勇者の塔 43F
No.0174
発売年 | 1990年(Apple II版は1988年) |
販売/開発 | アスキー |
ジャンル | 3Dダンジョン探索RPG |
発売機種 | PC-88、PC-98、FMTOWNS、PCエンジン、スーパーファミコンなど |
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本記事を読み進める前に…
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「ウィザードリィ #5 災渦の中心」とは
「ウィザードリィ #5 災渦の中心」(#はシナリオと読む)は、1990年に「アスキー」より発売された、擬似3Dダンジョン探索タイプのファンタジーRPGで、同社より1985年に発売された「ウィザードリィシリーズ」の5作品目にあたります。
本作はもともと「Sir-Tech」という会社が1988年にAppleII用として販売した作品を、アスキーがその日本語版(国産PC版)の移植を担当し、日本で発売した作品ということになります。
前作「Wizardry #4 ワードナの逆襲」にて、奇抜な方向に進んでしまったかのように思えた本シリーズでしたが、本作で従来の王道的ウィザードリィに戻り、さらに新たな要素を加えて純粋にパワーアップした作品となっていました。
余談ですが、私は当時本作のFM TOWNS版を購入していたのですが、起動したときにCDから流れ出した壮大なBGM(生音)にえらく感動した記憶があります。
ストーリー
ストーリーについては、
都市国家リルガミンは過去に狂王トレボーやワードナなどにより数々の災いに見舞われたが、それらは冒険者達の手によって解決されてきた。しかしそのリルガミンを再び災いが襲う。
リルガミンの地底深くには三軸の門に囲まれた「力の結び目」があり、4大元素の力が不安定になると「ゲートキーパー」が門の中に入り調和を取り戻す儀式を行うことになっていたのだが、「ブラザーフッド教団」の高僧「ソーン」は教団を裏切って自らの手で4大元素の調和を乱し、儀式のために門に入ったゲートキーパーを捕らえてしまったのだ。
今回冒険者達に与えられた任務は、三軸の門の中で囚われの身となったゲートキーパーを助け出し、ソーンを倒してリルガミンに再び安定を取り戻すことである。
と、こんな感じの内容でした。
Wizardry#5はこう変わった!
過去作と共通する部分は省きます
システムについて説明する前に、本作にはパソコン版以外にPCエンジン版とスーパーファミコン版があるのですが、それぞれ微妙に仕様が違うところもあります。
ですがここでは基本的にパソコン版の仕様を基準に話を進めていきます。
さてゲームを始めるには、まずキャラクターを作らなければいけないのですが、キャラクターの生成について(種族や職業など)や、リルガミンの町の施設などは過去シリーズと同じなので説明は省きます。
ちなみに本シリーズついて、またはにシリーズにおけるキャラクターメイキングについて、もっと細かく知りたい方は以下の記事を参照のこと。
キャラクターを作成して迷宮に潜ると、過去シリーズでお馴染みのワイヤーフレームで描かれた迷宮と、シンプルな情報表示画面があらわれます。
鍵付き扉への対応が変わった
早速ですが、今回より迷宮探索時に使用できるコマンドに「PICK」「USE」が追加されました。
PICKは鍵の掛かった扉を開けるコマンドです。過去作品にも鍵の掛かった扉はありましたがそれは対応する「鍵」によって開けることができました。
しかし今回からは対応する鍵のないただの鍵が掛かった扉というのが登場するようになり、それらはこのPICKコマンドで開ける事になります。
また過去作品と同じように鍵が必要な扉もあり、その場合はUSEコマンドで使用する鍵を選択して開けなければいけなくなりました。
ちょっとめんどくさいですが、このコマンドは鍵だけでなく「特定の場所で特定のアイテムを使用する」というシチュエーションでも使用されます。
「INSPECT」が多目的化した
新しく追加されたというより、仕様が変わったコマンドに「INSPECT」があります。
