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『デ・ジャ』

隠者の迷宮 B39

アダルトゲームなのにガチなシナリオに驚く、「蛭田昌人」氏の代表的な作品。

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「デ・ジャ」とは

ゲーム基本情報

タイトルデ・ジャ
ジャンルコマンド選択式アダルトアドベンチャーゲーム
発売年1990年
販売/開発元エルフ
発売機種PC-8801、PC-9801、X68000、PCエンジンなど
前作なし
後作デ・ジャ2
※使用している画像は指定が無い限りPC-88版のものです

ゲームの概要

「デ・ジャ」は1990年に「エルフ」より発売されたコマンド選択式のアダルトアドベンチャーゲームで、1992年には続編である「デ・ジャ2」が発売され、2002年にはこのに作品がセットになった「デ・ジャ マルチパック」も発売されている。

シナリオは、後に「同級生」「河原崎家の人々」などを手掛ける「蛭田昌人」氏が担当しており、当時としては異質な、アダルトAVGでありながらボリュームのあるストーリーとエロ抜きでも楽しめるシナリオ展開が売りで、後に一般向けとしてPCエンジンにも移植されている。

主な登場人物

▼主人公▼


本作の主人公(名前はユーザーの任意だがデフォルトは「はつしば りゅうすけ」)、快活で奔放な考古学者。そのキャラクター性からメディアへの露出も多く、世間的な知名度も高い。いいかげんな感じにも取られがちだが、考古学に対しての熱意はガチである。エッチについても快活で奔放なのだが、恋愛についてはいささか鈍い。日向との確執の為、現在学会を追放されている。

▼金髪の美女▼


謎の「杖」を所持している者の夢の中に現れて手招きをする金髪の美女。太平洋電機の斉藤専務からこの謎の杖について、主人公が調査を依頼された所から物語が始まる。

▼本多美々子▼


本作のヒロインで通称「ガチャ子」。日本考古学学会に所属する考古学者で、主人公の事を憎からず思っており、主人公の杖の調査に色々と手を貸してくれる。しかしその結果、事件に巻き込まれて散々な目に遭う。同じ学会の資料係である某バンドのボーカルにそっくりな「ケンヂ」に惚れられている。

▼日向雷造▼


日本考古学学会の会長。極度に肥大化した権力欲と自尊心を持つ老人で、学会を完全に私物化しており、学会の研究旅行を自分の腰痛治療の為に熱海するほど。それに反対した主人公を恨み学会から追放している。社会的地位も権力も手に入れたが、肝心な考古学者としての実績や地位は持っていない。あと美的センスが壊滅的に悪い。

あらすじ

考古学者である主人公は、遂にピラミッドで莫大な秘宝を手に入れた。するとそこへ美女が現れて主人公に財宝を返すように言う。しかし大発見をしてテンションが上がった主人公は、濡れ手に粟と言わんばかりにその美女に襲いかかる。だがその美女は宝を守る女神であり、怒った女神は化け物の姿になると、主人公を奈落の底に突き落とすのであった。

という夢を見た主人公の研究室を、彼のファンと名乗る太平洋電機の専務取締役「斎藤竜三」が訪れる。彼はある骨董屋で古びた「杖」を買ったのだが、それ以降眠りにつくと見たこともない金髪の美女が夢の中に現れて自分に手招きするのだと語り、この杖がいつの時代の物でどんな由来なのかを調べて欲しいと主人公に依頼してきたのである。

不思議な杖の存在に考古学者魂に火がつき、さらに斉藤専務からは依頼料は言い値で良いとまで言われたもので、やる気を出して早速調査に出かける主人公だったが、そんな主人公の耳に訃報が届く。なんと斉藤専務が、仕事帰りに車に轢かれて亡くなったのだと言う。果たして彼の死はただの事故か、それとも杖の呪いか、はたまた何者かの陰謀なのか…。

そして主人公の手に残った、この杖はいったい何なのだろうか…?

