそうなRPG?
「RPGにおける主人公」というのはどんな人間じゃろうかのう?
お主、何かひとつRPGの主人公というものを思い出してみてはくれんか?それはどんな人物じゃ?世界を救うことを運命付けられた、あるいは魔王を討伐するために選ばれた勇者かの?それとも一攫千金や勇名はせる為に旅立った冒険者かの?
RPGならやはりプレイヤーが主人公に感情移入しやすいように、そういう”憧れの主人公像”というのが用意されておって、それでプレイヤーの気持ちを盛り上がらせておるもんじゃ。ところがのう、世の中にはなかなか主人公に感情移入できなさそうな設定の作品というものもあるんじゃよ。
今回紹介する作品がそれなのじゃが。この作品の主人公はなんと”神から罰を受けた人間”なんじゃ。勇者でもなければ冒険者でもない、言ってみれば罪人じゃな。どうじゃ?そんな人物が主人公のRPG、ちょっと興味がわいてきたじゃろ?
では入るがよい、勇者の塔 FLOOR 03 じゃ!
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「夢幻の心臓」とは?
基本情報
タイトル | 夢幻の心臓 |
シリーズ | 夢幻の心臓シリーズ |
ジャンル | ロールプレイングゲーム |
発売年 | 1984年 |
発売/開発 | クリスタルソフト |
発売機種 | PC-88、PC-98、MZ-2500など |
前作 | 無し |
次作 | 夢幻の心臓II |
概要
「夢幻の心臓」は、1984年にクリスタルソフトから発売されたフィールド探索型ファンタジーRPGで、後にシリーズ化し1990年の「夢幻の心臓III」までに3作品が発売されている。
本作は「ブラックオニキス」、「ドラゴンスレイヤー」、「ハイドライド」などと並び、国産RPG黎明期を代表する作品のひとつと言われており、「ウルティマ」タイプのフィールド画面に、「ウィザードリィ」のような戦闘画面を融合させたシステムは、後に自社作品だけでなく他社の国産RPGにも大きな影響を与えている。
本作は、主人公がこの世界を旅することになった理由が特殊であったり、ゲームクリアまで期限が設けられたRPGであったり、また普通にプレイすると最弱クラスの敵にも勝てなかったりするなど、非常に特徴的で記憶に残る作品である。
ストーリー
地上での戦いで死んだ主人公は、死の間際、神々に呪いの言葉を発した。それにより主人公の体は、天国でも地獄でもないもうひとつの世界《夢幻界》に落ちてしまう。
そこは光と闇が交錯する剣と魔法の世界。
主人公が再び地上に帰るには、3万日の間に「夢幻の心臓」を手に入れなければならない。
もし夢幻界で死んでしまったら、主人公の魂は輪廻の輪から切り離され、永久に続く苦痛の中に封じ込められてしまうのだ。
このように本作の主人公は世界を救う勇者でもなく、世に名を残そうとする冒険家でもない。
神々に暴言を吐いたせいで”罰”を受けた、ただの人間なのである。
農民にすら勝てない主人公
このRPGの勇者が弱すぎる件
本作「夢幻の心臓」ではゲームを始めると、何の説明も無くいきなりフィールドに放り出されてしまう。
取り敢えず近くの町に行くも、そこには大仰に迎えてくれる王様もいなければ、情報を親切に教えてくれるNPCもいない。町で情報を得る唯一の手段は、ゴールドを支払って情報を買うしかない。シビアである。
そんな町を出て外を歩いていると突然BEEP音が鳴り、目の前に目つきの悪い貧相な身なりの「ノウミン(農民)」が現れた。
屋外にもNPCがいて何か情報をくれるのか?と話しかけるが、いきなりカマで切りつけられ問答無用で戦闘開始。こちらも反撃するが、こちらの攻撃はごく稀にしか当たらず、殆ど一方的に斬り殺されてしまった。
呆気に取られつつも、改めて最初からゲームをやり直してみる。
すると今度は「シュウドウシ(修道士)」というのが現れた。修道士、つまり神に仕える身である職業の人なら話しかけても大丈夫だろう、きっと今度は助けになってくれるだろうと思い話しかけるが、今度は毒を吹き付けられその上で殴り殺されてしまった。
何なんだこの無法地帯は。
何なんだこの世界は。
この主人公は”勇者”ではない
このゲームの主人公、言ってみれば自分は「勇者」だ。
しかしこの世界は主人公(勇者)に優しくしてくれる人も味方してくれる人もいない。どういうゲームなんだこれは?多くのプレイヤーはきっとそう思う事だろう。しかしそれは認識が間違っている。なぜならこのゲームの主人公は、世界を救う勇者でも難関に挑む偉大な冒険者でもない。
神を冒涜して、罰を受けた者なのだから。
主人公は世界を救う勇者どころか、罰としてこの世界に飛ばされた咎人(罪を犯した者)に過ぎない。だからこの世界は主人公に味方してくれない。親切な人など殆どいない。
それが当たり前なのだ。そしてそれこそが、このゲームの世界「夢幻界」なのである。
どうすれば勝てるのか考えてみよう
何故勝てないのか
この世界のがそういう世界だというのは理解したとして、戦闘での攻撃の当たらなさは酷すぎる。先程遭遇した農民や修道士は、ゲーム開始直後に出会う敵だ、そんなに強いわけがない。
因みに本作には所謂キャラメイク的なものは存在しないので、パラメーター配分を間違えてるという事もあり得ない。なのに戦ってみると、こちらの攻撃は滅多に当たらず向こうは攻撃は頻繁に当たるので、結局負けてしまうのだ。
仮に運よくこちらの攻撃がよく当たって、なんとか勝てたとしよう。だがその場合でも、間違いなくこちらは瀕死状態になるので減った体力を町で治療する必要があるのだが、その治療に掛かる費用が農民を倒して得られるゴールドより遥かに高い、つまり大赤字なのだ。
従って本作では、戦えば戦うほど金銭面は窮地に陥っていく一方となるのである。では一体どうすればいいのか?それについて、少し考えてみよう。
ではどうすれば勝てるのか?
