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『マンハッタン・レクイエム』 J.B.ハロルドシリーズ第二弾。天使たちは何故、摩天楼の闇に跳んだのか?

賢者の塔2F/No.0005

私が死んでも、この町では誰もがすぐに忘れてしまう。でもあの人は…あの刑事さんなら、こんな私のことでも忘れないでいてくれるかもしれない…

今回紹介するのは、「リバーヒルソフト」を代表する「J.B.ハロルドシリーズ」の第二弾、「マンハッタン・レクイエム」というコマンド選択式AVG(アドベンチャーゲーム)じゃ

「J.B.ハロルドシリーズ」って有名だから知ってるけど、なんかコマンド選択式だから"コマンド総当たり"でクリアできちゃうのがアレだって話も…

うーむ…。
んでは今回はそういう話も混みで、この作品の紹介をしていこうかのう

おーけい。

では入るがよい、賢者の塔2Fじゃ!

本記事は、過去に一度公開したものを加筆・再編集したものです。

本記事を読み進める前に…

本記事を読み進める前に、以下の点についてご了承願います。

  • 当ブログで掲載している画像の、著作権または肖像権等は各権利所有者に帰属致します。もし掲載に問題等御座いましたらご連絡下さい。迅速に対応を取らせて頂きます。
  • 筆者は本作品において、100%の知識と十分なプレイ経験を持っているとは限りません。誤りがある部分については、コメントにて優しくご指摘よろしくお願いします。
  • 記事に書かれている内容についてはあくまで投稿時の状況や筆者の認識であり、現在の状況や筆者の認識と必ずしも同じではない場合があります。ご了承ください。

「マンハッタン・レクイエム」とは

基本情報

タイトルマンハッタン・レクイエム Angels Flying In The Dark
シリーズJ.B.ハロルドシリーズ
ジャンルコマンド選択式アドベンチャーゲーム
発売年1987年
販売/開発元リバーヒルソフト
発売機種PC-88、PC-98、FM-7、X1、X68000など
前作殺人倶楽部
後作KISS OF MURDER 殺意の接吻

作品概要

「リバーヒルソフト」を代表するアドベンチャーゲームシリーズである「J.B.ハロルドシリーズ」の第二弾となる作品で、キーボードから実行したいコマンドをキー入力で選択していくコマンド選択式のアドベンチャーゲーム。

プレイヤーはリバティタウンの刑事「J.B.ハロルド」となり、マンハッタンの自室から飛び降りて死んだ、かつて担当した事件で知り合った女性「サラ・シールズ」の死の真相を解明するというのが目的。

主人公が刑事であり作品的にも「推理・捜査もの」ではあるものの、今回は管轄外での事件であるため、刑事としての権限が全く無い中で捜査を進めていくというのが作品としての大きな特徴。加えて今後のシリーズで定番化する。

作中にてプレイヤーが遭遇する事件は一つでは無く、また事件の関係者も20人以上登場する。これにより複数の事件、複数の人間がストーリーの中で複雑に絡み合う中、プレイヤーは自身で事件の真相を暴いていく。

本当のミステリー小説を一冊読むような感覚を味わえる、そんな良質なゲーム作品といえるだろう。

ジャド・グレゴリーからの手紙

「サラ・シールズ」という名前の若い女、覚えているだろう。
そうだ、先だって君が担当した「ビル・ロビンズ殺害事件」、あれで証言をしてくれたパブのピアニストだ。

その彼女が死んだ。

リバティタウンの刑事「J.B.ハロルド」。
かつての先輩刑事(そして相棒)で、現在はマンハッタンで保険の信用調査事務所をやっている「ジャド・グレゴリー」から彼に届いた手紙は、衝撃的な内容だった。

サラはその月の9日の真夜中に、マンハッタンにある自室の窓から25階下の路上に転落した。即死だったという。

事件当時、彼女の部屋のドアには内側から鍵がかかっており、また部屋も荒らされた様子もなく、盗まれたものも無かったことから、彼女は自ら死を選んで飛び降りたと考えられている。