基本的なゲームの特徴

本作はゲーム部分としては一般的なアドベンチャーゲームとほぼ同じであり、画面下に表示される「見る・調べる」「考える」「話す」「場所移動」などの基本的なコマンドから実行したい「行動」を選択。その後「何について」あるいは「どこへ」といったコマンドが同じく表示されるので、そこから実行する「対象」を選択することでコマンドが実行される仕様となっていた。

ただこの時代によくあった、その場面で使うかどうかも解らないようなコマンドが一覧で全部表示されるというタイプではなく、「見る・調べる」「話す」「場所移動」の基本的なコマンドに加えて、その場面やフラグの状態により選択できるコマンドが増えたり減ったりする仕様になっていたので、他のAVGのように無駄なコマンド実行での時間の浪費をする事が無く、ストレスを感じる事が少なかった作品だと思う。

この手のAVGはフラグの取りこぼしが起きないように結局コマンド総当りになりがちなんじゃが、それでもこういう細かい配慮があると非常に助かるんじゃよな…

いくつか選択のミスによりゲーム進行不可になる場面もあるが、ゲームセーブの機会は頻繁にあり、セーブデータも2箇所と少なくはあるが両方使えば正副でとれるようになっているので、うまく利用すれば進行不可になっても最初からやり直しになることもまず無かったで作品あろう。

ちなみに当時横行していたゲームコピーへの対策として、ゲームを購入すると付録に色が羅列されたカードがついてきて、ゲーム中盤あたりでこのカードを見て正しい選択を行わないと秘密の部屋へ入る事が出来なくなっている仕組み、いわゆるマニュアルプロテクトが用意されていた。選択はヤマ勘で当てられなくもないが、正しい選択を3回連続ミス無しで行う必要があり、さらにそれを2回やらなければいけないのでかなり厳しいものになっている。

とここまでが本作の主な特徴になる。ではここからは、本作について個人的に魅力と感じた部分について3つほど語ってみたいと思う。

メリハリの利いたストーリー展開

まず最初の魅力としては、本作のストーリーがこれまでのアダルトゲームではなかなか見られなかったレベルのしっかりしたもので、かつその展開にもメリハリが利いていたという点である。

骨董屋で売られていま謎の杖の存在と、それを持つものの夢に現れる謎の美女、そして主人公に杖を預けた斉藤専務の事故死。謎の老婆が骨董屋に杖と一緒に売った謎の玉と、その玉を買い取った斉藤専務ではない別の人物。美術館で見つかった夢の中の美女とそっくりの数百年前の絵画と、それを描いた画家の失踪。そして仇敵日向雷蔵との杖と玉の争奪戦。

本作のストーリーにおいて、これらの謎は割とガチで組み込まれており、舞台こそほぼ日本にはなるがまるで映画の「インディジョーンズ」を彷彿とさせる面白い展開になっている。しかしアダルトゲームのストーリーとしてはガチすぎていささか硬い印象を受けてしまうのも事実だ。もちろん悪い意味でなく、それだけしっかりしてると言う意味でだ。

この内容でもうちょっとボリュームを増やせば、エロが無くても冒険物AVGとして十分成り立つレベルじゃとおもうわい

一方で本作の「主人公(名前は任意で設定可能、デフォルトは「はつしば りゅうすけ」)のキャラクター性というのはかなり軽い。快活で奔放、誰とでも仲良くなれる魅力のようなものを持っており、特に女性に対してはエッチな意味でも快活で奔放な男性である。なので主人公の台詞のノリもストーリーは逆で基本的に軽い

しかしこの見ようによっては軽薄とも感じられる主人公の軽さのおかげで、硬めのストーリーとの間に非常に良いメリハリが生まれ、硬めのストーリーでも飽きずにすんなり飲み込めてしまうのである。しかも主人公自身もただ軽い男というわけではなく、こと考古学や自分の大切な人の事には真剣になるし、さらに強い正義感も持ち主でもあるので主人公のキャラクター的にもメリハリがしっかり利いていた。

つまり、本作のストーリーは当時のアダルトゲームしては硬めに感じられるものではあったが、それを牽引する主人公のキャラクター性によって絶妙にバランスがとられていた。そしてそこが本作の魅力に感じられたのである。

最悪で最良の悪役「日向雷蔵」

とはいえ軽薄にもとれてしまう主人公のこのキャラクターやノリに、拒否反応を示すプレイヤーも当然いたと思う(筆者自身もそういう印象はあった)。そういうプレイヤーにとって、本作の主人公やストーリーには感情移入できないのではないかとも思ったのだが、実はそんなことも無く恐らく殆どのプレイヤーが感情移入出来てしまっただろう。その理由は「日向雷蔵」という敵の存在にある。

