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『黄金の羅針盤 翔洋丸桑港航路殺人事件』「1920シリーズ 藤堂龍之介探偵日記」の第二弾。

賢者の塔 69F/No.0232

桑港から横浜へと向かう客船「翔洋丸」で樽に詰め込まれた遺体が発見された。たまたま乗り合わせていた探偵「藤堂龍之介」は調査に乗り出す。

≫ENTER

いらっしゃいませ!

ゲームの内容とはあまり関係ないんじゃが、今回は記事を8割くらい終わらせてから納得いかなくて書き直すってのを2回くらいやって、やっとこの形になったんじゃよw
やっぱりレビューを書くのって難しいのう…。
というわけで入るが良い、賢者の塔 69Fじゃ!

本記事を読み進める前に…

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「黄金の羅針盤 翔洋丸桑港航路殺人事件」とは

ゲーム基本情報

タイトル黄金の羅針盤 翔洋丸桑港航路殺人事件
シリーズ1920シリーズ 藤堂龍之介探偵日記
ジャンルコマンド選択式アドベンチャーゲーム
発売年1990年
販売/開発リバーヒルソフト
発売機種PC-9801、X68000、FMTOWNSなど
前作琥珀色の遺言 西洋骨牌連続殺人事件
次作瑠璃色の睡蓮 伍彩龍伝説殺人事件(アルティ名義)
※使用している画像は指定が無い限りPC-98版のものです

「1920シリーズ 藤堂龍之介探偵日記」は、「J.B.ハロルドシリーズ」と並ぶ「リバーヒルソフト」の看板AVGシリーズで、パソコンでは1988年の「琥珀色の遺言 西洋骨牌殺人事件」と1990年の「黄金の羅針盤 翔洋丸桑港航路殺人事件」の2作品が発売されており、後に「アルティ」という別会社にてリメイク・続編の発売も行われてる。

関連作品

「翔洋丸」の甲板に置かれた樽から出てきたものは…

1923年某月。

桑港(サンフランシスコ)を出港し横浜へ向かう途中の客船「翔洋丸」に乗っていた乗客「一条菊子」は、甲板でボーイの「尾崎康平」とぶつかり、その拍子に甲板にあった一つの樽を倒してしまうのだが、なんと倒れた樽の中には白骨化した人間の死体が入っていたのである。

尾崎に呼ばれて現場に来た船長の「鷹取重四郎」であったが、鷹取は「この事は我々が対応するので、他の乗客や船員には他言無用である」と菊子と尾崎、そしてたまたま現場近くにいたため白骨を目撃した「青沢豊彦」と「青沢キリ子」夫妻に強く指示を出しただけであった。

しかし菊子は口止めされたにも関わらず、同じ船に乗っていた探偵「藤堂龍之介」に事件のことを漏らす。探偵として当然事件に興味を持った龍之介は独自に調査を開始するのだが、調査中に今度は船の事務長「片桐幸蔵」が何者かに刺し殺される事件が起きてしまう。

白骨死体の事件と刺殺事件に関連はあるのか?2つの事件を本格的に捜査し始める龍之介だったが、船上での悲劇はそれだけで終わらなかったのである。果たして龍之介は、船が横浜に着く5日後までに全ての事件を解決できるのか…。

航行中の船上という逃げ道の無い舞台での殺人事件。つまり本作は所謂「クローズドサークル」ものというわけじゃな

リバーヒルソフトの”らしさ”と”進化”

概要でも触れたように、本作は「J.B.ハロルドシリーズ」などでお馴染みの「リバーヒルソフト」が制作したAVG(アドベンチャーゲーム)で、「琥珀色の遺言」に続く「1920シリーズ 藤堂龍之介探偵日記」の第二作目である(続編であるが物語は続きではない)。

リバーヒルソフトのAVGといえば大人の雰囲気が漂う落ち着いた作品というのが特徴で、またゲームシステム、グラフィック、音楽、シナリオ、どれも安定した品質と言っていい作品であった。そしてこの「黄金の羅針盤」も従来の作品に負けず劣らずの品質の良い作品となっていたと言える。

ただし時代も1990年に入り、本作の発売機種もPC98、X68000、FMtownsと当時の上位機種だった事もあり、マウスオペレーションが前提の使いやすいUIの採用と、従来のものとは違うウィンドウタイプの画面構成になっていたあたりで、ちゃんと時代に合わせた進化という部分も見せていた。