これは過去作品では、その場で別の冒険者(死体含む)を探すことに使用していましたが、本作からコマンドが細分化され「シークレットドアを探す」「隠されたアイテムを探す」「死体を探す」の3つになりました。
シークレットドア(目で見えない扉)は過去作品にも登場していましたが、それは場所さえわかっていれば探さなくても通ることが可能でした。
しかし本作からは例えプレイヤーが場所を解っていても、このコマンドを使用して扉を見つけなければ通ることができなくなってしまっています。
隠されたアイテムについても同じで、過去作品ではその場所に行けば「探しますか?(Y/N)」というメッセージが出て「Y」を押すことでアイテムを見つけられましたが、本作からは探しますかのメッセージが必ずしも出るとは限らず、このコマンドを怪しい場所で使用してアイテムを探すというように変わっています。
フロアが20×20ではなくなった
あと迷宮についての大きな変更点として「迷宮の大きさ」があります。
過去作品では1フロアの大きさは必ず縦20x横20マスと決まっていましたが、本作からはそれがなくなり、フロアごとに大きさも形も違うようになりました。
そのおかげでマッピングが物凄く難儀になっています(機種によってはオートマッピングがあるので助かるが)。
モンスターが末弥純氏デザインに
過去作品同様、迷宮を歩いていると敵に遭遇(ランダムエンカウント)し戦闘シーンに移行します。
本作において過去作品から大きく変わっている部分の一つに、この戦闘シーンがあると思います。
まず非常に目立つ部分として、敵であるモンスターのグラフィックサイズが大きく見やすくなりました。そしてさらに日本版への移植にあたりモンスターのデザインが全て、ファミコン版ウィザードリィのモンスターデザインを担当した「末弥純」氏の手によって変更されています。
余談ですが、私は昔から「ウィザードリィはパソコン版派」であったのですが、正直、正直、ファミコン版のあのモンスターデザインだけは羨ましく思っていたので、この変更は当時とても嬉しかったのを覚えていますね(ただ私が最初に買ったFM TOWNS版は末弥純氏のではなかったんですがw)。
盗賊が戦闘でも活躍できる
戦闘システムについても基本的に過去作品と同様なのですが、大きく変わった点に忍者、及び盗賊のみ「HIDE(隠れる)」というコマンドが追加されました。
これは敵の陰に隠れて不意打ちをするという攻撃コマンドで、これはのちに過去作品の#1~#3を纏めたスーパーファミコン版「ストーリーオブリルガミン」に逆輸入されています。
戦闘に「距離」の概念が追加
さらに戦闘について大きく変わった点としては、戦闘において「距離」という概念がより強く影響するようになったというのがあります。
過去作品では、戦闘中に接近攻撃を行えるのは前衛(前の3人)のみで、味方の後衛(後ろ3人)は魔法以外で敵を攻撃する手段がありませんでした(その代わり敵の魔法以外の攻撃を受ける心配も無い)。
しかし本作では武器に射程距離の設定(近接/短距離/中距離/長距離)がつき、これにより後衛でも装備している武器(弓やポールウェポンなど)によって戦闘に参加できるようになっています。
敵にも「隊列」の概念が追加
また敵のグループにも「隊列」というものが設定されるようになりました。
例えば敵が3グループ登場すると画面の表示で上から前列、中列、後列というように隊列を組んでいることになり、味方が持っている武器とこの隊列によって攻撃が届く届かないが発生します(またターン毎に敵も隊列を変えてきたりする)。
さらに敵の攻撃にも射程距離が設定されているため、今までは魔法以外攻撃を受けることが無かった味方の後衛メンバーも、普通に敵の攻撃にさらされるようになり、今までのように装備なしで(荷物の所持数確保のため)歩き回らせるわけにはいかなくなり、後衛の装備についても気を配る必要ができてしまいました。
距離の概念などはちょっとめんどくさかったものの、後衛でも戦闘に参加できるおかげで戦闘がかなりスピーディーになったのはとても良かったと思います。
「罠」の名称が変わった
戦闘終了後のお楽しみであり、また恐怖の存在でもある、お宝が入った「宝箱」。これは本作にも同じように登場します。
ただし過去作品では基本的に部屋に入ったときに遭遇した敵が宝箱を持っている仕様だったのに対して、本作では普通に通路などで遭遇する敵でも宝箱を落とす確率が高くなっています。
