勇者の塔 35F
No.0105
発売年 | 1988年(1987年) |
販売/開発 | アスキー(Sir-Tech) |
ジャンル | ファンタジーRPG |
発売機種 | PC-88、PC98、PCエンジンなど |
≫ENTER
本記事を読み進める前に…
本記事を読み進める前に、以下の点についてご了承願います。
- 当ブログで掲載している画像の、著作権または肖像権等は各権利所有者に帰属致します。もし掲載に問題等御座いましたらご連絡下さい。迅速に対応を取らせて頂きます。
- 筆者は本作品において、100%の知識と十分なプレイ経験を持っているとは限りません。誤りがある部分については、コメントにて優しくご指摘よろしくお願いします。
- 記事に書かれている内容についてはあくまで投稿時の状況や筆者の認識であり、現在の状況や筆者の認識と必ずしも同じではない場合があります。ご了承ください。
マンネリ化はシリーズものの宿命
さてゲームに限らずどんな作品でも、シリーズが長く続けば目新しさがなくなってきますよね。”シリーズが安定した”と言えば聞こえはいいですが、見方によっては”マンネリ化した”とも思われがちです。
そういった場合の手段の一つとして”規制の概念を一度ぶち壊した新しいものを作る”というのがありますが、これは大きな冒険であり賭けです。
成功すればシリーズの延命になりますが、失敗すればシリーズに止めを指す結果になるかもしれません。
最近では今までオフラインゲームとして馴染まれてきた国民的RPG「ドラゴンクエスト」がオンラインゲーム化し、プレイヤーやファンの間に大規模な議論を醸し出しましたね。
ドラゴンクエストのオンラインゲームが成功となるか失敗となるか私にはわかりませんが、ゲームの歴史を遡れば同じように大きく路線を変更してファンを困惑させた世界的に有名な作品がみつかります。
それが今回紹介する「Wizardry #4 ワードナの逆襲」です。
ワードナは君だ!
「ウィザードリィ」と言えば「ローグ」「ウルティマ」と並ぶコンピューターRPG最古参と呼ばれるゲームです。
深く複雑なダンジョンを巡り謎を解き、キャラクターを成長させ強敵を倒して宝物を手に入れるというスタイルは、後のあらゆるRPGに少なからず、いや多くの影響を与えたでしょう。
さらにそれだけでなく「ウィザードリィ」シリーズは今でも新作が作られるほどの知名度と熱心なファンを持っています。
そのウィザードリィの最初の作品「ウィザードリィ #1 狂王の試練場」では、プレイヤーたちは「トレボー」という王の命令により町外れの迷宮の最新部に潜む「魔術師ワードナ」を倒し”お守り”を奪い返してくるのが目的でした。
そして迷宮最深部の最奥にある部屋で無数のヴァンパイア、そして”ヴァンパイアロード”を従えて登場したワードナは、強力な魔法でプレイヤーたちを恐怖に陥れました。
前置きが長くなりましたがこの「Wizardry #4 ワードナの逆襲」は、なんとプレイヤー自身がかつて自分たちを苦しめた強力な魔術師”ワードナ”になって、恐ろしい魔物達を従え、奪われた”お守り”を再び奪い返すべく迷宮を登っていくというゲームなんです。
この内容だけ聞けば、なんてワクワクする内容のゲームなんだろう!と思うでしょう?でも現実はちょっと違っていたのです…。
寝起きの悪いワードナ
ゲームがスタートすると非常に馴染み深い画面が表示され、キャラクターのところに”WERDNA”と表記されていることで、おお自分がワードナーになったんだなということが実感できます。
が!
