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『サイレントメビウス』 原作者とガイナックスがタッグを組んだ、原作ファンも納得のキャラゲー!

賢者の塔12F/No.0039

東京の上空に突然現れた巨大な船。プレイヤーであるあなたは、AMPのメンバーと共にその伝説の客船へと調査に乗り込む。

今回紹介するのは、大人気サイバーパンク漫画「サイレントメビウス」をゲーム化した作品じゃ

原作漫画読んだことあるけど、めちゃくちゃ面白かったわね

それをアニメーション制作会社であり、かつゲーム制作会社でもあった「ガイナックス」がゲーム化した結果どうなったか?と言うところに注目じゃな

では入るがよい、賢者の塔12Fじゃ!

本記事を読み進める前に…

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ゲームの基本情報と概要

本作の基本情報

タイトルサイレントメビウス CASE:TITANIC
ジャンルコマンド選択式アドベンチャーゲーム
発売年1990年
発売/開発ガイナックス
発売機種PC-98、FM-TOWNS、X68000、PlayStationなど
前作なし
後作なし

本作の概要

本作は2026年のTOKYO上空に突然出現した、1912年4月14日に大西洋に沈没したはずの「タイタニック号」に侵入し、現代に現れた原因を調査・解決する事が目的のコマンド選択式アドベンチャーゲームで、プレイヤーはタイタニック号関連のアドバイザーとして、対妖魔用特殊警察、通称「AMP」の調査に同行し、様々なコマンドの選択により調査を行い、事件の核心に迫って行くこととなる。

アニメーション制作会社でありながら1989年からゲーム業界にも進出し、その美麗かつ完成度の高いグラフィックで映像制作の「本職っぷり」を見せつけた「ガイナックス」による初の本格的アドベンチャーゲーム作品であり、原作者が制作にも関わっていることもあり、原作付きゲームながら原作の再現度が非常に高い作品となっている。

「サイレントメビウス」とは

原作は麻宮騎亜氏の漫画

本作はオリジナルゲーム作品ではなく、漫画を原作とした所謂「原作付きゲーム作品」となるので、まずその「原作」について語っていこう。

「サイレントメビウス」は、1988年より「月刊コミックコンプ」にて連載開始された「麻宮騎亜」氏による漫画作品で、本編は全12巻発売されており、加えて外伝や続編なども多く発売されている現在でも人気の高い作品である。

原作の概要

本作は2026年のTOKYOを舞台に、「邪界(ネメシス)」と呼ばれる異世界から現れて不可解事件を起こす「妖魔(ルシファーホーク)」と、それに対抗するために組織された「対妖魔用特殊警察(Attacked Mystification Police Department)」、通称「AMP(アンプ)」に所属する女性達との戦いを描いた物語となっている。

世界観の基本は映画「プレードランナー」を意識したゴリゴリのサイバーパンクでありながら、戦う相手がファンタジー世界の悪魔のような姿であったり、また戦う方法も銃火器や兵器だけでなく、魔術や神道、密教の力から、果ては超能力までとなんでもありの世界観となっていた。

そう言った属性てんこ盛りの世界観に加え、妖魔と戦うメンバーが、さまざまな能力と個性を持った美しい女性たちというところが当時のオタク層にクリーンヒットした作品のように思う。そう言う部分で、一見ナンパな作品なように思われるかもしれないが、ストーリーは非常にシリアスなものとなっている。

作品の映像化

1980年代から「角川映画」ではほぼ毎年のように長編アニメーション映画が制作・公開されており、1990年代前半まではまだTVアニメやOVAなどで、一度も映像化されていなかった作品が意欲的に取り上げられていた(「ファイブ・スター・ストーリーズ」や「宇宙皇子」など)。

本作「サイレントメビウス」もそれと同様で、1991年に角川映画より劇場用アニメーションとして初映像化されたものが制作され、同じく初映像化となった「アルスラーン戦記」と同時に公開されており、加えて1992年にも新作の劇場版アニメーションが制作され、再び「アルスラーン戦記」の新作映画と同時公開された。

さらに1998年には、TVアニメ化もされ全26話が放送された。余談だが、本作は1990年にゲーム化されており、ゲーム内でキャラクターがアニメーションする部分あるので、ある意味ではゲーム版が一番早く映像化された作品と言えなくもない。

ストーリーと登場人物

東京上空に現れた伝説の豪華客船

2026年、春。久しぶりの傘のいらない外出に、人々のは心はずませて夜の街にくり出した。
しかし晴天は長く続かなかった。水中に落ちた墨汁のように、東京上空に湧き出した雷雲。悪質ないたずらのような突然の雷雨に、人々がうらめし気に天を仰いだ時、その眼には信じられない情景が写った。

