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『アグレス』そして「殺人倶楽部」へ進化する…

賢者の塔 48F
No.0162

発売年:1986年
開発元:リバーヒルソフト
ジャンル:コマンド選択式AVG
発売機種:PC-88、FM-7など
※指定の無い画像はすべてPC-88版です

≫ENTER

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「アグレス」とは

「アグレス」は、1986年に「殺人倶楽部」や「マンハッタン・レクイエム」でお馴染みの「リバーヒルソフト」より発売されたコマンド選択式のSFアドベンチャーゲームです。

タイトル画面に「ZODIAC2」と書かれているように、本作は1985年に同社より発売された「ゾーディアック」の続編となっており、プレイヤーは再び主人公「ボーイ」となり相棒である「アマロイド・マリー」と共に、父親である「Dr.デューイ」を探す旅に出発することになります。

前作までは「コマンド入力式」を採用していましたが、時代の流れという事でしょうか今作では「コマンド選択式」が採用され、さらにはAVGでありながらRPGのように主人公に「パラメーター」が存在するという、ちょっと変わったシステムとなっていました。

ちなみに本作までのリバーヒルソフトは、設定は色々でしたが主に冒険活劇もののAVGを多く作ってきていました。しかし本作の後に発売した「殺人倶楽部」より本格的な推理AVGに力を入れるようになり、以後そのジャンルの勇として名を馳せる事になります。

テンキーによるコマンド選択式

最初に言ったように本作は「コマンド選択式」を採用しており、画面上に表示されているコマンドに対応する0~9までの数字をテンキーから入力することでコマンドの選択ができます。

キーボードからの入力はデータセーブ・ロード時の”S”と”L”、あとはコマンドキャンセルの”ESC”、メッセージを進めるときのリターンキーくらいでした。

最初に何をするのかという「動詞」にあたるメインコマンドを選択すると、その後何に対してそれを行うのかという「名詞」にあたるサブコマンドが表示されます(「はいる・でる」などはサブコマンドが無い)。メインコマンドの種類は状況が変わっても変更はありませんが、サブコマンドについてはプレイヤーがそれ以前に行った行動によって内容は変化します。

コマンド選択式のAVGなので、片っ端からコマンドを順に実行していくいわゆる「コマンド総当り」をやっていけばクリアできるのかと思いきや、実はなかなかそう簡単にいかない仕掛けが本作には施されています。

それが主人公のパラメーターにある「PHYSICAL(体力)」なのです。

パラメーターが行動に影響を与えるAVG

行動に制限がかかるもの

本作にはAVGでありながら、まるでRPGのような主人公の「パラメーター」というものが存在します。とはいえそれほど数は多くなく、SKILL(技術)、EMOTION(感情)、PHYSICAL(体力)、OPERATION(操作性)の4つだけです。

これらのパラメータはゲーム中に主人公が行う行動によって、上昇したり減少したりし、その値がゲームの進行にも影響を与えていました。

まず先ほどのコマンド選択に関する事から説明してしまうと、プレイヤーが何かしらのコマンドを実行するたびにPHYSICAL(体力)はどんどん減少していき、この値が0になると強制的にゲームオーバーになってしまいます。

なので片っ端からコマンドを総当りで実行していくという戦法は、危険を伴うことになりかねないのです。

次にEMOTION(感情)についてですが、これが本作の「キモ」といってもいいような存在で、メインコマンド「はなしかける」のサブコマンドに「おどす」というものがあります。これは主人公に協力的ではない相手に対して尋問するかのように話しかけるコマンドで、これを何度か使用しないと肝心な情報をくれない相手もいるため非常に重要なコマンドです。

しかし使用するたびにEMOTION(感情)の値がどんどん下がっていき、これが低くなるとおどす行為が利かなくなっていくのでこれも注意が必要です。※同様のコマンドに「おだてる」というのもある

ちなみにEMOTION(感情)とPHYSICAL(体力)はあるタイミングで回復します。

行動により成長するもの

SKILL(技術)は簡単に言うと経験値のようなもので、効果的なコマンドを実行すると上昇するのですが「ある事」以外では殆ど上昇しないため通常ではあまり意味がありません。

その「ある事」というのは、本作を進めていくとラストあたりで突然3DダンジョンRPG風の移動を行って進めていくシーンになるのですが、そこで主人公は何匹かの「キメラ」と戦うことになります。