HPを見てみるとたったの1、ステータスを見てみるとオール8、さらになんと魔法の使用回数がすべて0のうえ、全ての魔術師魔法も忘れてしまっています。
なにこれ?誰これ?作ったばかりのLV1のMAGEより弱いじゃん!こんなんワードナーじゃねえよ、単なる100歳のおじいちゃんだよ。こんなんじゃ速攻殺されちゃうじゃん!と誰もが驚くことでしょう。
しかし実はこの状態のワードナーは復活したばかりでいわゆる”寝起き”状態、すぐ隣にある魔法陣に入ると全ての魔術師呪文を思いだし、HPは10になり、能力値もオール9にかわります。
しかし残念ながら魔法の使用回数は、LV1が9に増えるだけなので他のレベルの魔法は使用できません。これは経験値を稼いでレベルを上げろってことなのでしょうか?
いいえ、なんと本作には経験値という概念が存在せず。ワードナーは今後フロアを1つ上り、そこにある魔法陣に入るたびにレベルとステータスが1上がり、次のレベルの魔法使用回数が9になるという仕様なんです。
つまりどれだけ戦っても、次のフロアに登らない限り永遠に弱いまんまなんですね。
寝起き悪いのな、ワードナー!w
モンスターをお供に連れて
まあしかし、例えワードナーが弱かろうとも連れて行くモンスターたちが強力ならば探索も安全なはず。
この魔法陣ではワードナーのレベルアップだけでなく、モンスターの召喚も可能なので早速呼び出してみよう!さーて”マイルフィック”がいいかな?”フラック”がいいかな?やっぱり”グレーターデーモン”かなーー??ワクワク。
…クリーピングコイン。
…オーク。
…LV1メイジ。
…バブリースライム。
… (゚Д゚;)
雑魚ばっかりじゃねえか!!
おいおいどーなってんだよ、こんなゴミカスみたいな雑魚モンスターじゃ冒険者のティルトウェイト1発で消し炭だよ。もっと強いの!もっと強いモンスターを召喚させろ!それが楽しみなんじゃねえか!って誰もが思うでしょうね。
これについても上のフロアの魔法陣に行く事に、今までより強いモンスターが召喚できるようになっています。
それまでは例え雑魚でも我慢して連れて行くしかありません。それに雑魚雑魚言いますが、現状のワードナーよりはみんな強いですからねw
立場が入れ替わった戦闘
敵が味方で味方が敵で
魔法陣を出て迷宮を歩き始めると敵に遭遇します。この作品でいう”敵”とは迷宮に来た冒険者たち、すなわち過去の我々です。
戦闘画面が表示されると思わず「お?」と声を上げてしまうかもしれません。かつて多くのモンスターたちが表示されてきた場所に表示されたのは、戦士や僧侶、侍らしき姿の人間たちの姿。
そしてかつてプレイヤーたちが操ったキャラクターが表示されていたエリアには今遭遇した敵の名前、そしてかつてプレイヤーたちが戦ったモンスターの名前が表示されていたエリアには現在のプレイヤー(ワードナー)たちの名前が出ているんです。
ホントに立場が入れ替わってるんだなという実感を抱きつつ戦闘開始。
好き勝手に暴れる下僕ども
さーて、下僕どもにはどんな命令をしようかなー?…あれ?自分の行動しか設定できないよ?どーなってんの?!今度はそう思う事でしょう。
はい、本作では味方であるモンスターたちに対して、一切命令ができません。モンスターたちはAIにより勝手に好きなように思うがままに行動します。
連携も統率も仲間意識もありません。それどころか例えプリーストを召喚している状況でワードナーのHPが危なくなったとしても、回復もせずに夢中で敵にBADIOS(僧侶系攻撃魔法)を撃ち込んでいます。
もう主従関係すらありません。ワードナーは魔術師なので僧侶系魔法が使えませんから、自分のHPが危ない時は自分で回復アイテムを使って回復するくらいしかできません。
家族として一緒に同じ家には住んでいるけど、家族から無視されてるおじいちゃん状態です。切ないです。
しかし魔物も経験値で強くなることもないし、死んでもまた魔法陣に行けば何度でも呼び出せるので、愛着なぞない使い捨ての存在として考えればちょっと優位に立ってる感じがすると思います。つかそう考えないと辛いですw
天下の大魔術師ワードナー様も、せめてマハリトくらい使えないことには役たたずですからねえ…。
これはパズルアドベンチャーなのか?