雲を割り、落ちてくる巨大な船!雷光に照らし出されたそれは、全様を衆視の前にさらけだすと、四本の煙突から煙を吐きながら、月へ向かってゆっくりと航行をはじめた。宙を徨く、巨大な船。

白昼夢のようなその光景に、遭遇した人々は唯々ぼう然と見守るだけであった。しかしその船は、日付けがかわる時間になると、かすむように消えていった。まるで全てが蜃気楼であったかのように。しかし、怪事件はそれで終わりではなかった。そして消えた次の日も、同時刻になるとそれは現れたのであった。

人心を騒がすこの事件に、警察そして軍隊が出動したが、強力な結界に阻まれて近づくことができず、僅かに、船窓に動く影から内には人がいること、船尾のペイントからこの船は1912年に大西洋で沈没した『タイタニック号』であるという、二つの手がかりを得ただけであった。だがそれは、事件をより複雑にしただけであった。

主な登場人物

作品オリジナルの人物

《主人公(名前は任意)》

プレイヤーの分身であり、今回の調査のアドバイザーとしてケンブリッジ大学から派遣された「タイタニック号」とその事件についての研究家。なかなかのイケメンだが、憧れのタイタニック号に入ることができて思わずテンションが上がってしまうなど、可愛いところもある。船内でのある出来事をきっかけに、自分の中に自分の意志と反する何かの存在を感じ始める。

《ウェンズディ博士》
女性考古学者。古代の遺跡から見つけた”人間の歴史をひっくり返すような物”を「タイタニック号」に持ち込んでしまった人物。本作の重要人物だが行方がわからない状態で、ゲーム中盤は船内を彼女とスミス船長を探して歩き回る事になる。

《ロビンとアリス》
ウェンズディ博士の息子と娘。いなくなってしまった母親を二人で探しまわっている。この二人を見つけられると、このゲームは終盤を迎える。

《スミス船長》
タイタニック号の船長。じっとしているのが苦手な性分で船内をウロウロしているらしく、ウェンズディ博士と同じく彼を船内で見つけるのが、本作中盤での目的となる。

AMPのメンバー


《香津美・リキュール》
原作漫画における主人公。大魔導士リゲルフ・リキュールの娘であり、父親から邪界と人間界をつなぐ扉を開く「鍵」としての能力を与えられている。父親と同じく魔法を使うことができるほか、父親の遺品である意志を持った剣「剣皇グロスポリナー」を使用して妖魔と戦う。本作においては主人公のパートナー(護衛?)として常に行動を共にする。


《レビア・マーベリック》
AMPのサブリーダー。自分の体とコンピュータを接続し、電脳世界で活動できる「ヴィジョネイル」という能力を持っており、その能力は同じ能力を持つものの中でもトップクラスで「特a級」と言われている。頭脳明晰、冷静沈着、そのうえ容姿端麗でお金持ちという欠点の見当たらない女性。


《キディ・フェニル》
事件により重傷を負い、体の30%以外を全てサイボーグ化した褐色の女性。そのためAMPメンバーで唯一、妖魔相手に素手で肉弾戦を展開できるだけの戦闘力を持っている。ガサツで男勝りな性格のうえ、割とすぐに暴力に訴えるタイプだが、繊細な女性らしい面も併せ持つ。香津美とは良い相棒の関係にある。


《闇雲 那魅》
地下400m深くに神社を持ち、古来より日本の祭儀を取り仕切ってきた「闇雲家」の次女であり、同時に跡取りでもある女性。神道の力と四聖獣の力が宿った神器を使用して戦う。常に巫女のような服を着ており、極度の潔癖症でガサツなキディとはAMP局内でもよく言い合いになっている。


《彩弧 由貴》
清純派アイドルのような可愛い見た目の女の子で、気弱で余りはっきり物事が言えず、更に心配性ととても妖魔と戦闘が行えるようには見えないが、実は「YLEM PROJECT」と呼ばれる人間兵器開発計画によって造られた人工の超能力者で、予知能力、サイコキネシスが使用できる。

《ラリー・シャイアン》
AMPのリーダーで、かつ創設者。姉が1人おり、姉妹共に妖魔と人間の混血児。それ故に幼少期に人間から虐待され、姉はそれが原因で妖魔側についたが、彼女は逆に妖魔と戦うためにAMPを創設した。現場に出てくることは殆ど無く、主に局内からメンバーを指揮している(滅多に戦わないが戦闘力は高く、香津美と同じく魔術を使用する)。

あれ、磯崎課長は?