ただこういった進化は見せていながら、本作がリバーヒルソフト最後のパソコン版AVGになってしまったのは残念じゃったのう

4日間を16の時間帯に分けて章仕立ての構成に

本作にはUIや画面構成以外にも、従来のリバーヒルソフトの作品には見られなかった特徴がある。それはストーリーが章仕立てになっているという点だ。章は全部で16あるが、ゲーム中では◯章という表現ではなく「藤堂龍之介探偵心得其の◯」という形で表現されている。

本作の目的は、5日後に船が横浜港に着くまでに事件を全て解決する事で、つまり捜査可能な時間は4日間のみとなる。この4日を1日毎に午前、午後、夜、深夜の4つの時間帯に分け、かつ1つの時間帯を1つの章に割り当てる事で全16章の物語としている。

ただ時間の概念はあるにしても、コマンドを実行する度に時間が進むというようなシステムではない。ここからはゲームの流れについての話になるが、本作も基本的には従来のリバーヒルソフトAVGの如く《移動・探索・会話》の3つの行動を繰り返してゲームを進めていく。

これらの行動はいくら意味無く繰り返しても時間は進まないが、これらの行動により必要な情報や証拠品(要はフラグ)が揃うと、その時点で初めて時間帯(章)が1つ進むようになっているのだ。そして当たり前だが、過去の時間帯に戻ることはできない。

つまり時間帯そのものが、ゲーム全体の進捗状況を示しているのである。

そして章を進めていくと、最終日4日目(13章)には「告発」というこれまで出来なかったコマンドが実行できるようになる。これは全ての事件の最終的な解決、つまりゲームクリアへと繋がっていくクライマックス的なコマンドであり、最後までゲームが単調にならない工夫が感じられる。

移動可能な場面はリバーヒルソフト最大級?

ではゲーム進行の中心となる《移動・探索・会話》についてもう少し詳しく解説して行く。ちなみに本作はフルマウスオペレーションのため、マウスカーソルを実行したい対象に合わせて、マウスクリックで実行するのが基本操作となる。

ではまず移動について。

本作の舞台である「翔洋丸」は比較的大きな客船であり、階層も一階から五階まであるためゲーム中での移動範囲はかなり広く、行き先も数多く存在する。その為か移動は翔洋丸の平面図を模した画面で、行きたい場所(客室、船内施設、甲板、階段など)をクリックして移動する直感的なシステムになっていた。

ちなみに平面図上は人がいる場合もあり、部屋と同じように選択する事で後述する簡易的な会話も可能であった。

選択した部屋へはいきなり入ることはできず、入室時にまずドアが表示され”ドアをクリックしてノックをし、中にいる人物の許可を得てからドアノブをクリックして入室”という操作を行う必要がある(ただし食堂や喫煙室など共有スペースではノックは必要ない)。

またノックをした場合でも、中の人から入室を拒否される場合もある。

入室を終えると、画面にはその部屋の間取りを斜め上から見たような画像が表示され、そこに様々な家具や設備が配置されるのだが、この部屋の絵や家具の色がセピア調に統一されており、非常に1920年代の雰囲気を感じさせる演出になっている。

実は部屋の中でも移動コマンドが実行可能で、主に平面図画面に戻る際に使用するのだが大きな部屋の場合、室内が複数のブロックに分割されている場合があり、このブロック間の移動手段としても室内での移動コマンドは使用される。

ただでさえ部屋数が多いのに、さらに部屋の中に複数ブロックが存在する。実はこれが本作の攻略難易度を上げているんじゃよな…

探索は探偵モノの基本だが…後回しでもOK?

次に「探索」についてだが、室内(または甲板)で探索コマンドを実行すると探索可能な場所に虫眼鏡マークが表示され、任意の虫眼鏡マークをクリックすることで探索の実行が可能であった。実行時にそこに何か重要な物品があれば、それが画面に表示されて証拠品として自動的に入手できる。

このタイプのAVGの場合、いける場所全てに行って片っ端から探索するのがゲーム進行のセオリーをなっているのだが、前述したように本作は兎に角部屋数が多く、さらに複数ブロックに分割されている部屋も結構あるので、それらすべてを回って片っ端から探索というのはかなりの労力を必要とする

ゲーム攻略的な話をすると、正直なところ捜索は基本的に後回しで構わない。この後説明する人物との会話を優先して行っていくだけでもゲームはわりと進行できる(証拠品も人から入手するケースが多い)ので、徹底的に人物と会話してそれでも話が先に進まないようなら捜索に本腰を入れるというスタンスでも構わないだろう。

ただし会話のなかで捜索が必要になりそうな情報が聞けた場合は、もちろん優先したほうが良いのであるが。

ちなみに個人的になかなか捜索で見つけられなかった証拠品が「はさみ」じゃった…。

聞き込みは捜査の基本、怪しい奴には厳しく追求!

