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『オルゴール』サイキック・ディテクティブ・シリーズの第4弾。悲しきオルゴールの音色…。

賢者の塔 67F/No.0227

今回、降矢木の事務所を訪れた女が依頼してきたのは、市松人形を盗もうとしている人物を見つけるというものだった。

≫ENTER

いらっしゃいませ!

前回に続いてこの作品も過去に一度取り扱っておるのじゃが、同じくあちらはPCエンジン版の紹介ということで、今回もPC(リメイク)版の紹介もさせてもらいたい。
というわけで賢者の塔67Fじゃ!

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「オルゴール」とは

ゲーム基本情報

タイトルOrgel
シリーズサイキック・ディテクティブ・シリーズ
ジャンルコマンド選択式アドベンチャーゲーム
発売年1991年/1994年(リメイク)
販売/開発データウエスト
発売機種FM-TOWNS、PC-9821、Windows95など
前作AYA
次作Nightmare
※使用している画像は指定が無い限りWindows版のものです

サイキック・ディテクティブ・シリーズとは

サイキック・ディテクティブ・シリーズについては、以下の紹介記事を参照してください。

市松人形の盗難を阻止する物語?

死者さえも地獄の底から蘇ってきそうな暑い日、降矢木の事務所を喪服姿の女性と和服の老婆が訪れる。しかし喪服の女性は何を聞いても話そうとせず、老婆のほうは女性に寄り添うように無言で佇んでいた。

「降矢木さん…」

ようやく口を開いた女性は自分の名前を「影藤智名子」、建築家「影藤秀郷」の妻だと名乗り、そして隣の老婆は自分の婆やであると言う。降矢木は依頼はその影藤秀郷の件なのかと聞いたが、智名子は突然笑いながら言った。「主人は数ヶ月前に亡くなりましたわ」と。

ではここへ来た用件は何なのかと降矢木が問うと、智名子は2枚の写真を降矢木に見せる。1枚は美しい市松人形の写真、もう1枚は現在智名子が婆やと2人きりで住んでいるという、影藤が建築した館「奇談亭」をバックに、5人の男女が写っている写真であった。

すると智名子は今度は突然泣き出し、この写真に写っているうちの誰かが自分の家に伝わる市松人形を盗もうとしている。近々その5人を奇談亭に招くのでその犯人を捕まえて欲しいと頼んでくる。智名子の情緒不安定さに危うさを感じた降矢木は、後日奇談亭を尋ねてそこで再度詳しい話を聞くと言って一旦智名子たちを引き取らせた。

こうして降矢木は奇談亭に向かう事となった。「依頼」を遂行するために…。

普通の探偵モノなら特におかしなところは感じないプロローグなんじゃが、知ってのとおり本作は「普通の探偵モノ」ではない。ではなぜこんな話から始まるのか?このシリーズのプロローグは、毎度の事ながら巧みじゃのう。

主な登場人物

《降矢木 和哉》
特Aクラスのサイキックアナリスト。過去に恋人の真行寺彩をサイコダイブの事故で死なせてしまい、以後はアナリストをやめて探偵事務所を開いている。今回は事務所を訪ねてきた影藤智名子から、市松人形を盗もうとしている人間を探し出して欲しいという依頼を受ける。ちなみに降矢木の顔は、これまではっきり画面に表示されていなかったが、本作では遂にその顔がはっきりと拝めるようになった。

《影藤 智名子》
有名な建築家「影藤秀郷」の妻。降矢木の事務所に、市松人形を盗もうとしている人間を探し出して欲しいという依頼を持ってきた。非常に美しい女性だが、かなり情緒不安定な様子がみられる。降矢木が奇談亭を訪れてからずっと、なぜか姿を見せていない。

《婆や》
智名子と共に降矢木の事務所にやってきた老婆。智名子に影のように寄り添っており、寡黙で必要以上のことは話さない。

《影藤 秀忠》
智名子の夫で建築家。「マテリアルの鬼才」などと呼ばれる業界の異端児で、自らが設計した「奇談亭」という館に住んでいた。数ヶ月前に亡くなったと智名子は言っていたが…。

《桜沢 加奈子》
写真に写っていた5人の中の1人。スタイルのいい美女だがやや気が強い。イラストレーターをしているらしく、奇談亭をモチーフにした作品を制作するために来たと言っている。梨絵香の登場しない本作では「ヒロイン」ポジションといえるかもしれない人物。

