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『アヤ』 サイキック・ディテクティブ・シリーズの第3弾。逢いたかった、私を殺したあなたに…。

賢者の塔 66F/No.0226

降矢木と同じサイキックアナリストである桐生五郎が持ち込んできた胡散臭い依頼。法外な報酬に釣られ降矢木は依頼を受けるが、すべてはそれが始まりであった。

≫ENTER

いらっしゃいませ!

じつはこの作品過去に一度取り扱っておるのじゃが、あちらはPCエンジン版の紹介ということで新たにPC(リメイク)版の紹介もさせてもらいたい。というわけで賢者の塔66Fじゃ!

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「アヤ」とは

ゲーム基本情報

タイトルAYA
シリーズサイキック・ディテクティブ・シリーズ
ジャンルコマンド選択式アドベンチャーゲーム
発売年1990年/1994年(リメイク)
販売/開発データウエスト
発売機種FM-TOWNS、PC-9821、Windows95など
前作Memories
次作Orgel
※使用している画像は指定が無い限りWindows版のものです

サイキック・ディテクティブ・シリーズとは

サイキック・ディテクティブ・シリーズについては、以下の紹介記事を参照してください。

他愛ない依頼に隠された罠の物語

降矢木さん、私あなたに頼みたいことがあるの
このままじゃ私も、私の友達も大変なことになるの
お願い、私を助けて。

留守番電話にそうメッセージを残した一人の女性が降矢木の事務所を訪ねてくる。その女性は降矢木のことを友人から腕の立つ探偵だと聞いて依頼をしに来たというが、話を聞いてもしょっちゅう頭を掻いてばかりで話が先に進まない。
頭が痒い!

ついに彼女は頭を掻き毟って悶え始めた。「解らない!何を話そうとしたのか!でもあなたに伝えないと!」と女性はさらに頭を掻き毟って苦しみ悶える。そしてついに…
彼女は自ら頭の皮を丸ごと引き剥がした。

頭蓋骨が丸出しになった女性は楽しげに「すっきりしたわ!何か一皮向けたみたいよ」と言って高笑いする。そして女性は何を話そうとしたのかも忘れてしまったと言い、そのまま降矢木に別れを告げた。

ことの始まりは、同じサイキックアナリストである「桐生五郎」が降矢木の事務所を尋ねてきたことだった。桐生は降矢木に「ある場所である人物と会うだけで大金が手に入る」という胡散臭い仕事を依頼してくる。

当然怪しんだ降矢木はそんな美味しい仕事なら自分でやればいいと言うが、桐生は自分は他の仕事で手一杯でできないと返す。さらに疑いを持つ降矢木だが、桐生から提示されたあまりに法外な報酬を聞いて仕事を引き受けてしまう。
今夜にでも出発してくれと頼まれた降矢木は、仕事に出かける前に恋人である「森崎梨絵香」の部屋に行きひとときの別れを伝える。愛を確かめ合った後、梨絵香は降矢木にこういった。

私はいつでも、あなたの心にいるわ。

ゲームの冒頭は実際こういう話の流れなんじゃが、初見ではこの前半に現れた女性の話が全く意味が解らなくて混乱するんじゃよな。でも実は…。

主な登場人物

《降矢木 和哉》
特Aクラスのサイキックアナリスト。過去に恋人の真行寺彩をサイコダイブの事故で死なせてしまい、以後はアナリストをやめて探偵事務所を開いている。今回は事務所を訪ねてきた桐生五郎から、ある老人に会って胸に腫瘍があることを確認するだけという胡散臭い仕事を紹介され、怪しむも法外な報酬に釣られて引き受ける。

《森崎 梨絵香》
降矢木の現在の恋人。前作のラストで降矢木と縒りを戻して幸せな日々を送っていたが、降矢木が仕事に出かけた翌日、彼女の誕生日に突然行方をくらます。本作では前作とは違い、ストーリーにも大きく絡んでくる。

《真行寺 彩》
降矢木の昔の恋人でサイコダイブ中の事故により死亡している。これまでは名前や事故の件についてばかり出てきたが、本作ではタイトルが「AYA」となっているとおり彼女のことが多く語られる。気のせいか誰かに似ているような…。