確かこの時点では、原作でもまだ未登場だったんじゃないかのう?

画面構成と操作方法

シンプルな画面構成

ではここからは、本作「サイレントメビウス CASE:TITANIC」のゲーム部分に触れていこう。まず最初に本作の画面構成だが、それについては以下の通りである。

ビジュアルウィンドウ
メッセージウィンドウ
メインコマンドウィンドウ
マウスカーソル

「メインウィンドウ」には現在主人公から見えている景色が表示されており、会話時には発言者の顔グラフィック、イベント発生時にはイベント用グラフィックなどが、ここに重ねて表示される。

「メッセージウィンドウ」には、現在の状況説明やキャラクター達の会話、また主人公の内心などがその都度表示されていき、表示メッセージがウィンドウいっぱいになると一旦止まり、マウスを左クリックすることでメッセージが先に進む。

因みに本作はフルマウスオペレーションAVGであり、ゲーム中全ての操作をマウスで行うことができるが、一応カーソルキーでマウスカーソルを動かすことも可能になっていた。

確かにマウス無しでも操作はできるけど、操作感はかなり悪いわね…

この頃のパソコンには、もう大抵マウスがついておったからのう。あくまで例外的なケースへの配慮だったんじゃろな

サイレントメビウスのシステムや特徴

コマンド選択式アドベンチャーゲーム

まず本作のゲームの進め方だが、本作のジャンルは「コマンド選択式アドベンチャーゲーム(ADV)」という扱いになり、その名の通りプレイヤーが適時画面に表示される「コマンドを選択」し、ゲーム進行に必要な内部的な値、所謂「フラグ」を立てつつ進めていく作品である。

選択できるコマンドには「メインコマンド」と「サブコマンド」があり、メインコマンドは以下の通り非常にシンプルなものとなっている。

LOOKビジュアルウィンドウに表示されているもの、または周囲のものを見る
TALKビジュアルウィンドウに表示されている人、または周囲の人に話しかける
MOVE別の階層、または別の施設に移動する
SYSTEMセーブ/ロード、マップ移動などが行えるシステムウィンドウを開く

サブコマンドについては、メインコマンドで「見る」に対してサブコマンドで「何を」をセットで選ぶという一般的なADVのものと少し違っており、メインコマンドを選択するとまずそれが先に実行され、それによるリアクションに対してサブコマンドを実行する。という一風変わったものになっていた。

その為、返ってくるリアクションによってはサブコマンドが表示されなかったり、メインコマンドが違っていてもリアクションが同じだと同じサブコマンドが表示されたり、さらにはサブコマンドにメインコマンドと同じものが出てきたりするといった不思議なケースもあった。

移動はファストトラベルも可能

本作では「タイタニック号」の内部を移動しながら調査を進めていくのだが、このタイタニック号は、甲板、船内(第一層から第九層)、そして船底の全部で11層で構成されており、プレイヤーは各層にある「階段ホール」を拠点にして、その層にある各種施設をメインコマンドの「MOVE」で移動することができた。

ただこのMOVEコマンドでの移動については、ある施設から別の層にある施設への直接の移動は不可能で、階段ホールから一層ずつ降りて(登って)目的の施設がある階層まで行ってから目的の施設に移動するという非常に手間の多い流れになってしまっていた。

しかし本作にはオープンワールド系のRPGにある「ファストトラベル」のように、目的の場所に一発で移動できる方法がちゃんと存在していた。それが「マップ移動」で、メインコマンドの「SYSTEM」から「mapsystem」を選択すると、画面にタイタニック号の側面断面図が表示され、その中のオレンジ色の場所をクリックすると、その施設に飛ぶことができたのだ。

ただし、ファストトラベルできるのは一度でも行ったことがある場所に限られる

サブパートナー選択システム

主人公とAMPのメンバーは、タイタニック号内での調査を迅速に行うために三名ずつ二組に分かれて、手分けをして調査を進めることを決定する。その際、主人公組には護衛役として香津美が同行するのだが、加えてもう一名を「サブパートナー」としてAMPメンバーの中からとして選ぶことができた。

選択可能キャラクター
レビア・マーベリック
キディ・フェニル
闇雲 那魅
彩弧 由貴

サブパートナーの選択によりシナリオの展開が大きく変化するという事は無いが、コマンド実行時のキャラクターのリアクションや、香津美とサブパートナーとの掛け合い台詞が変化するほか、特殊なイベントにおいてはイベント用グラフィックもサブパートナーによって違うものであったり、後述する妖魔との戦闘においての戦術や難易度が若干変わったりする。