しかしジャド曰く、彼女の死を自殺とするにはにいくつかの疑問が残るというのだ。

現時点で警察は彼女の死について結論を出してはいないが、彼女は死ぬ前に生命保険に加入しており、保険会社にとっては彼女が自殺なのかそうでないのかは大きな問題。

その為、信用調査を行っているジャドのもとに調査の依頼が来たという事らしかった。

ジャドは手紙の最期をこう綴っていた。
随分と長い間、君の顔を見ていない。よかったら近いうちに顔を見せてくれ。事務所の近くに居心地のいいアイリッシュ・バーも見つけた。いつでもグラス2杯分のギブソンを残して待っているよ。

我が最高の相棒へ。

ジャドの意図を汲んだJ.B.は、少し前にサラから送られてきた彼女が務めているというクラブ「M&M」のカードを持って、マンハッタンへと向かった。

主な登場人物

J.B.ハロルド(通称J.B.)

リバティタウンの刑事で本作(本シリーズ)の主人公。普段はトレンチコートにソフト帽という出で立ち、酒は「アーリータイムズ」、煙草は「ラッキーストライク」を好むというハードボイルドな男。
本作では知己の女性である「サラ・シールズ」の死をジャドからの手紙で知り、単身管轄外である「マンハッタン」にやってきた。
プレイヤーの分身である事を強調するためか、劇中では彼の台詞は一切表示されず、また容姿も部分的にしか描かれていない。

サラ・シールズ

以前起きた「ビル・ロビンズ殺人事件」にて、J.B.の捜査に協力してくれたピアニストの女性。
事件後、生き別れとなっている母親を探すためマンハッタンに移り住み、クラブ「M&M」でピアニストとして働いていたのだが、9日の深夜、突然自室の窓から身を投げ死んでしまう。
その数日前、J.B.の元には彼女から短い言葉の手紙と共に、クラブ「M&M」のカードが送られていたのだが、これは何を意味しているのか…。

「ビル・ロビンズ殺人事件」って?

「J.B.ハロルドシリーズ」の第一作目「殺人倶楽部」で起きた事件じゃな。ちなみにこれがその当時のサラ・シールズじゃ

ジャド・グレゴリー

元リバティタウンの刑事でJ.B.の先輩かつ相棒だったが、1年前に体を壊してそれを機に刑事を引退。
現在は、娘のジェーンが住んでいる「マンハッタン」に引っ越し、保険の信用調査を行う事務所を営んでいる。
今回、サラ・シールズの不審な死をJ.B.に手紙で知らせた人物。

ゲームの流れを構成する3つの要素

ジャドの事務所を"拠点"とせよ

ゲームはジャド・グレゴリーが経営する保険調査会社、通称「ジャドの事務所」の前から始まる。

ではまず本作「マンハッタン・レクイエム」のゲームの流れを説明していこう。今回J.B.は管轄外地域で捜査を行うため、刑事ではなく「保険調査員」という肩書きで行動することになる。その為、このジャドの事務所がプレイヤーにとっての"拠点"となるのだ。

ここでは、「ジャド・グレゴリー」が事件に関する事や関係者に纏わる情報などをプレイヤーに教えてくれるほか、プレイヤーが新しい情報を入手すればそれについての追加情報や、さらにはプレイヤーの知らない新たな情報を教えてくれる場合もある。

そのため捜査中も定期的にこの事務所に戻り、ここまでの情報整理と、新たな情報の確認を行うのがゲームを円滑に進行させる"秘訣"である。

10の地区を巡り"情報"を足で稼げ

ジャドの事務所を出たら、いよいよマンハッタンの地で本格的に捜査開始となる。舞台となるマンハッタンでは全部で10の地区に移動が可能で、それぞれの地区を巡って聞き込みを行っていく。