《桐生 五郎》
降矢木に胡散臭い依頼を持ちかけてきた人物。サイキックアナリスト。降矢木が依頼を完了した後に事務所も引き払って突然行方をくらます。風体が前作に登場した正木重吉に非常に似ているが、中身は正木とは真逆のゲス野郎である。

《倉橋 亜紀》
女性専用のアパートメントに住んでいる梨絵香の友人。梨絵香が行方不明になった当日に梨絵香と待ち合わせしていたらしい。ルームメイトから最近体調が良くないようだと心配されていた。物静かでおとなしい感じの女性だが、その内心では…。

《秋中 友和》
衛生省の薬事局で違法薬物の調査をしている調査官。昔、ある事件の捜査に降矢木が協力したことで顔なじみになっていた。不法薬物を取り扱っている大きな組織の秘密裏な取引の情報を得て、現在この街に来ている。コーヒーが大好きな、正義感の男。

《神谷老》
降矢木が桐生の依頼で会った、湖のほとりにある大きな屋敷に住む老人。まったく動きも喋りもしない、生きているかも死んでいるかも解らないような状態。胸に醜い腫瘍がある。

《榎本 龍覚》
ある人物の秘書を務めているという男。物語の終盤に登場。紳士ぶっているが桐生が可愛く思えるほどのド外道。

前作では生身の人間はほとんどサイキックアナリストじゃったが、今回登場するアナリストは桐生のみじゃな。そして本作ではついに真行寺彩がビジュアル(音声付き)で登場するぞい!

画面構成とシステム

本作の基本画面は画面中央にメイン画面、画面左側にメインコマンド、画面右側にサブコマンド、そして画面下にメッセージが表示されるという前作と同じ構成になっている。

メイン画面には景色や登場人物、イベントアニメーションが表示される。本作でも前作同様背景が実写取り込み画像で、登場人物がアニメ絵調のグラフィックというようになっているが、登場人物のアニメーションは前作ほど無い(口パク程度)。

メインコマンドは「何をするか?」というもので以下のコマンドがある。
見る…画面に表示されているものを見る
聞く…画面に表示されている人物に聞く
話す…画面に表示されている人物と話す(
思考…画面に表示されているものや人物について考える
使用…所持している持ち物を使う
提示…所持している持ち物を見せる
移動…別の場所に移動する
入る…画面に表示されている建物に入る
NOTE…SAVE/LOAD/ゲームの終了を行う
※場所や状況により表示されないコマンドもある

サブコマンドは、メインコマンドを実行する対象(「見る」なら何を、「聞く」「話す」なら誰となど)が表示される。話すコマンドの場合のみ、サブコマンドで誰と話すか選ぶと、さらに何について話すのかのサブコマンドが表示される。

ちなみに「聞く」と「話す」は似た動詞のコマンドだが、「聞く」ほうは話題を限定しない会話で「話す」ほうは話題をこちらで指定する会話になっている。

使用と提示のコマンドについては所持品の中から選ぶ、移動については移動先を選ぶそれぞれの専用画面が存在する。ちなみに物語の最後付近で使用と提示に似た「物証」というコマンドが突然表示されるのだが、実行結果は使用と提示となんら変わらない。

リメイク元のコマンドには「使用」と「提示」がなく、「物証」というコマンド1つにまとまっておるから、もしかしたらリメイク時のコマンドの直し忘れかのう?

今回は主に探偵「降矢木和哉」として

前作「Memories」で降矢木は冒頭いきなり心象世界に閉じ込められてしまったために、ゲーム中ほぼ全ての活動が心象世界の中でのもの、つまりサイキックアナリストとしての活動になっていた。本作「AYA」はその逆でゲーム中ほぼ全ての活動が現実世界でのものとなり、心象世界が関わってくるのは物語の終盤以降になるためアナリストではなく探偵としての活動がメインとなる。

探偵とは言っても誰かの依頼で行動する訳ではなく、依頼を終えて帰ってきたものの恋人である梨絵香と連絡がつかなくなってしまった事で不安を覚えた降矢木が、探偵かの如く梨絵香のマンションを物色したり、街で聞き込みをしたり探し回ったりする極めて私的な活動である。

しかも実際梨絵香と連絡がつかなくなってから半日も経っておらんのじゃから、それで不安を覚えるとは心配性を通り越して依存症レベルしゃよ。作中でも警官に呆れられておるしw

しかし梨絵香の行方を追ううちに、何かを隠し何かに怯える梨絵香の友人、怪しい行動をして姿を消した桐生、そしてこの街に潜む違法薬物の影、それらが梨絵香の情報と交差し始め、降矢木は梨絵香を探すためにもそれらの調査も始めていく。この展開はまさに探偵もののアドベンチャーゲームを遊んでいるようであると言えるだろう。

サイキックアナリストとしても?