《山田 影一》
写真に写っていた5人の中の1人。撚糸工場を経営しており、館の中でも常にスーツにネクタイを着用しているしっかりした「社会人」。人がよさそうな顔をしているが、口は割りと辛らつ。

《加茂川 宗尋》
写真に写っていた5人の中の1人。売れない三流タレント。行動も口調も軽くいい加減で、社会人然とした山田とはソリが合わない。館に来る早々、坂藤と口論している現場を多くの人に見られている。

《坂藤 幸信》
写真に写っていた5人の中の1人。医院を経営している医者。太った体で口うるさく、さらには口を開けば金に関する話しかしないような強欲な男。この館の事や影藤夫妻のことに妙に詳しいようだが…。

《菊岡 みどり》
写真に写っていた5人の中の1人。派手で可愛い服を着ているが似合っていない女性。親に言われて奇談亭に来たらしく、パーティで王子様に会えるなどと夢見ている。顔も良くないが、それ以上に性格が良くない。

《羽柴 奈緒美》
写真には写っていなかったた人物で突然奇談亭にやってきた。弘美とは姉妹で奈緒美が姉。常にサングラスをかけており暗いところでも外そうとしない。美しい女性だが寡黙で、まったく口を利かない。

《羽柴 弘美》
同じく写真には写っていなかったた人物で突然奇談亭にやってきた。奈緒美とは姉妹で弘美が妹。可愛い系の美人で、寡黙な姉とは違い社交性はあるのだが、なぜか常に姉の様子を伺いながら話をしている。

《樋渡 恭介》
羽柴姉妹同様に写真に写っていなかった人物で、羽柴姉妹より後に奇談亭にやってきた。降矢木が自身で奇談亭に呼んだ「助っ人」。色男だが態度がかなり軽薄。

今回ゲームとしては「犯人探し」という体になっているので、それぞれの人物に対して何度も聞き込みをして素性を確認していく必要がある。そういう面もあってか、本作の登場人物は皆満遍なくストーリーに絡んでくる感じじゃな

画面構成とシステム

本作の基本画面は画面中央にメイン画面、画面左側にメインコマンド、画面右側にサブコマンド、そして画面下にメッセージが表示されるという前作と同じ構成になっている。

メイン画面には景色や登場人物、イベントアニメーションが表示される。本作では前作と異なり背景が絵画風の画像で、登場人物はアニメ調だが特殊な状況以外では顔グラフィックの描かれた枠がカットインしてくるようになっていた。

本作は背景の尺度や構図がわりとまちまちなのと、結構登場人物が頻繁にあちこち移動するのとで、登場人物をこれまでのような立ち絵にするとバランスが悪くなるからこういう仕様なのかもしれんのう

メインコマンドは「何をするか?」というもので以下のコマンドがある。
ノート…SAVE/LOAD/ゲームの終了を行う
移動…別の場所に移動する
見る…画面に表示されているものを見る
聞く…周りの音を聞く、人物に話を振る
会話…そこにいる人物と何かについて話す
思考…人物や状況について考える
使う…所持している持ち物を使う、見せる
行く…その場所にある何かに近づく
物証…所持している持ち物を確認する
※場所や状況により表示されないコマンドもある

サブコマンドは、メインコマンドを実行する対象(「見る」なら何を、「会話」なら誰となど)が表示される。会話コマンドの場合のみ、サブコマンドで誰と話すか選ぶと、さらに何について話すのかのサブコマンドが表示される。

ゲーム中のすべてのコマンドは、マウスを使用してカーソルをコマンドにあわせて選択する。

ゲーム中の9割以上は「奇談亭」での活動となり、奇談亭内での移動は屋敷の見取り図を使用していきたい場所を選ぶ方式になっている。見取り図は1階と2階の二つがあり、また1階の見取り図からは正門や裏庭といった屋敷の外に移動することもできる。

本作はとにかく移動が多いんでのう、行きたい場所を直接選べるこの方式は非常に助かるものになっておった。難があるとすれば、1階から2階(またはその逆)の部屋に直接移動ができないことじゃな。

降矢木和哉、今回は完全な探偵業?