そして宝箱といえば、下手に作動させたら味方パーティに多大な被害を与える恐ろしい存在「罠」があります。
本作でも過去作品同様、盗賊(あるいは忍者)にINSPECTで罠を調べさせ、DISARMで罠を解除するという手順は変わりません。しかし、この罠について本作で大きな変更点が加えられました。
それは、罠の名称がほぼ全部変わったということです。
これは過去作品でもファミコン版などで遊んでいた方にとっては「ふーん」程度の変更で済むでしょうが、罠の解除を「罠名称をキーボードから打ち込む」ことで行っていたパソコン版ユーザーにとってはまさに「死活問題」です。
辛うじて「TELEPORTER」は残ったものの、他のは「LAPIS SPINE」だの「RAINBOW RAY」だの「JAX SLING」だのがらりと変わってしまったので覚えなおすのが大変です。
まあ覚えなおすのは大変なのですが、それだけに「罠外しの緊張感」というものが再び蘇ってきたとも言えるでしょう。
新しい試み「スキル制」の導入
Wizは「レベル」で成長するRPG
さてここまでは比較的「仕様の変更」という部分でしたが、次はWizardryという作品の根幹に関わる新しい試みと言える部分についてです。
過去作品を含め本作もなのですが、ウィザードリィというゲームでのキャラクターの成長は、戦闘を繰り返して経験値を得て、それが一定値になるごとに「レベルアップ」します。
そしてそれと同時に能力値、HPの上限や魔法の使用回数の上昇、新たな魔法の取得もできるというようなシステム、いわゆる「レベル制」になっていました。
しかし、本作よりこの成長要素に一つ変更が加えられました。というのはレベル制だけでなく「スキル制」の導入です。
「反復」による成長が導入された
スキル制、つまりレベルに関係なく、行動を実行した回数により経験値が入り、それにより能力が上がるというものですね。そして追加されたスキル制の能力というのが、
「水泳」です。
本作のダンジョン内には、様々なところに泉や井戸、温泉などがあります。
これらの場所には入ったものに特殊な影響を与えるものもあれば、お宝が眠っていたり、固定のモンスターがいたりして、それがまたゲームの進行に影響を与えるものだったりします。
そして更に、これらの場所には何段階かの「深度」というものがあり、より深いほど重要なものがあったりするのです。
そこで必要になってくるのがこの「水泳」という能力で、この能力が低いのに深い深度の泉などに潜ってしまうとあっさり死亡します、溺死です。
潜っても死なないようにするには、おぼれない程度の泉に何度も潜って経験を増やし、この水泳の能力値を上げていく必要があるのです。
これは面白い試みだとは思いましたが、いかんせん水泳上げの作業が長く地味だったので疲れる要素ではありました。
NPCとの「会話」が可能になった
やっと登場したNPC
さてでは最後に、本作において新たに加えられた最大の変更点といってもいい要素「NPC」の存在について紹介しましょう。
NPCというのは「ノンプレイキャラクター」つまりプレイヤーが操作しないキャラクターの事を指し大抵のRPGには登場するものなのですが、ウィザードリィシリーズでは本作においてようやく登場しました。
とはいっても過去作品でもNPC的なものは実は登場していました。
しかしそれらのNPCは、プレイヤーに対して一方的な情報をぶつけてくるだけか、せいぜい「Y/N?」と聞いてくるだけの存在で「会話」的なものはほとんど無かったのです。
そう、今回登場するNPCは「会話」ができるというのが非常に大きなポイントだったといえるでしょう。
NPCはダンジョンの特定の場所に
ダンジョン内の特定の場所(あるいはエリア)にいくと、通常のエンカウントメッセージの後に「なにかがちかづいてきた」というメッセージが表示される場合があります。
これがNPC登場の合図で、この後登場する人物(ときにはモンスター)の場合は、通常の戦闘画面とは別のコマンドが表示されるようになります。
そのコマンドから「TALK」を選択すると画面の状態が「会話モード」に移行し、キーボードから文字を入力できるようになるのでこれで会話を行います。
とはいうものの、いきなり出会った相手になにを話したらいいのかなんて解らないですよね?