謎解きが多くて難易度も高い
ここまで話した内容で本作が”大魔術師ワードナーが強力なモンスターたちを従えて復讐を果たす”というイメージとは随分違う感じがするというのはわかっていただけたでしょうか?
本作は日本では1988年にPC版が発売されてから、1994年にPCエンジン版が発売されるまで6年間もの間家庭用ゲーム機には移植されませんでした。
ファミコン版の#1~#3までがPC版発売後2年ほどで発売されていることを考えれば異常な遅さです(しかも結局ファミコン版では#4は発売されていない)。
その理由は今まで述べてきた事が原因…というだけでなく、それ以外にも大きな原因があったと思います。それはゲーム自体の難易度です。
まずこのゲームは出口のない小さな部屋から始まります。壁を叩いてもうろつき回ってもどこにもいけません。
#2でのある仕掛けを覚えていれば”MALOR”を使って外に出る?なんて方法が思いつきますが、どっこい最初の時点ではLV1の魔法しか使えないので”MALOR”は使用できません。
じゃあいったいどうすればいいのか?
正解は魔法陣でプリーストを召喚して、戦闘中に”MILWA”を暴発させる、ですw
”MILWA”は僧侶系のLV1魔法で迷宮を少し明るくし、かつ”隠し扉”も見えるようになる魔法なのですが、まさかそれを戦闘中に命令のできないプリーストに唱えさせるなんて思いつきますか?
しょっぱなからこんな感じで、その後もヒントが少ない謎や仕掛け、あるいはクイズ(?)が多く、さらには前にも書いてますがワードナー自身を守る術が少なすぎて、すぐ冒険者に殺されてゲームオーバーになったりします。
あまつさえ謎解き要素も多いし迷宮も複雑なのに同じフロアに長くいると、
トレボーの亡霊に掴まってゲームオーバーになる
なんて家庭用に移植するにはちょっと無茶すぎる仕様、キツすぎる難易度でした。
取り敢えず路線が戻って良かった
本作は一応ジャンルとしてはRPGなのですが、成長要素もなく謎解き要素が多いため”パズルアドベンチャーゲーム”という印象を強く受けます。
画面こそ馴染みのあるものですが、内容が今までのウィザードリィと大きく違うことから、ファンの間に「なんでこんなのにしたの?」という大きな疑問を抱かせた作品だったと思います。
その疑問が通じたのかはわかりませんが、2年後に発売された「Wizardry#5 災渦の中心」が今まで通り+αのウィザードリィであったため大きく胸を撫で下ろしたファンは、きっと私だけじゃないはずです。
とはいえさらに翌年にもう1回疑問を抱くことになるんですけどねw
拒否感をぶっ飛ばすだけの本気を見せてほしい
「Wizardry #4 ワードナの逆襲」というゲームは、長いウィザードリィシリーズの歴史の中でもかなりの”異端作”だと思います。(個人的には#6~#7もかなり異端だが、RPGという垣根は超えていなかったのでまだ良かった)
本作が発売された当時、私は友人宅でこのゲームをプレイしましたが楽しさが分からずにすぐ断念しました。いや、というより過去の作品があまりに好きすぎたために、あまりの変貌っぷりが受け入れられず拒否反応を起こしただけです。
ちゃんとやり方を理解してプレイすれば少なくとも「駄作」ではないとわかるんですが、どうしても「こんなのWizじゃない!」という気持ちが強くなって素直に受け入れられないんですよね。
今まで”クォータービュー”だった「イース」が3作目で”サイドビュー”になったとき、ただその違和感だけでしばらく受け入れられなかったのと同じです。
作品のマンネリ化を防ぐためにときには大きな冒険というのも必要です。しかし作品のファンにとってその変化はストレートに”拒否感”に繋がります。これはどうしようもないことです。
なので作り手側は大きな冒険をするのであれば、その時にファンに発生する違和感を消し去るだけのクオリティできて欲しい。やっつけや間に合せなどで無く、そのシリーズの冠をもつという事の”覚悟”を持ってきて欲しい。
そうすれば、きっと今まで追いかけてきたファンならわかってくれると、私は思います。
ウィザードリィ3・4 【PCエンジン】 (1994/03/04) ナグザット
|
≫EXIT
お疲れ様でした!