このキメラに勝つことができるとSKILL(技術)が大きく上昇します。そしてこのSKILL(技術)はある程度の値まで上昇していないとゲームクリアが不可能になるため、最低でも何匹かのキメラと戦う必要があるわけです。

ちなみにキメラはダンジョンの中の固定位置にのみ存在しているので、見つからなければ探して倒さないといけないことになる。

最後にOPERATION(操作性)ですが、これは主人公が使用する銃を強化するアイテムを取ることで2段階まで上昇します。

これはパラメーターというよりフラグといった方がいいようなもので、このフラグが立っていないと(つまり必要な強化アイテムを入手できていないと)先述した「キメラ」が倒せません。

従ってその場合”詰み”ということになります。

以上のように、本作ではこれら4つのパラメーターがゲームの進行・クリアに非常に重要な意味をもっていたのです。

ステージ間での取得漏れは「詰み」の元

さて先ほどから「ゲームクリアが不可能になる」とか「”詰み”になる」という話をしてきましたが、本作では選択を間違えていきなりゲームオーバーということは殆ど無いのですが、クリア不可能になって詰むといういわゆる「ハマリ」の罠は多く仕掛けられていました。

その一番大きな原因は本作のストーリーが1~3の3つのステージに分割されていることで、それぞれのステージはある目的を果たす(目的の場所に行く)と終了し次のステージに強制的に進むのですが、一度ステージが進んでしまうと前のステージには戻れないんです。つまり次のステージで必要になるアイテムを取り忘れていると、その段階で「詰み」になってしまうんです。

ちなみに前作の「ゾーディアック」でもストーリーは3つのステージに分かれていたのですが、大体そのステージで必要なものはそのステージで見つかって、次のステージには持ち越さなかったのでまだ良かったんです。

しかし今回はそのステージで見つけたアイテムを必ずしもそのステージで使うとは限らないというようになってしまったので、プレイヤーはハマっていることに気が付かずに話を進められなくなり立ち往生してしまう事になってしまいます。

そういうところが怖いゲームでした…。

後の作品への布石?

さて本作が発売された同年に、リバーヒルソフトは「殺人倶楽部」を発売するのですが、この2つの作品をプレイしてみると本作から「殺人倶楽部」に受け継がれたのではないかと思われる要素がいくつか感じられました。

カーソルではなく数字を使用してのコマンド選択もそうですが、例えばゲーム起動時に表示される本編とは明らかに絵のタッチが違うモノクロで実写的な謎の男のアップ画像。

これは殺人倶楽部やマンハッタンレクイエムでのグラフィックのタッチに似ていますし、またゲーム中の人物と会ったときにまず「挨拶をする」というコマンドを実行してからというのも受け継がれています。さらには「脅す」などのコマンドで情報を聞き出すというのも、犯人を追い詰めるときの「尋問」の感覚に近いですよね。

予想でしかありませんが、もしかしたらリバーヒルソフトの製作者の方々は本作を製作中に、後の「殺人倶楽部」でやりたいことをお試し的に実行してみたのでは?本作はプロトタイプ「殺人倶楽部」?などというのは私の考えすぎでしょうねw

関係ないけど本作のヒロイン(?)。使い捨てっぷりが半端ねえです。殆ど話にも主人公にも絡んで無いし、必要なかったんじゃなかろうか…?
(まあリバーヒルのゲームって、ヒロインの扱い悪いの多いしねw)

≫EXIT

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コメント

  1. K より:

    >>プレイヤーはハマっていることに気が付かずに話を進められなくなり立ち往生してしまう事に
     デバッグの見落としではなく、罠として仕掛けられると堪りませんねぇ。本当に恐ろしいですわ。SF系は理不尽なところを含めて作品を支える要素でしょうけど、こういうのは勘弁して欲しいですね。
     でもそういう要素が、いわゆる『本格』なんでしょうね。

  2. ソンゴスキー@れとろげ より:

    >Kさん
    代表的なのはやっぱりファルコムの「太陽の神殿」ですかね。あれは間違った手順でアイテムを使用したり動かしたりすると、嵌ってしまうところがあるんですが、それがプレイヤーには解らないんですよね。
    そして延々とさまようハメに…。
    昔のAVGはそうやって進行不可になってるのに延々とさまよわせることも、プレイ時間を稼ぐための手段として用いられてた部分がありましたが、やはり80年代後半あたりからはそういうのはユーザーに受け入れられなくなって減っていった気がします。

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