しかし最初の状態では、色々な地区に行ってもまともな聞き込みを行えない。それもその筈で、この段階ではまだ圧倒的に情報が足りていないのだ。最初に聞き込みを行えるのは、せいぜいサラが住んでいたアパートくらいだろう。

そこでサラのアパートに向かってみると、アパートの管理人と出会う。ここからが本番だ。本作では出会った人物に対して個人の情報から、事件当時のアリバイ、他の関係者や手がかりの品についてなど、様々な事についてコマンド選択により聞くことができる。

そしてこの管理人に色んな話を聞いていると、サラの同居人「フラニー・ビンセント」の勤め先についての情報が聞き出せる筈だ。そして同居人の勤め先がわかる事で、今度はさっきまでは行けなかった同居人の勤め先に"聞き込み"に行けるようになる。

誤解を恐れずに言うならば、本作の大半はこの作業の繰り返しだ。

行ける範囲内をひたすら歩き回り、会える人物からとことん話を聞く。それを繰り返す事により行ける範囲、聞ける情報をどんどん増やしていく。こうしてあなたが"足で得た情報"の積み重ねが、あなたをやがて"真実"へと導くのである。

怪しい人物は"尋問"で問い詰めろ

しかし情報は情報でしか無く、それが"真実"であるかとうかは確実では無い。ではどうやって"情報"を"真実"に変えるのか?

この手助けになってくれるのが「尋問モード」である。

プレイヤーであるあなたが足で稼いできた情報により、ある人物が事件に関わっている、あるいは何か重要な情報を隠していると判断された場合、ジャドの事務所でその人物を"容疑者"と認定する事が出来る。

容疑者に認定された人物と次に出会った場合、会話の仕方が今までとは変わり、より直接的に事件の事について問いただすコマンドが実行できるようになる。これが「尋問モード」だ。

この尋問により、容疑者の口から大きな手がかり(あるいは事件の真実)が手に入る場合もあるが、必ずしも何かが得られるとは限らない。その場合、容疑者の口を割らせる為の情報がまだ足りていないのだ。

そういう時は、またマンハッタンの地を巡り情報を集め、ジャドの事務所で情報を整理、そして再び(あるいは新たな)容疑者を問い詰める。これを繰り返して行けば、J.B.ハロルド(すなわちプレイヤーであるあなた)は事件の真実に辿り着けるだろう。

孤軍奮闘するJ.B.への3つのサポート

前述の「ジャドの事務所」

改めて説明するが、J.B.ハロルドは「リバティタウン」の刑事であり、本作の舞台となる「マンハッタン」は彼の管轄外だ。従って以下の問題が発生する。

  • J.B.の刑事としての"権限"が一切使用出来ない。
  • 鑑識や取り調べ室などの"警察の施設"も使用不可。
  • マンハッタン署の"協力"を仰ぐこともできない。

これらの問題によりJ.B.は「刑事」では無くただの「保険調査員」として、マンハッタンでひとり捜査しなければならないのだが、そんな孤軍奮闘するJ.B.(つまりあなた)をサポートしてくれる場所が本作には3つある。ここでは、J.B.をサポートしてくれるそんな3つの場所について説明していこう。

そのうち1つ目は、先ほども出てきた本作においてJ.B.の拠点となる「ジャドの事務所」である。ここでのサポート内容については前述の通りなので、ここでの説明は割愛する。

情報の宝庫「市立図書館」

2つ目は、マンハッタンがあるニューヨーク市の「市立図書館」だ。ここにはジャドの娘である「ジェーン・グレゴリー」が務めており、彼女は父親と同じく孤軍奮闘するJ.B.を情報面でサポートしてくれるのだ。

ジェーンは今回の事件や捜査の中で浮かび上がった別の事件について載っている「新聞」を調べだしてくれるほか、図書館の情報や知り合いのツテを利用して、事件の情報やJ.B.が探し出した「手がかり品」についての調査も行ってくれる。父親同様に心強いサポーターだ。