ちなみにサブパートナーは、一度選んだら最後まで変更は不可能なので注意が必要である。

妖魔(ルシファーホーク)との戦闘(バトル)

原作の「サイレントメビウス」といえば、やはり「邪界(ネメシス)」から現れる「妖魔(ルシファーホーク)」との熱い戦闘(バトル)がメインと言っても過言ではない要素である。本作、ゲーム版の「サイレントメビウス」でも、アドベンチャーゲームでありながらなんと妖魔との戦闘要素が存在したのである。

ただこの部分については、あくまでアドベンチャーゲームのオマケ的な要素ではあるのだが、それにしてはかなりしっかり造られており、戦闘システムの説明をするとかなり長くなってしまうので後でしっかり説明する。

ちと、お預けじゃ

美麗で精密、かつ高品質なグラフィック

「サイレントメビウス」の原作漫画を読んだ事がある方ならご存知と思うが、この作品は非常に絵の書き込みも精密で、登場するキャラクターたちも非常に美しく(可愛く)、それでいて妖魔たちのグロさや戦闘時の迫力など、非常にハイクオリティの作品であった。

しかし、こういった作品をゲーム化する際に作品のファンとして気になる(心配になる)のは、原作のハイクオリティさをゲームでどこまで再現できるかという点であっただろう。しかし結論から先に言ってしまえば、それは完全に杞憂だったと言える。

その理由はまずゲーム化を担当したのが、当時アニメーション制作会社だった「ガイナックス」だったことである。

ガイナックスは1989年に「電脳学園」でゲーム業界に殴り込みをかけてきた会社だが、その美麗で精密、かつ高品質なグラフィックは当時では「驚愕」と言える代物だった。そのガイナックスが製作を行ったので、当然本作のグラフィックも美麗で精密、かつ高品質なものが作られたのである。

次に原作者自身が作品に関わっていた事も理由であろう。

原作者である「麻宮騎亜」氏は本作に「総監督」として関わっており、それだけではなく「作画監督」にも「菊池通隆(アニメーター活動時の原作者の別名義)」として参加していたのだ。であるならば、原作の良さを全く失わずにゲームグラフィック化できた事も「納得」以外の言葉が無い

麻宮騎亜氏は1989年の「電脳学園II ハイウェイバスター!!」に、菊池通隆氏の名義で参加されてたんじゃが、もしかして本作開発のきっかけはそこ繋がりだったんじゃろか?

妖魔(ルシファーホーク)との戦闘(バトル)

では《前半》で割愛した本作での「妖魔との戦闘」について解説していこう。

戦闘の発生と基本ルール

妖魔との戦闘が発生する状況については、タイタニック号内部の特定の場所に入った時、また特定の場所でのプレイヤーの選択肢によってのみ発生し、移動中などに突然ランダムで戦闘が発生するということはない

次に戦闘のルールについてだが、戦闘は「ターン制」で、まずそのターンにAMPメンバーが行う攻撃方法を選択、その後AMPメンバーと妖魔が敵味方入り乱れての攻撃を行っていき、決着がつかなければそのターンは終了、また次のターンでの攻撃方法を選択するというのを「戦闘終了条件」になるまで繰り返すことになる。

その戦闘終了条件については、敵である妖魔に一定のダメージを与えて倒す(あるいは撤退させる)ことができれば「勝利」となり、味方の誰かが一定のダメージを受けるか戦闘コマンドから「逃げる」を選択すると「敗北」という形でそれぞれ戦闘が終了する。

ちなみに本作はRPGではないため戦闘に勝利した場合でも、経験値が入る、レベルアップする、能力値が上昇するなどという要素は存在しない。また逆に戦闘に敗北した場合でもゲームオーバーになったりすることはなく、その場を一旦離れて体制を立て直す事になる。

原作を再現した攻撃方法

さて戦闘時に選択できる攻撃についてだが、まず戦闘ターンの最初には、「AUTO MODE」と「選択MODE」のどちらかを選ぶ必要があり、前者の場合、通常攻撃/グラビトン/魔術の3つから基本方針を選択する事で、香津美とサブパートナーがそれに合わせた攻撃を後述の攻撃方法の中から自動で判断して行ってくれる。