日向雷蔵は日本考古学学会の会長なのだが、恐ろしいまでに肥大化した権力欲と自尊心を持った人間で、学会を完全に私物化しており、学会の研究旅行の行き先を自分の腰痛治療のため熱海にし、それを咎めた主人公に恨みを抱き学会の建物へ入ることを禁じたり、会合に参加させないよう学者たちに通達を出すなど主人公を事実上の学会追放状態にした。

ちなみにコイツに関して唯一笑える部分は、奥さんの見た目がまんまダッ○ワイフな事くらいじゃったなw

さらに自分の権力のため、自分が欲しいと思ったものを手に入れるためなら如何なる手段を取ることも辞さず、それによりどんな被害があろうとも「この私のためなのだから」と自己肯定して罪悪感など屁とも感じない、正直思考がイキすぎて単なる悪者というよりもはや異常者である。そして主人公はこんな奴を相手に、謎の杖と玉の攻防戦を繰り広げなければならないのだ。

そうなると例え主人公のノリに拒否反応を示すようなプレイヤーでも、必然的に気持ちが主人公の側に寄っていき、いつの間にかしっかり感情移入できるようになっているのである。物語への感情移入において「仇役のキャラクター性」というのが如何に重要なものなのかということが、本作を通じてよくわかるだろう。

最悪だが最良の悪役を用意して、プレイヤーを否が応でも感情移入させてしまう。この技術に私は大きな魅力を感じた。

ガチャ子(本多美々子)との結末

最後は魅力というか「そういうのアリなの?」と思わせられた話にはなるが、本作におけるヒロイン「ガチャ子(本多美々子)」と主人公の結末についてである。ちなみにネタバレがあるので注意。

皆さんは「アダルトゲームのヒロイン」という存在についてどういうイメージを持っているだろうか?やはりヒロインなのだがら、作中でもっとも魅力的で主人公に好意を持ってくれていて、作中で主人公との間に様々な事があってその結果、二人は愛のあるセッ○スをして終了。という感じではないだろうか。私もそうである。そして「天使たちの午後」でも「エリカ」でもそうだった(例が古い)。

本作のヒロイン「本多美々子」は、主人公と同じく日本考古学学界に所属する考古学者で、美人で頭もよく、考古学者としての能力は主人公も認めるほどのものである。本人は主人公のことを憎からず思っているようで、主人公の杖の調査について学会での自分の立場が悪くなるかもしれないという状況でも主人公を助けて色々世話を焼いてくれる。しかし主人公のほうは彼女を「ガチャ子」と呼び、仲の良い考古学者の同僚としか思っていない。

しかし物語が進むにつれて、主人公もガチャ子の献身的な好意に徐々に自分の本当の気持ちに気がついていき、最後には自分にとって最も重要な考古学よりもガチャ子を選ぶまでになっていく。そしてクライマックス、お互いの愛を確かめ合い二人は体を重ね…ないのである。正確に言えば愛を確かめ合って体を重ねるのだが、結局ある事情で「未遂」に終わるのである。

つまりはっきり言ってしまえば、本作にはヒロインとのエッチはないのだ。ヒロインにあるのはちょっとtkbが見えてしまう程度のサービスシーンまででエッチシーンが無い。実は本作はあの「沙織事件」より前に製作されているアダルトゲームなので、エッチシーンの規制がゆるゆるでなんとワ○メがはっきりと描かれてしまっている。そんなしっかりくっきり見えてしまう作品で、最後の最後までお預けを食らい挙句の果てにヒロインとのエッチなしでエンディングを迎えてしまう。

んんんんー、許るさーん!! 私の楽しみを邪魔しおって!!

そんな事が許されていいのだろうか?いやよくない(反語)。実際本作の結末に納得いかないユーザーからエルフには苦情があったとかなかったとか。そういう部分でもこれまでになかなか無いアダルトゲームだと感じた。

最後にまとめなど…

ということで最後のまとめになるが、1980年代のアダルトゲームについては「無理矢理ウエハースを食わされるシステムのビックリ○ンチョコ」と言ってもいいくらいの状態であったように思う。

ビックリ○ンチョコの購入者が欲しいのはシールなので、正直シールだけ有ればウエハースはいらない。じゃあシールだけ売ればいいのかと言うと、ビックリ○ンチョコの販売元は菓子メーカーなのでそうも行かない。なので購入者は嫌々でもウエハースを食べなければならない。