ここもジャドの事務所同様に、捜査を進行させる大きな情報が入ってくることがあるので、定期的に(特に新しい手がかり品を見つけたら)足を運ぶのがよいだろう。何よりジェーンの優しい笑顔は、荒んだ話ばかりのこの街で癒しとなってくれるはずだ。

戦士の休息所「アイリッシュ・バー」

最後の3つ目はジャドからの手紙の中にもあった、ジャドの事務所の近くにある「アイリッシュ・バー」だ。ここは前述の2つとはちょっと意味の違うサポートになるが、それでもゲーム中においては非常に重要な場所となる。

ちなみにこのバーで描かれているJ.B.の後ろ姿には妙に年季を感じるんじゃが、実は彼はこの時点でまだ29歳だったりするぞいw

若っ!
後ろ姿だけだと、ジャドと大して変わらない年齢に見えるわ…

ここでJ.B.は酒を飲み、煙草の煙をくゆらせつつ以下の3つことが行える。

進捗状況の確認

まずこの作品には「第一部」とか「第二章」とか「前編」などの物語の区切りが存在しない。従って今自分がこの物語のどのあたりまで進んでいるのか?と言った事が、プレイヤーであるあなたには非常に伝わり難い。

このバーでは、ゲーム中に得た情報や手がかり、進行状況など項目別の進捗状況をグラフ(単位は点)で確認することができ、この進捗グラフでゲームが今現在どこまで進んでいるのかを随時確認できることができた。

人間関係の分析

次にこの作品は兎に角登場人物が多い(事件に関係ある人物だけでも20人以上)。それだけ多いと名前を覚えるだけでも大変なのだが、さらに登場人物たちの人間関係なども把握していないと、事件の内容やストーリーの全体像を理解するのは非常に難しい

このバーでは、ゲーム中でJ.B.が接触した(または情報を得た)登場人物たちの関係図を確認することができる。これによって、誰と誰は関係があり、誰と誰がどの事件に関係しているというのを再確認することができた。

セーブ/ロード

本作において、プレイ中のあなたのデータはこのバーでのみ「セーブ」及び「ロード」を行うことができる(セーブデータは2つまで保持可能)。ちなみにゲームを起動した際には、毎回新規状態でゲームがスタートするので、必ず最初にこのバーに来てデータのロードを行う必要があった。

このように本作にはマンハッタンの地で孤軍奮闘するJ.B.(あなた)をサポートしてくれる

  • ジャドの事務所
  • 市立図書館
  • アイリッシュ・バー

という3つの場所が用意されているので、是非頻繁に足を運んで利用してほしい(できればこの3つの場所は毎回1セットで利用するのがいいだろう)。

作品に登場する3人の「サラ・シールズ」

Angels Flying In The Dark

ではここまでゲームのシステム的な話が続いたので、今度はゲームの物語についての話をさせてもらおう。

本作「マンハッタン・レクイエム」の副題は「Angels Flying In The Dark(闇に翔ぶ天使たち)」である。これが、深夜に窓から飛び降りた「サラ・シールズ」の比喩である事は想像できるであろう。

しかしよく読むと「Angels (天使たち)」と複数形になっている。これはどういう意味なのだろうか?