一方後者の場合、香津美とサブパートナー各々が持っている攻撃手段から一つずつ選ぶことで、その攻撃を実行させる事ができる。各々が持っている攻撃手段は以下の通り、ちゃんと原作を意識したものとなっている。

香津美ブラスター/グラビトン/魔術/結界
レビアブラスター/グラビトン
キディブラスター/グラビトン/素手
那魅護神刀/お札/若水/結界
由貴グラビトン

戦闘には基本的に主人公と香津美、そしてサブパートナーが参加するのだが、主人公は一般人であるため妖魔に対する攻撃を持っていない。その為攻撃には参加できないが、妖魔に狙われるとダメージを受けてしまうという損な役割である。ちなみに一部イベント戦闘に関しては、AMPメンバー5人での戦闘も行える。

そしてここが本作の大きな「売り」の部分なのだが、選択された攻撃方法は一部を除いて実行時にAMPメンバーが攻撃している姿やその効果が「アニメーション」で表示されていたのである。このアニメーションもさすがアニメ制作会社の「ガイナックス」が製作しているだけあって、かなり迫力あるものになっていた。

余談だが本作で由貴をサブパートナーに選ぶと、なんと由貴がグラビトンを撃つという凄いシーンを見ることができる。

しかしなんでよりによって由貴にグラビトンもたせたのか…当たらないでしょ彼女じゃ

「彩弧ガンは心で撃つ」じゃよ

《話の大筋》タイタニック号を蘇らせた妖魔の狙い

では次は、本作本編のストーリーについての大筋を説明していこう。

それは2026年4月14日の出来事

『深紅の月、天頂に輝くとき、眠れる死者が動き始める』という由貴の予言、そして政府からの依頼により香津美たちAMPのメンバー5人は、ケンブリッジ大学から派遣されたタイタニック号の研究家である主人公と共に、突如TOKYO上空に現れた1912年4月14日に大西洋に沈んだはずの「タイタニック号」に向かう事になる。

タイタニック号の甲板に乗り込んだ香津美たちが見たものは、沈没船「タイタニック号」ではなく、まるで今なお航行中であるかのようなま新しいタイタニック号と、同じくまだ当時のままの姿で船内外で活動している乗員や旅行を楽しんでいる乗客たちだった。しかしほとんどの船員や乗客たちは話しかけても同じ事を繰り返すだけで、生気が感じられなかったのである。

展望台に登って周りを見てみると船の周りは東京上空ではなく一面の海で、海の上には由貴の予言にあったように「深紅の月」が輝いていた。香津美はおそらくこの船は妖魔の力によって蘇ったもので、乗員や乗客たちも妖魔の力で当時の記憶を持ったまま偽りの生を与えられているのだろうと予想する。しかし何故妖魔がそんな事をしているのかはまるで解らなかった。

ただ由貴の予言によれば、あの月が天頂に昇るときに何かが起こる事は恐らく間違いなく、それは今からおよそ5時間後、そうそれは1912年にタイタニック号が沈んだ時間なのだ

妖魔に支配された船内、そして謎の女

乗員からこの船に乗っている女性考古学者のウェンズディ博士が、何やら奇妙な物体を船内に持ち込んでおり、それについてはスミス船長も知っているという情報を得た香津美たちは、残り少ない時間でウェンズディ博士とスミス船長を探し、かつ妖魔の目的を解明するために3人ずつ二組に分かれて船内を捜索する事にした。

船内にある娯楽室に入り、そこにいた乗客の男たちにカードをしようと誘われ、ポーカーをすることになるが途中で彼らのイカサマを見破る。すると男たちの姿が溶け始め、それは醜い姿の妖魔たちに変わったのである。この船は妖魔に支配されており、このように蘇った乗客たちの身体を乗っ取る事も可能になっているのだ。

何とか妖魔を撃退しさらに捜索を続ける一行は、ホールにてダンスパーティが開かれているのを見つける。これも情報収集とばかりにドレスに着替えパーティを楽しむ香津美たちだが、そのとき一人の黒髪の美しい女性が主人公に近づきダンスを誘ってきた。それに応じる主人公だが、彼女はなんとダンスの最中に主人公にキスをしてきたのである。

気がつくと彼女はいなくなっていたが、それ以来主人公の心の中には主人公自身を意志とは違う「誰かの言葉」が流れてくるようになったのである。

ようやく見つけたスミス船長、しかし船長は…

その後も船内で様々な事に出くわす香津美達であったが、ようやくスミス船長を見つけ出す事ができた。彼からウェンズディ博士のこと、そして彼女が持ち込んだもののことを聞き出そうとするも、話を聞いた船長は香津美達のことを「不審者」、さらには「密航者」であるとの疑いもかけ、装備などを奪ったうえで船倉に幽閉したのである。