それはアダルトゲームにおいても同様で、ユーザーが見たいのはエッチな画像ではあるが、ゲームメーカーなのだからゲームを入れないわけには行かない。

ゲームを入れなければただのCG集だ。CG集がダメだという訳ではないが、それだけになってしまうのはゲームメーカーとしては成り立たないだろう。ただビックリ○ンチョコとちょっと違うのは、アダルトゲームのユーザーは確かにエッチな絵は見たいが、同時にゲームをしたいという欲求も結構な割合であるのだ(じゃなければエッチな漫画でも良い訳だし)。

CG集と言ったらフェアリーテイルの「リップスティック」なんかがあったのう…

そうなるとエッチな絵のクオリティとゲームとしてのクオリティを両立させるのがベストなのだが、そうなっていなかったのがこの頃のアダルトゲームだったように思う。

ゲームもエッチな絵も見たいからアダルトゲームは買うが、その「ゲーム」のほうが物足りないつまらない。なので結局は嫌々ウエハースを食べながらシールを見る結果になってしまっていた。そしてそういう状況を変えようとしていたのが本作、そして「ドラゴンナイト」や「同級生」を製作した「エルフ」という会社だったのではないだろうか。

そう感じさせるほどに本作には、ここまで説明してきたようなしっかりとしたメリハリのあるストーリー、そして否が応でも主人公に感情移入させられる悪役の存在、そして決して「安くない」ヒロインなどなど、これまでのアダルトゲームにはなかなか見られないものが詰め込まれていたのだ。

ただまだそういう仕組みが熟成していなかったのか、本作全体におけるエッチシーンの配分が間違っていた感がある。

なにぜ前半~後半にかけてちょっとエッチなシーンはあるものの、「行為」に至るようなシーンは殆ど無く(しかも結局未遂)、最後の最後にドバーッと怒涛のように「行為」を行う場面がやってくるのだ。しかも物語がクライマックスなのでプレイヤーとしては物語の結末が気になりすぎて、アダルトゲームなのにせっかくの「行為」シーンをさっさと送ってしまいたくなるという本末転倒感だったのだ。

まあゲームクリア後に全部のエッチシーンをみられる機能が開放されるんで、それでも問題ないんじゃがな

とはいえ物語として面白いという評価は変わらないので、機会があったらぜひ一度プレイして欲しい名作アダルトアドベンチャーゲームである。

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コメント

  1. 名無しの冒険者 より:

    >考古学者とアウトロー
    インディなジョーンズか、平賀太一か、はたまた冴羽遼か…。
    冒険系主人公となりますと、世界中を飛び回るというところから、
    考古学者という職業だとつくりやすいのかもです。
    AVGの主人公の職業を並べてみると意外と面白い傾向が見えるかもしれません。
    でも主人公職業のトップは「学生」かな?

  2. ソンゴスキー より:

    >>1
    考古学者でアウトローという人物なら、「考古学の天才」と「墓荒らし」両方の異名をもつトゥームレイダーの「ララ・クロフト」なんかもいますね。まあ考古学者なら冒険に向かう導入にも無理が無いですよね。

  3. naz より:

    これ好きでしたねー、蛭田さんのシナリオ作品はほんとにどれも面白かったですが、
    自分は特に初期~同級生ぐらいまでの欲望に忠実な俺様主人公のやつが好きでした。
    ご本人のコメント?で本作(2だったかも)を書き上げたあと、あまりに分量多すぎてしばらく失語症のようになったと言っておられましたが、確かにあれほどの文章量が入ってるAVGって18禁以外でもなかったんじゃないかと思ってます。しかもその内容がどれも面白い。
    またいつかお時間があれば2の方も取り上げて頂ければ嬉しいです。

  4. ソンゴスキー より:

    >>3
    >欲望に忠実な俺様主人公
    一時期そういう主人公って流行りましたよね。欲望に忠実に行動するのに、嫌われるどころか何故か女性から好かれるという。でもちゃんと主人公に良いところがあって、そこが好かれる理由だったりするので嫌味が無い。
    >18禁以外でもなかった
    90年代は、作家が自由に表現できる一番の方法がアダルトゲームだったという面はあるかもしれないですね。あの頃としては一番プレイヤーにテキストを読ませやすいゲームジャンルだった感じ。

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