挨拶は人間関係の基本
なのでここは人間関係の基本「挨拶」から入ります。
すると向こうも挨拶を返し、その後なにかしら話しかけてくるので、その言葉のなかから気になったワードをキーボードから打ち込む。
するとそのワードについて向こうも答えてくれるので、その答えの中から(あるいは前の会話の中から)また気になったものを聞く、こういうった手順で相手からどんどん情報を聞き出していくのです。
そのNPCが持っている情報は、ゲーム進行に直接かかわるヒントや、他のNPCの情報(誰々が何を無くして困ってるなど)、特殊なアイテムの整合方法など色々ありますので、しっかり聞いてしっかりメモしておかないと後々大変なことになります。
まあこれらの会話はフラグではないので、攻略本などがあれば会話を行わなくても進行は可能だったりするんですがw
NPCとは交換や売買も可能
またNPCとは、会話だけでなく物品の交換や売買、または与える事も可能で、中にはそのNPCしか売っていない重要なアイテム(鍵など)もあります。
更に、NPCの好物を探してきて与える事で道を通してくれたり、特定のゴールドを与える事でその金額に応じた情報をくれるものなど様々なNPCが登場するので、色々なコマンドを実行してみる必要がありました。
こういったNPCとのやり取りは、ややめんどくさくもありましたが、慣れてくると非常に面白い要素だったと思います。
ちなみに本作では登場するNPCから物品を盗んだり、酷いことにNPCを殺すことも可能ですが(生き返らせることも可能)、そういった行為をした場合NPCとの関係が悪くなり情報を与えてくれなくなったりするので、実行する場合には十分考える必要があるでしょう。
次のWizardryへの一歩
(画像は「ウィザードリィ#6 禁断の魔筆」)
さて書きたい事が多すぎて、このままだと延々と続けてしまいそうなので、この辺でまとめるとしましょう。
本作は古典的ウィザードリィというテイストをしっかり維持しつつも、様々な点に新たな要素を加えてウィザードリィというシリーズに新しい風を呼び込んだ意欲的な作品だと思います。
私自身当時最初は戸惑いながらも、やがて過去作品と同じように没頭していまっていましたし、完成度としてみても過去最高の出来だったと思っています。
ちなみに本作が発売された翌年、1991年にウィザードリィシリーズの次回作「ウィザードリィ#6 禁断の魔筆」が発売されました。
ですがグラフィック面、システム面、そのほかありとあらゆる要素がウィザードリィシリーズとは思えない変わりっぷりを見せたために、当時の私は「こんなもんウィザードリィじゃねえ!認めねえ!」とぶち切れた思い出があります。
しかし、改めて「ウィザードリィ#5」という作品を振り返ってみると、実は今回の記事で挙げた主だった変更点はほぼ全て「ウィザードリィ#6」に継承されているんですよね。
つまり確かに#6は大きく変わりはしたものの#5の時点で既に#6の片鱗は見えていた、ある意味では#5の立派な続編でもあったわけです。
個人的に#6は大好きだったウィズの魔法名が変わってしまったことがとにかく嫌だったのですが、今回紹介はできなかったものの#5でも魔法は結構変わってるんですよね。
多分私個人ではなんやかんやと理由をつけてはいたものの、多分私はこの洋ゲー臭たっぷりのグラフィックが当時の私には一番受け入れられなかったのが大きかったと思います。
もし日本版への移植の際に、グラフィックが日本人向けに変更されていたら、意外にあっさり受け入れていたのではないかなと、今回改めて#5をプレイしたことで考えてしまいました。
因みに#6で何もかもがまるっと変わってしまった理由は、実は経営者同士が仲違いで決別してしまった為、過去シリーズの内容が一切使用できなくなったのが原因のようです。
≫EXIT
お疲れ様でした!
今回の記事はどうだったかの?何か感じた事があればどんなことでもコメントに残してくだされ。それと当ブログは以下のブログランキングに参加しておる。クリックして貰えるとわしの「やる気」がめちゃアップするぞい!
いつもバナークリックや拍手していただいて、誠にありがとうございます!
コメント
当時、ウィズ6ってマイトアンドマジックっぽい見た目だと感じてたんですけど様変わりした影響ってダンマスだったんですか、なるほどー。
あと、微妙に気になってることなんですけど、ウィズ5の98版ってBGMあったのでしょうか?
当時、88版を購入して持ってたんですけど挫折した自分はスッカリサッパリ忘れて、無音だったようなコマンドで切り替えられたようなって感じでして…。
>MA2さん
> ウィズ5の98版ってBGMあったのでしょうか?
私当時FMTOWNS版買って、その後PC98版買いなおしましたけど確か98版は音無かったと思います(Beep音以外)。うちの環境だけかもしれませんが。
初RPGがドラクエ1だった世代にとって、wizシリーズには変な憧れがあるんですよね。3Dダンジョンも女神転生シリーズがやっとという……。
方眼紙にマッピングとかの世代がやはり羨ましく感じますねえ。
ファミコン、スーファミ世代にはSFCwizですら敷居が高すぎでした。
>Kさん
私たちなんかはもう3Dダンジョン生まれ、3Dダンジョン育ち、方眼紙なんかはみんな友達って感じですからねーw
逆にフィールドタイプのダンジョンは迷う傾向にあります…orz