丸腰で船倉に閉じ込められた香津美達、すると船倉に何者かの不気味な声が響き、船倉の暗闇から醜い顔の妖魔が姿を現したのだった。

というのが本作中盤あたりまでの大筋となる。果たして香津美達はこのピンチをどうやって切り抜けるのか、そしてこんなことをしたスミス船長もやはり妖魔に乗っ取られてしまっているのか。またウェンズディ博士が船に積み込んだものは一体何なのか、それはこの船を復活させた妖魔の狙いと関係しているのか。

それらについては、是非実際にプレイして確認して欲しい。

作中で時間が無い時間が無いって言う割りにドレスに着替えてダンスに参加したり、のんびりプールやらお風呂に入ったりするのがちょっと面白いわよねw

そういうのが無いと、イベントグラフィックも暗いものばかりで寂しくなるからのう

オリジナルキャラの「処理」

本作に登場するプレイヤーの分身となる主人公は、原作には登場しないこのゲームオリジナルのキャラクターである。原作付きの作品がゲーム化(アニメ化もそうだが)された場合などに、その作品オリジナルのキャラクターを安易に主要キャラに据えるのは、筆者的には諸刃の剣ではないかと考えている

当然新しいキャラクターが登場するとなれば、原作ファンとしても興味が沸く所だし話題にもなると思うが、出すのは構わないがその後そのキャラクターをどう「処理」するのか?という問題が出てくる。特にそのキャラクターが原作のキャラクター達と近い位置にあればあるほど、作品終了後のそのキャラクターの処理に困るのではないだろうか。

要は原作に「逆輸入」させるのか?それとも「パラレル」という扱いで切り捨ててしまうのかということだ。これはオタクの面倒くささでもあるが、ゲーム版を是とするファンには原作逆輸入は歓迎できるところだが、原作至上主義のファンにとっては逆に受け入れにくい存在となる。とはいえパラレル作品にしてしまうと「なんでもあり」になってしまい今度は感情移入し辛くなってしまうのだ。

そういう点で言うと本作は非常に上手く「処理」できていると思った。最初からAMPに入隊してきた新キャラクター!などではなく、起こった事件に関する単なるアドバイザーとして登場しているので、事件(つまりこの作品)が終われば無理なくいなくなれるキャラクターだったのだ。

しかしちょっと問題もあって、ゲームを進めていくと徐々に主人公と香津美はいい感じの雰囲気になっていくのだ。いやいや香津美さん、あなたには「ロイ」って恋人がいるでしょう!と原作を知っている人なら思ってしまうし、このまま関係が進んだらそれこそこの後の処理をどうするんだ?というところも気になってきてしまうだろう。

しかしそこもちゃんと考えられており、最後には「AMPの活動内容や、妖魔の存在を公にする事は出来ない」という規則による「処理」が行われるのだ。ちょっと切なくなるこの二人の結末については、これも是非作品をプレイして確認して欲しい。

《最後に》ADVとしては凡作、キャラゲーとしては秀作

では最後に「サイレントメビウス CASE:TITANIC」というゲームについての評価であるが、「原作付きADV」ということでまずADV部分についての評価からしていこう。

まずゲームシステムの部分が「電脳学園」からあまり進化しておらず、シンプルで解りやすい反面、画面にでかでかと表示されているメインコマンドがあまり意味を成しておらず、サブコマンドだけでも成り立ったのでは?と感じてしまった。また全体的にボリュームも少なく、「コマンドを駆使してゲームを進める」という感覚も薄いため、ADVを遊んでいる感が弱かったのは残念だった

一方でストーリーは非常に面白く心に来るものはあったが、正直「サイレントメビウスで無ければいけない物語」ではないかもしれないと思った。しかしそれは前述の内容と重なるが、あくまでAMPが関わった事件の1ケースという扱いにして本編の内容と交わらせないことで、この作品が本編へ余波を与えないようにしているのだと解釈できる。

そしてグラフィックについては、間違いなくこの時代の最高峰と言っても過言ではないクオリティで高く評価でき、ゲーム中の音楽も雰囲気にマッチした良曲が多かった。

次に原作付きということで「キャラゲー」としての評価についてだが、これは言うまでも無く「満点」をつけても良いと言える評価だと思う。流石に原作者が関わっているだけに、キャラクターのデザインもキャラクター同士の会話による空気感も、全く原作のものを壊さない素晴らしい出来になっているのはファンとしては嬉しいところだ。