今回の記事はどうだったかの?何か感じた事があればどんなことでもコメントに残してくだされ。それと当ブログは以下のブログランキングに参加しておる。クリックして貰えるとわしの「やる気」がめちゃアップするぞい!
いつもバナークリックや拍手していただいて、誠にありがとうございます!
コメント
シナリオがULTIMA4と同じ人なんだよな
あれもPRGっぽくない
こんなに難儀したRPGはありません。WIZARDRYの名がつく以上絶対あきらめるわけにはいかん、と1年近くかかってなんとかエンディングにたどり着き、確かWIZARDRY MASTER ADVENTURER の認定書をもらったのですが、それはいくつかある結末のうちの一つにすぎなかったんですね。でもノーヒントで一応は解いたことは誇っていいかな。ずっと後に攻略本を読む機会があったけど、最高のGRANDMASTER ADVENTURERをもらえるエンディングにたどり着くのは正直無理!と思った記憶があります。
でも、今30年ぶりに思い返してみると、難解なだけではなく本当はすごく深く魅力的なゲームだったことに気づくわけですよ。むちゃくちゃな謎を考えに考え抜いて、無限に感じるぐらい試行錯誤を繰り返しやっと進めた時の爽快感(と脱力感)。いたるところにちりばめられた思わずクスッと来るユーモアの数々。山ほど手に入る使い道のさっぱりわからない横文字アイテム。そしてやっぱりあっけなく唐突に訪れる死。なかなかやるね、でもこんなことまでは知りもしないし考えもつかなかっただろ?と試されている感が半端なかった。初めは「第1作のラスボスである悪の大魔法使いが蘇り、魔物を引き連れて迷宮を上り、最後は城に乗り込んで魔除けを取り返し復讐を果たす」というストーリーだと思っていたのに、まさかの展開、大どんでん返し。いや、まったくもって凄い。凄すぎるシナリオでした。
>>2
まじでこの作品をノーヒントでクリアしたんですか…。
それは本当に恐れ入ります。
#4はあまりに過去作と違いすぎて、つい否定的な目で見てしまいますが。作っている側もわざわざ違う形にしたことにはそれなりの意図があったはずですが、私はそこを感じ取れなかった。私はこの作品との対話が足りなかったかもしれません。
自分はPCエンジンからでしたがPCエンジン版はモンスターにはLVUPの概念があった気が…ただ、全く仲間を呼ばず、増殖しなかった記憶があります。
ソフトーク・オールスターズ-1は軍隊に匹敵すると言われるだけあって苦戦しました。ここに極秘任務でパーティを離れていたと言われるホークウィンドが居たらと思うとゾッとします。
そのホークウィンドは単体での登場でしたがデーモンロード、マイルフィック、フラックとトップクラスのモンスターを従えていましたがとても勝てると思えず、ホークウィンドのLVが10であったのに目を付けてマイルフィックのエナジードレインを数回繰り返してロストさせて倒したのを覚えています
…版権の事情でリメイク等は出来ないそうですが#1〜4は可能になったら是非して頂きたいですね
>>4
私もⅢとⅣが一緒になったPCエンジン版持ってるんですけど、実はⅢしか遊んでないんですよね…Ⅳは難しすぎるのしってたんでw
でもPCエンジン版はそういう違いがあるんですね、知らなかった…(説明書すら読んでない奴)。リメイク版本当にいつか出して欲しいものです。