本作において、主人公である「サイキックアナリスト」降矢木和哉は、影藤智名子の依頼により奇談亭を尋ね、そこにやってくる5人の人物の中から市松人形を盗もうとしてる人間を探し出すため、古物商と身分を偽って5人と接触し捜査を進めていく。そこに「サイキックアナリスト」としての行動は見当たらない。

ゲームとしても、プレイヤーは降矢木となって奇談亭の中を行き来しては手がかりを探し、5人の容疑者とそれ以外の人物たちと接触しては情報を収集していく事が主となるので、リバーヒルソフトの「琥珀色の遺言」のような館を舞台にしたオーソドックスな探偵モノアドベンチャーゲームを遊んでいるような感覚になる。

つまりゲームとしても、プレイヤーの行動の中に「サイキックアナリスト」の「サ」の字も見当たらないのである。

「サイキック・ディテクティブ・シリーズ」と銘打っておきながら、まさかこのまま探偵降矢木和哉としてゲームを終えるのか?と初見でなら不安に駆られてしまうかもしれない。あるいは、あまりに普通の探偵モノすぎる展開で、逆にサイキック・ディテクティブ・シリーズであることを忘れてしまうかもしれない。本作はそれくらい本当に探偵モノ然とした内容になっているのである。

物語はクローズド・サークルものへ

降矢木は奇談亭内で智名子の依頼通り市松人形を盗もうとしている人物を探し出すため行動を続けるが、依頼主である智名子は奇談亭に居るはずなのに一向に姿を見せず、挙句には智名子の面倒を見ている婆やまで館から姿を消す。やがて夜になり降矢木たちはとりあえず就寝するのだが、地震の轟音とすさまじい揺れに飛び起きる。

もともと奇談亭は海沿いの隆起した高い崖の上に建っており、この奇談亭には崖と陸地の間にかかっている一本のつり橋でのみ入れるようになっていたのだが、この地震によりつり橋が切断されてしまい、奇談亭は完全に外界から孤立した状態となってしまう。そしてその驚きが収まらぬうちに、今度は館に招かれた客のうちの1人が死体で見つかる。

それはどう見ても誰かに殺され遺棄された死体であった。

そしてこれをきっかけに、館に招かれた客が1人また1人と無残な死体で見つかっていく。市松人形を盗もうとしている犯人を見つけ出す為に行動していた降矢木は、今度は外界から孤立した館の中で次々と殺人を行っていく犯人を見つけ出す為に行動することになる。つまりここから本作は、ミステリー小説などで外部への連絡も脱出もできなくなった空間で起こる事件、いわゆる「クローズド・サークル」もののような展開になるのである。

そしてこの状態になっても、サイキックアナリストとしての展開は起こらない。

この「クローズド・サークル」的な展開が始まる前まで、館の中をあちこち移動しまくって話を聞きまくってをずっと続けているので、結構プレイヤーも疲れている頃なんじゃよな。そこへきてこの急展開は溜まってきたものが開放されてかなり興奮したわい。

ラストに待ち受ける大ドンデン返し

クローズドサークルとなった奇談亭、そこで次々と殺されていく招待客達。生き残ったのは降矢木と降矢木の助っ人である樋渡、そしてある1人の人物だけとなる。降矢木はその人物と決着をつけるために、硬い錠がかけられ、最後まで入ることができなかった部屋に入って行く。

ここで遂に、プレイヤーは今までどこにも見当たらなかった「サイキックアナリスト」としての降矢木和哉を見つけ出すことができるのである。いや、それは見当たらなかったのではない、最初からあったのに気づかなかっただけのだ。言ってみれば、スカイツリーの展望台から必死にスカイツリーを探していたのだ。正に大どんでん返しである。

そしてここから、今回の事件についての真相は明らかにされる。市松人形を盗もうとしていた犯人は誰なのか、誰が招待客を次々と殺して行ったのか。いや、そもそも盗まれようとしている市松人形とは何を意味していたのか、そして招待客らは何故”この世界で”殺されなければいけなかったのか、それらが明らかにされる。

しかしそれは美しいオルゴールの音色とともに流れる、とても、とても悲しい話であった。

本作の結末はゲームとしては非常に巧妙で面白いものじゃったが、ストーリーそのものは悲しい物語でありつつ、同時に非常にすっきりとしない結末でもあるので少しもやっとするのう。じゃが降矢木自身は心の問題は解決できても、そのもやっとしたものを解決できる力も権限もないんで、しかたがないんじゃよな…

京都アニメーションが制作

ところで本作では要所要所で様々なイベントアニメーションが流れるのだが、本作のアニメーションシーンは非常に完成度が高い。前作までのアニメシーンも凄かったのだが、本作の場合は特にポーズや動き、構図が妙に凝っており、思わず本当のアニメを観ているような感覚になってしまう。

