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『ミスティーブルー』独特の会話システムと、センスの高さは今でも通用する?

賢者の塔 52F
No.0168

発売年:1990年
開発元:エニックス
ジャンル:コマンド選択式AVG
発売機種:PC-88、PC-98
※画像は全て、PC-88版のものです

≫ENTER

いらっしゃいませ!

たまに古い映像作品に「古臭い」という感想(批評ではなく感想だね)を書いている人を見かけることがある。まあ実際に古いものなのだから「古臭い」という意見は別に間違ってはいない。

ただ勘違いをしないでほしいのは、そういった作品が「時代の最先端」であった時期というのが、事実として存在するということだ。

なんの分野にしろ作品というものには「その時代の流行」が反映されるものだ。そして流行というものは、時間の流れと共に移り変わる。ゲームの世界でもそれは同じことなのだが、比較的ファンタジーやSFという非現実世界を舞台にする作品が多いゲーム業界ではその流れは比較的遅く感じる。

しかしゲームの中でも、あるジャンルを扱っているものについて言えばその流れは非常に速い。それは「現代」を舞台にした作品だ。そういった作品において、現代であることをわかり易くプレイヤーに認識させるには、その時の「流行」を取り入れることが手っ取り早いのである。

その昔、まさに当時「流行(トレンド)」の象徴ともいえた「トレンディドラマ」を題材にしたかのようなアドベンチャーゲームが存在した。それが今回紹介する「ミスティーブルー」だ。

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「ミスティーブルー」とは

…今回前振り長っ!w まあ、いいか。

「ミスティーブルー」は、1990年に「ジーザス」や「アンジェラス」でお馴染みの「エニックス」から発売されたコマンド選択式アドベンチャーゲームで、日本がバブル絶頂期のイケイケだった1990年頃の日本を舞台に、同じく絶頂期だったバンドブーム、そして高視聴率作品が次々と登場したトレンディドラマのような、青年たちの恋愛と青春を描いた作品である。

本作のグラフィックを担当したのは「機動戦士ガンダムΖ(及びZZ)」などで作画監督、最近では「ベルセルク 黄金時代篇I」のキャラクターデザインと総作画監督を務めた「恩田尚之」氏(個人的にはOVA「鋼の鬼」のキャラクターデザインが印象深い)、さらに音楽を担当したのはもはや説明するまでも無いだろうが「イース」や「ソーサリアン」など数々のゲーム音楽を手がけた「古代祐三」氏と、非常に豪華なスタッフが参加していた事でも話題になった。

本作は最初に言ったように基本的にコマンド選択式のAVGなのであるが、他のAVGとはちょっと違う、独特なそのコマンド選択方式が特徴的であったといえる。

眩しかった青春を思い出す物語

と、その前に、本作のストーリーに付いて説明しておこう。

この物語の主人公である「水上和哉」は高校卒業後、音楽の勉強のためアメリカに渡っていた(高校時代の恋人と別れたショックから立ち直るためでもあった)のだが、高校時代の先輩で、現在は音楽プロデューサーをしている「松宮」からの連絡を受け4年ぶりに日本へ帰国していた。

和哉たちが高校時代憧れのバンドであった「オルフェ」のラストギグ会場で、和哉は松宮と再会するが口論となり和也は会場を後にする。その和哉の前に現れたのは、高校時代の恋人である「藤木麻衣子」であった。

2人は学生時代よくたむろしていたバー「クロコダイル」に向かい、高校時代の仲間「ミッキー高見沢」、「夏井エリ」、「森川裕太」も呼んで久しぶりに高校時代の仲間同士で昔話に花を咲かせる(ミッキーは不参加だったが)。

しかしその翌日、和哉はテレビのニュースで驚きの事実を知る。なんとあの夜、和哉と別れた後に松宮があの会場で何者かによって殺され、あろうことか自分がその重要参考人となっていたのだった。

ストーリーとしては、このような感じである。

AVG初?一対多での会話モード

「1対1」の会話モード

本作には普通のAVGのように、画面のどこかを見るとか調べるとかするシステムも存在するが、それはあまり重要ではなく、本作において大きなウェイトが置かれているのは「会話」のシステムであろう。

会話システムには、大きく分けて「1対1」と「1対多」2種類のモードがある。

まず「1対1」の会話システムだが、これは通常のAVGと同じように主人公(和哉)が目の前にいる人物に対してコマンドを選択しながら会話を進めていくのだが、このとき選択するコマンドというのが独特で、普通ならコマンドで「話す」>「○○の事」といったように選択をして会話をするが、本作では選択するコマンドが「台詞」そのものになっているのである。これが結構珍しかった。