また先ほど「ボリューム不足」と書いたが、確かに本作は数時間で終わってしまうレベルのボリュームである。しかしサブパートナー選択システムのお陰で、選んだサブパートナーによって道中の会話やグラフィック、そして戦闘時の戦術などが変わってくるので、一度クリアした後でも別パートナーを選べば違う楽しみをまた味わえるのだ。

サブパートナーは4人いるので全部で4周遊べると言う事を考えれば、このボリュームは寧ろ逆に最適なのかもしれない。さらにコマンドの選択次第では見る事ができないグラフィックなどもあるので、前のプレイとは選択肢を変えてそういったものを探してみると言うのも楽しいだろう。

惜しむらくは、本作にはグラフィックの閲覧モードが存在していなかったことだろうか。これは本当に惜しい。

最後にちょっと余談だが、本作は1991年にFM-towns版、1998年にプレイステーション版とCDメディアによる発売がされており、ゲーム内容は基本的に同じなのだが、なんとオープニングデモが「声付き」なのである。しかも声優は1991年の劇場版アニメーションと同じになっているので、それだけでも必見(必聴?)の価値はある作品となっている。

と言ったところで本作の評価としては、アドベンチャーゲームとしては凡作な部分はあれど、原作付きのキャラゲーとしては秀作といって問題ない、というところである。もしサイレントメビウスのファンでこの作品に触れた事が無かった、あるいは最近サイレントメビウスを知ってファンになったという方は是非一度遊んでみて欲しい作品だ。

遊びたくなったら?

もし今回の記事を読んで「サイレントメビウス CASE:TITANICに触れてみたい」とか、「またサイレントメビウス CASE:TITANICを遊んでみたい」と思った方は、以下のサイトを参考にして欲しい。

パソコン版

レトロゲーム配信サイト「ProjectEGG」にてPC-9801版が現在配信中。

関連商品

2022/04/18より「麻宮騎亜画集 Réunion」が発売中とのことです。表紙からして解ると思いますが、もちろん「サイレントメビウス」のイラストも収録されているようですね。ちなみにKindle版もあります。興味のある方は是非!

≫EXIT

お疲れ様でした!

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コメント

  1. 名無しの冒険者 より:

    EGG版のOPはどうなってるかなぁ、と思ったらゼネプロのまま。さすがに直せなかったかw
    久しぶりにやるとラストの倉庫に入るためのフラグ立てをどこでどうすれば良いのかさっぱりわからず、無駄に上から下まで移動しまくりでした。
    キャラクターゲームではあるんですが、何回話しても同じことしか話さないRPGのキャラクターに対する説明・理屈付めいた部分もあったりして、妙なところで細かくこだわるゲームでしたね。
    WinになってPGできる人に加えてシナリオ書ける人までいなくなったのか、鋼鉄のガールフレンドがあの体たらくになったのが本当に悲しい。

  2. 名無しの冒険者 より:

    Playstation StoreにてPS3/PS Vita/PS Vita TV/PSPのゲームダウンロード販売は終了してるため、中古を探すしかないですね

  3. ソンゴスキー より:

    >>1
    >EGG版のOPはどうなってるか
    そういえば今回はPC98版を取り扱ったんですが、昔遊んだときとなんかOP違うなあと思ったら、ラリー課長の顔アップ絵がないんですよねw(当時はFM-towns版で遊んだ)
    >ラストの倉庫に入るためのフラグ立て
    別の倉庫にある氷漬けの妖魔みたいなやつ触るのがフラグでしたっけ?
    >RPGのキャラクターに対する説明・理屈
    もしやドラクエの町の人々も、妖魔によって復活させられたんじゃ…だから家の中でタンスや壷の中を荒らされても起こらないのか…。

  4. ソンゴスキー より:

    >>2
    なるほどそうでしたか、わざわざ確認していただいてありがとうございます!訂正文入れておきますね。

  5. etc. より:

    >アニメおよび漫画が原作のAVG…
    アニメ原作のPC版AVGを思い返すとガイナックス制作の作品は、角川系列との
    連携も高いことから、CGや演出等は最上に到達したのではないかと思います。
    アニメや漫画が原作となると株式会社ラポートの「機動戦士ガンダム」を思い出
    します(?)が、原作の舞台設定をきちんと踏襲した作品ですとマイクロ・キャ
    ビンの「うる星やつら」と「めぞん一刻」などはAVGとして面白かったです。
    サイレント・メビウスは、原作(設定やストーリー)を損ねることなく、AVG
    として成立している良作だと思います(システムに関しては…同意見です)。
    しかし、原作ありの作品は、その後の原作展開にも影響をおよぼすので、制作に
    は慎重になるので、PC版はあまりつくられて無いような気もします。
    角川、コンプティーク、ときいて「カムイの●」となると、クラシックゲームも
    やや末期的な状態ですが。