①. 最初の町で強い武器を買ってしまう。
これは一見確かに有効だが推奨はできない。なぜなら本作では武器だろうが防具だろうが、戦闘中に何の予告も無く突然壊れることがあるからだ。しかも耐久値とかではなく、ランダムで壊れるので修理も出来ない。従って折角高い武器を買ったとしても、その代金を稼ぐ前に壊れてしまう可能性のほうが遥かに高いのである。
②. 何とか頑張ってレベルアップする。
これも率直に言って無理だ。なぜならば、普通のRPG作品ならともかく、本作にはそもそもレベルが存在しないからだ。因みに経験値というパラメーターはあって戦闘後に増えるのだが、それによる成長が基本的に無いのである。つまりどれだけ頑張って敵を倒しても、永遠に「まるで成長してない…」状態なのである。
やはり考えてみたが、良い方法はみつからなかった。
因みにだが、本作でもし主人公が死んでしまったらどうなるか?それは、死んでしまうとは何事だと言う王様の元に飛ばされることもなければ、自動的にセーブポイントに戻されてやり直される事もない。
もし主人公が死んでしまったら…、その時はキャラクターデータごと消えてしまうのだ。某RPGように一旦灰になる事すら許されない、即ロストである。
酷い罰ゲームだ。
こんなゲームクリアできるのか?
しかしそれも仕方が無い。なにしろ主人公は勇者でも冒険者でもない、神から罰を受けた身なのだから(ここまで来たら主人公ではなく、最早プレイヤーへの罰ではないか?とも思うのだが)。
KEY POINT!
勝利の鍵は”修行”
もし本作が本当にこのままの仕様であったなら、プレイヤーにクリアさせる気など無い”駄作”となっていただろう。しかし一応ちゃんと対応策が用意されており、それが本作をまともにプレイできるようになる”鍵”となっていたのだ。
攻撃が当たらないことへの対応策、それはズバリ”修行”である。町にある特定の施設では、修行でキャラクターの能力値を上げることができる(もちろん有料だが)。この時上がった能力値は一時的なものではなく恒久的なものであり、レベルによる成長という概念が無い本作にとってほぼ唯一の成長手段となる。
つまりゲーム開始直後にこの修行に全額を投じて攻撃力と回避力を上げてやれば、町で売っている中級クラスの武器防具を上回る能力が確保できる。しかもこちらは武器防具と違い壊れる事がないため、最初の町で武器防具を買うよりも遥かに有効な手段なのである。
(武器防具は買わなくても、よく敵が落とすのでそれを使えば問題ない)
経験値でも育成は可能
では先程出てきた「経験値」は何のためにあるのだろうか?実は経験値もちゃんと主人公の成長の為に用意されたものなのだ。
と言うのも、修行により上昇させられる能力値には実は上限値が決まっており、この上限を超えてさらに上昇させるには能力値に対応した「紋章」を使用し、経験値と引き換えに能力値を上昇させる事ができるのである。
因みに経験値のことについては、マニュアルに一応「経験値を能力に変換できる」程度の説明はあるものの具体的には何も書かれていない(どうやってこの仕組みを理解しろと…)。
ところでお金を全額修行に使ってしまったら、体力の回復についてはどうするんだ?という疑問が出てくると思うがその答えは簡単で「野宿」である。
主人公の体力は、フィールド上で一晩野宿することでたった1pだけではあるが回復させる事ができる。なので殆ど損害を受けずに敵に勝てるようになり、ゴールドに余裕が出てくるまでは野宿で凌げば良いのだ。
ここまでの話が、本作をまともにプレイできるようになる鍵という事になる。
素晴らしいグラフィック
本作にはこれまで説明した事の他にもいろいろな”難儀な部分”があるのだが、もちろん逆に良い部分も存在する。そのなかでも特に伝えておきたいのが、登場する人間やモンスターグラフィックの素晴らしさだ。
実はこれらのグラフィックは、古いAVGのようにBASICのLINE文とPAINT文で描かれるというやや貧弱な表現力のものなのだが、それを感じさせない迫力が殆どのグラフィックから感じられる。その理由はモンスター達の絶妙なポーズのチョイスと、巧みな陰影の表現であろう。
あまり細かい表現が出来ない、細部まで描き込めないことを逆手にとり、大胆な陰影とそれにあわせたポーズをつけることで、プログラムの貧弱な表現能力を感じさせない素晴らしい迫力を持ったグラフィックになっているのだ。
特に後半に登場するモンスターほどその傾向が高い為、序盤でゲームを諦めてしまった人は非常にもったいないと言えるであろう(過去の筆者も含めて)。
ただし、BASICのLINE文とPAINT文ではどうしてもグラフィックを描き終わるまでに時間がかかってしまい、続けてエンカウントしてしまうような場合はどうしてもストレスになってしまう。
開発側もそれは理解していたのか、ゲーム中にいつでもグラフィックの設定を、色付きか色なし(線画のみ)に切り替えることが出来るようになっていた。ただ快適とは言え、やはり色がついてないと素っ気無いものに感じられた。
まとめ
常識が確立していない時代のRPG
どうじゃったかの?常識的に考えても色々難儀な作品だと思うじゃろ?