本作のアニメーションシーンはリメイク元のものとほぼ変わっていないのだが、実はそのリメイク元のアニメーションシーンを担当したのが、なんとあの「涼宮ハルヒの憂鬱」「CLANNAD」で有名な「京都アニメーション(当時まだ有限会社)」だったのである(リメイク元のエンディングスタッフロールには京都アニメーションの名前が出ている)。なるほど本職ならば納得である。

京都アニメーションで働いていた方が、前作「AYA」のアニメーションパートの作画と仕上げを担当したとおっしゃっているので、本作より前からスタッフとして制作に携わっていたのかもしれないが、会社として正式に関わったのは本作からということなのかもしれない。ちなみにこの後の作品「Nightmare」「ソリチュード」でもアニメーションパートを京都アニメーションが担当している。

京都アニメーションといえば、2019年7月18日の「京都アニメーション放火殺人事件」がまだ新しい記憶として残っています。1人のアニメファンとして、1人のサイキックディテクティブシリーズファンとして、事件でお亡くなりになりました方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、ご遺族の皆様に心からお悔やみ申し上げます

《最後に》はっちゃけ降矢木さん

本作の難易度については、それほど高くはない。各登場人物にかなりしつこく聞き込みをしなければいけないのだが、それでも一般的な推理モノアドベンチャーゲームと比較したら手間は少ないほうだろう。ただ登場人物は物語進行のフラグが立つと奇談亭内をあちこち移動する事が多く、いちいち探すのはなかなか骨が折れる。しかも必ずしもどこかの「部屋」にいるとは限らず、各階にある「廊下」に居る場合は見落としやすいので注意である。

ストーリーそのものについては非常に良くできていて、悲しい話だが個人的にも評価の高いストーリーである。ただしゲームとして散々人形を盗む犯人探し、連続殺人犯探しをさせるように誘導しておいて、最後のオチでごっそり今までの事を”無かったこと”にするというのはどうなんだろうと疑問には思う。だが一方で同時にそれが「サイキックディテクティブシリーズ」らしさと言えるのかとも思う。

シリーズお馴染みのエログロについては、奇談亭で殺される被害者は皆陰惨な殺され方をしており、その描写はかなりエグくグロ部分については申し分ないだろう。一方でエロの部分は若干控えめといえるかもしれない。というのも本作には降矢木の恋人である森崎梨絵香が登場しないからだ。その代わりといっては何だが、本作では「桜沢加奈子」がお色気担当となっている。

ちなみに森崎梨絵香といえば、実は本作「Orgel」はシリーズで唯一「森崎梨絵香」が登場せず、かつ「真行寺彩」の話題も一切登場しない。そのため変な言い方だがシリーズを通して、降矢木の精神状態がもっとも安定している作品といえなくも無い。それどころか本作の降矢木は、加奈子のシャワーを覗き見したり、加奈子とアレしたりとかなりはっちゃけてしまっている。

そんないつものクールでダンディな雰囲気とは違う貴重な降矢木がみられるのも、本作の大きな特長とも言えるかもしれない。

まあ加奈子との件については、オチを知ってしまえばセーフ…なのかもしれんのう。それはさておき、この作品はわし個人的にもお気に入りなので、データウエストさんには是非Windows10環境で動くものか、あるいはコンシューマ版をPS4なりSwichで遊べるようにしてほしいと思うわい

≫EXIT

お疲れ様でした!

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コメント

  1. 名無しの冒険者 より:

    金田一耕助作品を思わせるグロ……というか、更に上かなこれは。
    どっちかいうと江戸川乱歩のパノラマ島奇譚の方が近いかも。それも、テレ朝でドラマ化された悪趣味グログロバージョン。
    初めてやったサイキックディテクティブシリーズで色々印象深い作品です。
    他作品と比較して、純粋な探偵ものを意識して作ったらしいこと、「菊岡 みどり」が「樋渡と一緒のいる」と言って抱き付く場面で、『惨い』と呟くところとか、いろいろ遊んでる、楽しんで作ってるなと思った作品でもあります。
    >エロ
    加奈子はちょっと凄かったですね。一枚のこらずひん剥かれてサービスサービス。

  2. ソンゴスキー より:

    >>1
    ほんとうにみんなしてみどりに対しては容赦ないですよねw
    まああんな性格じゃしょうがないとは思いますが、ただあの世界が「ああいうもの」だったと解ると、みどりの性格ももしかしたら彼女にゆがめられた偽りのものなのかな?とも思ってしまいます。

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