  6. マーフィ大尉 より:

    記事でも触れられていますが、原作で恋人がいるキャラがゲーム中で
    オリキャラと良い仲になると、寝取りと寝取られを同時に味わったようで
    (´·ω·`)な気分になりますな!
    小官といたしましては、原作(のキャラ)そのままなゲームよりも
    世界観を活かしたオリジナル・ストーリーの方が好みです。
    ガンダムでいえば『戦慄のブルー』や『コロニーの落ちた地で…』みたいな。
    そのうえで本編に少し係われるとちょっとうれしい。
    またまたガンダムで例えると「木馬へ補給物資を運ぶミデアを護衛せよ」とか。

  7. 名無しの冒険者 より:

    >>4
    psp以外の実機からのストア(ps3、vita)だと現在でも買えますよ。

  8. ソンゴスキー より:

    >>5
    >角川系列との連携も高いことから、
    確かに不思議の海のナディアも角川作品でしたからね。そういう連携がしっかり取れるのはガイナックス強みだったんでしょうね。
    >マイクロ・キャビンの「うる星やつら」と「めぞん一刻」
    「うる星やつら」のほうはめちゃくちゃマイナーなキャラまで登場したり、「めぞん一刻」は宴会がシステムに組み込まれてたりとよく出来ていましたね。
    >「カムイの●」となると
    伝説の映画版を恐ろしく水で薄めた何だか解らないADVですねw

  9. ソンゴスキー より:

    >>6
    >寝取りと寝取られ
    確かに原作で言えばなんか自分をロイって感じちゃう部分がありますが、ゲームでは主人公は自分(オリキャラ)なのでロイから奪っちゃった罪悪感もありますよね。しかも香津美もまんざらじゃなかったし…。
    >世界観を活かしたオリジナル・ストーリーの方が好み
    確かにそういうのは世界観がしっかりしている作品だと面白いですよね。ちなみにシステムサコムの「DOME」は原作小説の裏で動いていた物語って体で作られた作品だったようですね。
    です。

  10. ソンゴスキー より:

    >>7
    なんとか自分でも確認できる環境を用意して、購入できるのを確認し、記事も修正しました。っていうか購入もしちゃいましたw
    ありがとうございます。

  11. 名無しの冒険者 より:

    いつも拝見させてもらってます。
    雨宮さんといえば自分はコンプティーク派だったので神星記ヴァグランツを思い出すんですが、途中から読みだしたせいもありなんか話が深そうだけど意味わからない、あと女の裸が出るんだけど微妙にエロくない。当時高校生の自分がそう感じるんだからよっぽどです。
    そんな印象の雨宮さんですが、それから月刊コミックコンプでサイレントメビウスを後日知って印象が変わりました(良い方に
    本作は当時MSXと88しか持ってなかった自分には高嶺の花で、後日大人になってからやりました。やった感想はガイナックスゲーにやはりハズレ無し!って思いました。エロも頑張ってるし、人の作品なのに(笑。
    あと確かになんかすぐ終わった記憶が・・・あまりに短くてこれひょっとしてTrue endルートが別にあるのか?見逃したエロ画面があるのか?って悩みましたね

  12. ソンゴスキー より:

    >>12
    >いつも拝見させてもらってます。
    いらっしゃいませ。現在コメントが認証制になっていて、書き込んでも直ぐには反映されないようになっています。もし反映されてないと思って連続で書き込まれたのでしたら申し訳ないです。
    >雨宮さんといえば自分はコンプティーク派
    私も初麻宮さんはコンプティークのヴァグランツだったんですが、申し訳ないんですが余り内容は記憶に残って無いですね。そして同じサイレントメビウスで再認識した感じです。
    >ガイナックスゲーにやはりハズレ無し!
    そうですね。当時MSX2で電脳学園とか遊んでてそのグラフィックの美しさに驚いていましたが、後年FM townsを購入してサイレントメビウスを遊んだときは、同じような思いを抱きました。
    >見逃したエロ画面が
    確かに本編は短めでしたね。まあその分、別のパートナーを選んで周回プレイがしやすかった感じです。見逃したとすれば、そのパートナー別の入浴シーン?w

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