しかしこの時代はまだ”RPGとはこういうもの”という概念そのものが完全に確立しておらん時期じゃったからの、その”常識”というものも存在は薄かったんじゃ。逆に言えば多くのRPGが「ウルティマ」、「ウィザードリィ」、「ローグ」などの海外RPGを基本にしつつも、それぞれが自由な発想でRPGを進化させていた時代。
まさにRPGのカンブリア爆発という時代だったんじゃ。じゃからもしかしたら、この難儀なシステムが生き残ってRPGのスタンダードになっていた可能性もあったという事じゃな。
まあそうはならなかったものの、本作の「ウルティマ」と「ウィザードリィ」を上手く組み合わせて発展させたシステムは、「さくまあきら」氏がファミコン版「桃太郎伝説」が作る際の参考にしたそうじゃからの。系譜として受け継がれていった訳じゃな。
念のために言っておくが、本作は「ドラゴンクエスト」より前の作品じゃぞ?
何故こうも殺伐とした世界なのか
ところで話は変わるんじゃが本作の主人公はいくら神に暴言を吐いて罰を受けた身とはいえ、ゲームの世界で殆どの人間から好意的な扱いを受けることは無い。フィールド上で、道を1歩外れればモンスターがいるような状況にも関わらず道で会った人間には問答無用で斬りかかられる。
いやいや、そんなことしとる場合じゃないじゃろ!協力してモンスターを倒すとかしないのか?
なんでここまでこの世界の人間達は殺伐としておるのじゃ?わしはそこについても非常に気になった。そしてその答えのようなものは、実はマニュアルの中に書いてあったんじゃ。本作のマニュアルには「この世界の住人は、あなたと同じ目的の戦士ばかりです。」とあった。
つまりこの世界の人間達は、皆主人公と同じようになんらかの罰を受けてこの世界に落とされ、同じように「夢幻の心臓」を3万日以内に探し出すことを目的にしているもの達ということなんじゃよ。つまりこの夢幻界の住人にとって、主人公は自分が生き返るチャンス(心臓を手に入れる事)を奪うかもしれない相手なんじゃ。
もしかしたらもう生き返るのを諦めた人間もいるかも知れんが、そういう立場でも自分は諦めたのにこいつだけ生き返らせてたまるか! と思うやつも当然おるじゃろ。だからこの世界の人間は、揃いも揃って皆んな殺伐としておるんじゃ。なんとも恐ろしい世界じゃのう。
では最後に、心臓を手に入れるまでの期限となっておる”3万日”じゃが。漠然と3万日といわれても実感が無いんでの、さらっと計算してみたんじゃが3万日は年数でいうと、なんと約80年じゃった…。
つか期限長すぎじゃろ!
≫EXIT
お疲れ様でした!
今回の記事はどうだったかの?何か感じた事があればどんなことでもコメントに残してくだされ。それと当ブログは以下のブログランキングに参加しておる。クリックして貰えるとわしの「やる気」がめちゃアップするぞい!
いつもバナークリックや拍手していただいて、誠にありがとうございます!
コメント
今さらですが、攻略記事の方を全て読みました。
読ませる文章もさることながら、ゲーマー、そしてファンタジー世界の楽しみ方を強く感じさせる記事で、とても面白く感じました。
自分は81年生まれのドラクエ世代ですが、PCレトロゲーム世代が羨ましいですね。
ビキニアーマー列伝楽しみにしてます。
いやいや、そんな誉められてしまうと、調子に乗っちゃいますよ?w
夢幻の心臓は今プレイしても正直キツいゲームなんですが、だからと言ってこのまま忘れられるには惜しい作品ですから、出来る限り知らない人にも興味をもってもらえるように書いたつもりではいます。
記事の中、「1994年に発売され〜1990年までシリーズ化〜」になってますよ。
>>3
ありがとうございます!
修正いたしましたー♪