ゲーム中での降矢木の活動の殆どは探偵としてのものであるが、だからと言ってサイキックアナリストとしての降矢木の出番が無いわけではない。2箇所程だが物語に強く絡んでくるシーンで、降矢木はアナリストとしての能力を見せてくれる。

最初のダイブ(心象世界に入り込む事)の対象は、事件に関わっているにも関わらず心を麻薬に侵されてしまい、そのため本当の心を表に出せなくなった女性である。降矢木は彼女の心象世界にダイブし、彼女の本当の心が擬人化した存在と向き合う。実はそれこそがゲーム冒頭のあのショッキングシーンなのである。

初めてプレイした時は、ここであのシーンと繋がるのか!と膝を打ったものじゃよ。本当にドラマか映画のような演出じゃな。

そして次のダイブの対象は、なんと死体に対してである。大事な取引の情報を誰にも秘密にしたまま息を引き取った人間の心にダイブして、その取引の情報を探し出して欲しいという依頼(命令)だった。しかし、そもそもサイキックアナリストのダイブは人間の心の中に入り込むものである。しかし死んでしまった人間に「心」は残っているのか?そこにダイブすることは可能なのか?

その答えは降矢木自身が持っていた。そう、彼はかつて死した人間の心の中にダイブした経験があるのだ。「真行寺彩」という死体に…。

心の中にいる二人の女性

本作のシリーズとしての大きなポイントとして、降矢木の恋人である森崎梨絵香と、元恋人の真行寺彩が両方が登場するという点がある。特に真行寺彩は、シリーズスタート時点で既に故人であり、これまでも名前と事件の事しか作品に登場していなかったが、本作にて遂に真行寺彩本人(?)が登場する事になる。

まず森崎梨絵香についてだが、前作では梨絵香が突然別れを告げた事で降矢木は心が弱まってしまい、本調子でないまま事件に巻き込まれる事になった。そして本作では梨絵香が自分の誕生日に突然行方不明になった事でまたしても降矢木の心は弱まってしまう。しかも降矢木が梨絵香の行方を追えば追うほどに、降矢木の心は梨絵香の事でさらにズタボロにされていくのである。

そして真行寺彩については、降矢木がある人物の心にダイブした際に、降矢木の前に突然現れる。しかしかつての恋人との感動の再会かと思いきや、降矢木に向かって彩は言う。

あなたに会いたかった。私を殺したあなたに。

再会を喜ぶどころか、彩は降矢木を自分を殺した人間として執拗に責めたててくる。それにより降矢木の心はまたしてもズタボロにされるのである。それにしてもなぜ今回こうも降矢木の心はズタボロにされなければならないのか、実はそれが物語のキーとなっているのである。

ほんとに今回の降矢木には同情するわい。きっとこの反動で、次回作でははっちゃけたんじゃろうなw

本作はタイトルが「AYA」となっているように、降矢木と真行寺彩の過去について解るような描写が多くある。ただし物語にてよく語られる「事故」についてハッキリした事はわからないうえに、ゲームを最後まで進めると、これら彩についての情報が事実なのかどうかも疑わしくも思えてしまい、結局「真実」と断言できる情報は本作で得ることはできていない。

一方で、前作での事件でより絆を深めた梨絵香と降矢木のイチャラブシーンや、降矢木と梨絵香の初めての出逢いのシーンなど、降矢木と梨絵香の関係についても本作では丁寧に描かれており、またこの二人の関係こそが今回の物語を解決に導くキーになっていることからも、本作はタイトルこそ「AYA」ではあるが、真行寺彩森崎梨絵香、降矢木の心の中にいるこの二人の女性について描いた作品であると言っていいのかもしれない。