会話について、本作では状況により3つの違うシチュエーションでの会話が用意されており、それぞれについて出来ることと得られるものが変わっていた。

また会話中のコマンドについては、最初に「話題」を選択し、次に「内容」を選択して実行するタイプ(例えば話題は「人物」、内容は「一条菊子」という感じ)となっており、話題はシチュエーションにより若干変わり、内容は新しい情報や証拠品の入手、新たな事件の発生などで増えていく。

▼簡略的な会話
主に名前の無い人物(所謂モブ)との会話は二言三言で終わる簡略的なものになり、プレイヤーはコマンドなどの実行はできない。事件に関わる事よりも、誰々が何処にいたなどの目撃情報などがよく得られる。
※ちなみに移動時の平面図上の人に話しかけた際も同様のものとなる。

▼聞き込み
名前のある登場人物との会話では、登場人物や事件の事、証拠品についての情報などを聞くことができる。捜査を進めるため、容疑者を洗い出すため必要になる様々な情報を得る、このゲームの根幹を成す部分と言えるだろう。

▼容疑者への追求
龍之介がその人物を事件の容疑者と認めると、以後その人物との会話は通常と違う、事件についてより深く追求するものになる。被害者や殺人の動機について、また何か隠していないか?などの情報が得られる。
※追求により真犯人が自白することは無いが、自白をして容疑者から外れる人物はいる。

簡易的な会話以外はプレイヤー側から会話を終了するのが普通だが、状況により相手側から一方的に会話を打ち切られたり、第三者に割り込まれて中断してしまったり、場合によってはそもそも会話に応じてくれない場合もある。

いいところで会話を中断させられるのは腹が立つんじゃが、実はそれは確実に重要なフラグが立ったということでもあるんで、嬉しいことでもあるんじゃよなw

告発で映画的なクライマックス

前述したように、4日目の最終日(章だと13章)に船長の許可が降りれば「告発」が可能になる。これは船長の権限で事件の容疑者、関係者らを一堂に集め、全員の前で龍之介が容疑者を告発するというものである。船長権限による正式な告発であるため容疑者は逃げる事も言い逃れもできず、さらには第三者が邪魔する事も出来ない。

プレイヤーが告発コマンドを実行すると画面上に容疑者が全員並び、その中から告発する人物を選ぶとその人物が前に進み出て告発を受ける事になる。告発時に実行できるコマンドは容疑者への追求のときのものと近いが、サブコマンドが無い事が最も大きな違いとなる。

また告発時は「証人」を呼ぶコマンドもあり、容疑者の犯行を決定付けるような現場を目撃した、あるいは容疑者に関わる非常に重要な情報を持つ人物に、容疑者の前で証言させるという事もできた(ただし事前にその人物にに証人になってもらうことを確約してもらう必要がある)。

この告発は一度行っただけでは事件の解決には至らないが、さらなる捜査を続けて何度か告発を行う事で容疑者は犯行を認め、物語はついに最終的な事件解決へと至るのである。

この告発から事件解決までの流れは、まるで探偵ものの映画や舞台でのクライマックス「解決編」を追体験しているかのような感覚を得られるものじゃった

「章仕立て」にしたことのメリット

本作は全部で16もある章(時間帯)で構成されており、各章毎に必要なフラグが立つと次の章に進むと言うこの時期のAVGでは珍しい手法を取り入れていた。従来のAVGの多くは始まったら最後まで区切り無く続くものが殆どで、区切りがあっても前半と後半、あるいは3章程度の区切りであったように思う。それに対して本作は16章もの区切りを用意していたのである。

多くのAVGは目指すべきゴールが本当にゴール(エンディング)の場合が多いため、長いストーリー作品になると「今全体のどのあたりなんだ?」と終わりの見えない不安に駆られることも多い。またフラグ管理という点でも区切りが無いと、フラグがどこに影響するかがわかり難く、フラグの立て忘れが後々尾を引いたりなどもある。

そういう点で本作での区切りとなる章が多いこと、かつその章で必要なフラグさえ立てれば次の章に進むという仕組みは、ストーリーが進んでいる実感と終わりへ向けての達成度がよくわかり、さらにフラグ管理もその章のものだけ意識すればいいので面倒くささも少ないと、良い方向に働いていたといえる。