また、この「1対1」の会話では、かならず会話をする相手の顔グラフィックの横に「青いゲージ」が表示されるようになっている。これは相手の和哉に対する「好感度」を現していて、プレイヤーが選択したコマンド(台詞)によってこのゲージが上下するようになっているのだ。

このゲージが高くなれば相手からより重要な情報が得られるようになるのだが、ゲージを上げるためには「場の空気を読む」ということが必要になってくる。

というのは、例えばある人物から聞き出したい情報があったとしても、なんの前触れもなしにいきなり直球で質問を投げかけたりすると相手の好感度はダダ下がりしてしまうのだ。まずは当たり障りの無い会話で、相手の好感度を上げてから本題を切り出すなどの配慮が必要になる。

また会話の途中で、その話題について相手が触れられたくないような反応をしたときも、その空気を読まずに話し続けると好感度は下がってしまうのだ。会話をする相手に合わせて、煽ててその気にさせたり、誠実に対応して信頼を得たり、まるでリアルな会話術が要求されるのである。

「1対多」の会話モード

次に「1対多」の会話モードだが、このシステムはAVGだけでなくゲーム業界おいても非常に特殊なシステムだったと私は思う。それまでのAVGなどでも、主人公が多人数と会話をするというシチュエーションは多くあったが、それはあくまで1対1の会話コマンドを複数人数相手に繰り返す事でしかなかった。

本作のこのモードでは主人公を含め4人で会話することになるのだが、まずプレイヤーは話をする「話題」と話をする「相手」を選ぶ、そう聞くと通常のAVGと大差無いように思うだろうが、大きな違いは会話をする相手を1~3人まで同時に選択できる事である。

例えば和哉の目の前に、麻衣子、エリ、裕太の3人がいる状態で、「現在のこと」を話題に選んだとして、話す相手を麻衣子だけにした場合、麻衣子とエリにした場合、麻衣子とエリと裕太にした場合で、同じ話題でも帰ってくるリアクションが全部違うのである。これは非常に珍しいシステムだと思った。

とはいえ、確かにシステムは特殊だがゲームとしてわざわざ複数人数を選ばせる意味はあるのか?という疑問もわいてくるのだが、それは本作をプレイすると「意味がある事」だと解るはずだ。

例えば1人相手だけにしゃべっていると2人でひそひそ話をしているのかと他の人物が「何を話てるの?」と聞いてきたり、やきもちを焼いてくるようなリアクションも見せるので非常に「多人数で会話をしている」というシチュエーションを実感できるのである。

マジ、トレンディ

最初に本作を「トレンディドラマ」を題材にしたかのような作品と説明したが、そういったドラマの中では夜景が見える場所で2人きりの恋愛の駆け引きを交えた会話や、男同士でお互いの感情をぶつけ合う会話、馴染みのバーでの仲間同士のくだらない会話というのが定番だろう。

本作ではこのトレンディドラマの定番シチュエーションというものを、これらの会話システムを使って非常によく表現できていたのではないかと、プレイしていて私は思わず感心してしまった。ああいうドラマでも、空気読まない身勝手な会話をするキャラは、やはりよくハブられていた記憶がある。

ちなみにこの作品に登場する女性キャラの主人公に対する好感度が高いと、「そういう関係」になることが可能らしいのだが、一応本作は「一般向け作品」であるため直接的なシーンはなく、そうなったことを想像させるような表現で終わることが多い。

バンドブーム華やかなりし時代

本作ではストーリーのメイン部分に、この世界での大人気の架空バンド「オルフェ」の存在が絡んでくる。

このカリスマ的バンドのボーカルやメンバー、スタッフたちに対して「信仰心」にも似た憧れの感情を抱く若者の姿、追っかけをしたり、仲間内でコピーバンドを作ってみたりする気持ちというのは、80年代後半から90年代前半に若者だった人たちには非常に共感がもてる話であろう。

皆さんの中にもきっと、当時あこがれていたバンドの服装を真似て逆三角形みたいなスーツを着たり、前髪をクルリとさせた髪型にした人はいると思う。今そんな頃にそんな格好をした自分の写真なんかを見たら、どこかの邪聖剣ばりに地の底深くに埋めてしまいたくなるかもしれないが。

それと同様に、本作の中にも当時は流行りあるいは普通だったような気もするが「チケットがSOLD OUT!」とか「トレンディなレストランに~」なんて言い回しがあり、さすがにそういうのは今読むとわかってても噴出しそうになってしまう。

自分も当時はこういうのではないにしろ、今では死語になっているような言葉を結構使っていたのに勝手なものだ。

とはいえ、個人的にはこの頃の派手じゃないほうの女性のファッションは今でも好きだったりする。

↓こういうのとか

しかし今の若い人には、こういうのは「ダサい」の一言で切り捨てられてしまうのだろうか?