最後に

本作はアドベンチャーゲームとしては、それほど難解ではなくゲームオーバーや「詰み(進行不可)」になることは無い。ただしある場所限定で若干意地の悪い仕掛けも用意されており、それは本来ならばそこで情報が得られるはずで必要なフラグも立っている状態なのに、その場に「ある人物」がいるとどうやってもそこで情報が得られないというものである。

ネタバレしてしまうが、その「ある人物」をその場から居なくさせるには、一度その場を離れてまた戻ってくればいいだけなのだ。

しかし通常のアドベンチャーゲームでは、新しい情報が得られると確信に近いものがあってその場所に行ったとき、そこで期待する情報が得られない、新しい展開にならないとなれば、プレイヤーは「必要なフラグが立ってないのか?」と思って他の場所をもう一度洗いなおすことに専念してしまい、情報を得られなかった同じ場所にまた戻るという発想はなかなか出ないものである。

プレイヤーの思考の裏をついた、ちょっと意地悪な仕掛けという訳じゃな。わしもこれに引っかかって無意味にいろんな場所を走り回ったわいw

次に本シリーズの特徴として、何かを見たり触ったりしたときに、それに適したリアルな生音に近い効果音が流れるというハイパーメディア的な部分があるのだが。本作ではそれがやたら多いように思われる。そういうものがこの時代の「ウリ」であったとはいえ、降矢木が階段を登るときの靴音までそんなにリアルである必要も無いのではないだろうか。

1つのゲームの中でプレイヤーがとにかく何度もトイレを流すリアルな音を聞かされるゲームは、おそらく世界で本作だけじゃろうなw

次に今回紹介のベースとしたのはリメイク版のほうであるが、リメイク元と画面構成などは変わり遊びやすくなっているものの、作品の大きな特徴であるイベントシーンでのアニメーションはそれほど変わっていない。というのもリメイク元でも本作から「DAPS」が導入されているため、元々アニメーションや会話もスムーズに再生されていたためである。(ちなみに「DAPSリプレイ」が導入されたのはリメイク版から)

そのイベントアニメーションだが、今回もショッキングなものからエロティックなものまで豊富に取り揃えられており、その点でも満足いくものになっている。ただ女性の頭の皮が剥けたり、元恋人の顔が腐って崩れ落ちるシーンを見てもそこまでショッキングではないのに、食事に蛆やミミズが沸いたり、ゴキブリの這うパンを食べるシーンなどは、相当にショッキングだと感じてしまうのは不思議なものである。

そして最後になるが、本作はシリーズの核ともいえる「真行寺彩」と降矢木について、そして降矢木が今最も大切にしている「森崎梨絵香」と降矢木についての話が中心になっており、サイキック・ディテクティブ・シリーズ全体の中でも非常に意味のある作品であろう。次回作である「Orgel」はちょっと本筋からまた離れてしまうが、それ以降の「Nightmare」「ソリチュード」に向けての起承転結の「起」という位置づけと言ってもいいかもしれない。

もちろん作品単体としてもストーリーは面白く、最終的な罠にかける為に降矢木の心を徐々に、そして徹底的に追い込んでいく手順は、本物のサスペンスドラマ並みに手が込んでいてハラハラするので、まだ遊んだことが無い人は一度遊んでみることを是非お勧めする。

ただゲーム全体をプレイして思ったのは、降矢木さん、最後あのあと後始末どうしたんじゃ?ハッピーエンド的に終わって仲良く帰宅しておるけども…殺ってるよね?じゃなw

≫EXIT

お疲れ様でした!

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コメント

  1. 名無しの冒険者 より:

    懐かしい……!
    私がやったのはPC9821版で、割りと金田一シリーズとかが好きなので、暇になるとなにか他の事しながら、リプレイさせていました。
    ゲーム中とリプレイで微妙にセリフとか変わったことを覚えています。

  2. ソンゴスキー より:

    >>1
    このシリーズは音楽もいいし、DAPSリプレイでは割と本編に無い降矢木のナレーションとかが追加されてますので、BGMとしてDAPSリプレイ流すっていうのはありですね!今度やってみようかなw

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