RPGでもそうじゃが、長い作品の場合は「とりあえずのゴール」が定期的に無いと結構疲れるもんなんじゃよな

しっかりとした物語と登場人物達

ストーリー重視のAVGなので、ネタバレはしない方向でストーリーについて話すと。物語そのものはよく出来ていて、最後まで真犯人が分からないうえに、白骨死体の身元についてはまず間違いなく予想を思いっきり覆されるだろう。ただ若干前振りの無いどんでん返しみたいな部分があるので、「推理モノ」として見るといささか説明不足と言えるが「物語」としては驚きがあって面白い。

ただし前振りの無いどんでん返しとは言っても、物語を破綻させるようなものではなかったぞ

この物語を彩る主要な登場人物も個性とバックボーンがしっかりできており、登場人物がここに存在することのリアリティを違和感なく受け入れられる(違和感があるのは、そこに何かがあるわけで)。また龍之介とプレイヤーに怒りの感情を抱かせる悪人(犯人とは言ってない)や、孤軍奮闘する龍之介とプレイヤーを励まし癒してくれる人物のお陰で、いつのまにかプレイヤーとして龍之介に感情移入も出来ていた。

そして本作のある意味ヒロインとも言える「麻生多加子(人妻)」と龍之介のロマンス展開も、少し切なくてなかなか良かった。ただしプレイヤーとしては彼女の、ネタバレギリギリの事を言えば「罪を犯しているが犯人では無い」という立ち位置と、そこからくる彼女の態度に間違いなく翻弄されるであろう。

前述したようにいささか説明不足のどんでん返しがあるんで、無理に「謎を解いてやろう」と意気込むよりも、物語そのものを素直に楽しむ気持ちでプレイするのがオススメじゃな

最後に、作中で「東京で起こった大地震」の話題が人物との会話の中で出て、今の東京の状態を心配するという場面が何度かある。これは言わずもがな1923年9月1日11時58分に発生した「関東大震災」の事である。物語の本筋とは関係ないのだが、こういった会話が組み込まれている事に「この時代」のリアリティを感じられた。

《最後に》遊んでみたくなったら?

最後になるが、もし本記事を見て「黄金の羅針盤」を遊んでみたいなと思った方、昔遊んだのを思い出してまた触れてみたくなったという方へ。本作を制作した「リバーヒルソフト」は2004年に破産宣告を受けており、現在ゲームの販売については「アルティ」という会社に移行されている。このアルティという会社は、以後藤堂龍之介探偵日記シリーズ、J.B.ハロルドシリーズのパソコン版、そして新作などを携帯アプリ、ニンテンドーDS、スマフォアプリなどで発売している。

ただし残念ながら現時点(2021/05/15現在)で「黄金の羅針盤」を購入してプレイすることが可能なのは、「Project EGG」にて購入できるPC-9801版とX68000版のみである(リンクをクリックで商品詳細サイトへ飛びます)。こちらはWindowsでのみプレイ可能なので、気になる方は購入も検討してみて欲しい。

PC-9801版

X68000版

ちなみにJ.B.ハロルドシリーズの一部については、App storeやMy Ninendo Storeで購入することも可能なのでこちらもリンクを貼っておく。

≫EXIT

お疲れ様でした!

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コメント

  1. 名無しの冒険者 より:

    >1920シリーズ
    PC版で「琥珀色の遺言」「黄金の羅針盤」
    ニンテンドーDS版では「琥珀色の遺言」「亜鉛の匣舟」
    をプレイしました。
    時系列では、「亜鉛の匣舟」は「琥珀色の遺言」の前日端だった覚えが…
    間違っていたらすみません。
    「亜鉛の匣舟」のストーリーの中に「ストリキニーネ」の話があり「影谷貿易」が云々との内容があった…間違っていたらすみません。
    スマホアプリでのリリースだけではなく、スイッチ版で出てくれたら嬉しい
    ですね。
    ゲームシステムやスタイル等、様々ありますが推理小説の中に飛び込んだような
    AVGって最近なかなか無いような気がします。
    そのためか、某日本◎ソフトウェアさんの「探◎撲滅」が妙に面白そうに感じられます。

  2. ソンゴスキー より:

    >>1
    私は亜鉛は遊んだことはないんですけど、確かに亜鉛は琥珀色の前の話のようですね。ストーリー的な繋がりが無くても、こういう設定的な繋がりが見えると深みを感じますね。そういえば、ファミコン探偵ク 倶楽部のリメイク版は、結構好調のようですね。

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