最後に。

さて、かなり話が長くなってきてしまったので、このあたりで〆に入りたいと思う。

本作は、ストーリーの内容や会話システムのおかげで「トレンディドラマ」を体験できるよい作品となっており、グラフィックの質の高さ、時折使用されるアニメーションや、カメラワークもかなりのセンスを感じるものになっていた。

そしてさらに数は少ないものの、キメの場所で流れる古代氏の曲はやはり素晴らしく、いまだに本作のファンが多いのも頷けてしまう作品である。

当時若者だった人達にとっては、あの頃の活気のあったイケイケの日本を思い出し昔を懐かしめると思うので、是非ProjectEGGなりで復活させて欲しいと思うのだが、現代の若者にとってはきっとこの作品のあらゆるものが「古臭い」ものに見えて失笑されてしまうのではないかとも思ってしまう。

まあそれは仕方が無い、最初に言ったように実際「古い」のだから。ただこれも最初に言ったことだが、これが「時代の最新」だった時代が事実としてあって、我々はその証人なのである。

そしてその証人から言わせて貰えば、今この時代で若者達が好んで、憧れて、追いかけているものもあっという間に「過去のもの」になってしまう。そして次の若者達に「古臭い」といわれてしまうのだ。

これは年寄りの負け惜しみでもなんでもなく「事実」だ。

しかしだからといって別に私達は過去になってしまったものを悲観してはいない、流行を追って自分が何かを行った、何かに嵌った、何かを好んだというのは私達の「歴史」であり、私達は今その歴史を振り返り、懐かしみ、楽しむことが出来るのだから(ちょっと恥ずかしいこともあるが)。

それは歴史を持たないことよりも、とてもとても素晴らしい事なのである。
だから今楽しいことには、どんどん嵌ったらいい。歴史を作ったらいいのだ。

≫EXIT

お疲れ様でした!

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コメント

  1. 山田 より:

    過去の体験や記憶というのは一つの財産で、
    意外な時、所で自分を助けてくれることが有ったりします。
    だからこそ、今を大事に、色々なことを楽しんだ方が良いですよね。
    いつだって「今」は、全て過去になってしまうのですから。
    とは言いつつも、夜寝る前に、ふと自分の黒歴史を思い出して、
    一人身悶えしたりもするわけですが・・・

  2. ソンゴスキー@れとろげ より:

    >山田さん
    そうですね、例えばこういった「レトロゲーム」を通じて同じ体験をしてきた人と知り合ったり、語り合ったり出来るのも財産が今に活きているんですよね。
    もちろん人の迷惑になったり、犯罪になるような「楽しいこと」はNGですが、そうでない事、自分でちゃんと責任取る事についてはどんどん楽しんでやったらいいんですよね。
    黒歴史に身悶えることができるのも、歴史を持つ人だけの特権ですw

  3. K より:

     このミスティーブルーには、ゲームに感心の薄い若者層を獲得しようとした野心作なのではないかと、そういう感想を抱かせますね。
     会話そのものを中心にしてゲームデザインをすると、言葉の詰め将棋になりそうですねぇ。ソーシャルゲーム出そうな感じが……。
    >>あの頃の活気のあったイケイケの日本を思い出し昔を懐かしめると思うので
    当時小学生だった自分は「あのおネーチャンたちどうして肩出てんの?」と肩パッドファッションに疑問でした。

  4. ソンゴスキー@れとろげ より:

    >Kさん
    確かに…この世界観は、当時パソゲーに興じてた層の感覚からはちょっと離れてた気がしますね。鋭い。
    ソーシャルゲーかあ、馬鹿にするわけじゃないですけど、今の人たちはこういう会話を楽しむゲームってめんどくさがりそうな気もしますね…。
    あのころは学生服とかも、やたら肩が張ったの着てる人とかもいたなあw

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