実はなんと本作には「サラ・シールズ」という女性が3人登場し、更にこの3人全員が深夜に「飛び降り自殺」というかたちで亡くなっているのだ。それ故に副題が、「Angels Flying In The Dark(闇に翔ぶ天使たち)」となっているのである。

そしてプレイヤーであるあなたは、この3人の「サラ・シールズ」の死について、本当に自殺だったのか、それとも事故、あるいは自殺に見せかけた殺人なのか、その真実を解き明かさなければゲームのエンディングを迎えることはできない。

本作ではこのように自殺した女性たちを「天使」と比喩しておるが、作品として自殺そのものを美化したりする内容では無いことを断言しておくぞ

自殺に限らず、愛する人を失った残された人たちの悲痛な想いも描かれているものね…

では3人の「サラ・シールズ」それぞれの"死"と、残された"謎"について見ていこう。

ただ母親に逢いたかっただけ…「サラ・J・シールズ」

サラ・J・シールズの死

J.B.の知己の女性で、クラブ「M&M」で働いていたピアニスト。9日の深夜に、アパートの25階にある自室の窓から飛び降りた。彼女の部屋は荒らされた様子はなかったため、自殺では無いかと見られているが、彼女には自殺をするような理由はなかったという。

彼女の部屋の窓に掛けられていたカーテンが引きちぎられていたり、窓枠に新しい傷があったり、彼女は死亡時に彼女以外2人の指紋が残った小さなオルゴールを握っていたなどの事により、彼女が亡くなったとき彼女の部屋には誰かがいたのでは無いかと考えられる。

また、彼女は自殺する数日前にJ.B.に「M&M」のカードを送っていた。しかしこのカードはM&Mのボーイですら"見た事がない"というものであった。

サラ・J・シールズの謎

  • サラが飛び降りた時、部屋には他に誰かいたのか?いたのならばそれは誰なのか?
  • 彼女はなぜこのオルゴールを手にしたまま死んだのか?彼女以外の指紋は誰のものなのか?
  • 「M&M」のカードは何の意味があるのか?何故、彼女はカードをJ.B.に送ったのか?

サラ・J・シールズの母親

彼女には「リチャード・クリスティ」という父と「クラウディア・シールズ」という母親がいたが、この2人は既に離婚しており、離婚後彼女は母親と会えていなかった。しかし一年前に母親から「打ち明けたい事があるから、会いにきてほしい」と手紙を貰い、マンハッタンに移り住んでいたのだが、結局母親には会えなかったという。

この「サラ・シールズの母親」の存在と、クラウディア・シールズが打ち明けたかった事、この二つが物語の根幹となる重要な存在だ。

死ぬ直前まで行方不明だった「サラ・O・シールズ」

サラ・O・シールズの死

サラ・J・シールズが入っていた生命保険の受取人になっていた女優志望の女性。サラ・J・シールズが死んだ9日の夜から急に行方不明になっており、その後の2X日の深夜に住んでいたアパートに戻りアパート自室の窓から飛び降りたとみられる。

彼女は著名な脚本家の舞台「エンジェル」の主役オーディションを受けており、周りには「コネができたから必ず受かる」と話していたとのこと。しかし合格発表が予定されていた10日を待たずに、前日の夜から行方不明になっていた。

サラ・O・シールズの謎

  • 彼女は9日の夜から飛び降りた2X日までの間、一体何処に行っていたのか?そして何故わざわざ一度アパートに戻ってからその直後に自殺したのか?
  • 彼女が言っていた「コネ」とは誰のことなのか?その人物が事件に関係しているのか?
  • そして、なぜ彼女は「サラ・J・シールズ」の生命保険の受取人になっていたのか?彼女とサラ・J・シールズの関係は?

シンデレラの座を勝ち取っていた「サラ・N・シールズ」

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サラ・N・シールズの死

舞台女優を目指している女性。サラ・O・シールズと同じ「エンジェル」のオーディションを受けており、見事主役に抜擢された。にも関わらず、彼女は2X日の深夜に、突然ブロードウェイのビルの屋上から飛び降りたとみられている。

サラ・N・シールズの謎

  • 彼女は有名脚本家の舞台に主役として抜擢され、オーディションの合格を父親にもとても嬉しそうに話し、稽古も順調だったと言う。でありながら、彼女は何故死を選んだのか?
  • 彼女の部屋に残されていた「エンジェル」の台本は、主役の名前が黒く塗りつぶされていた。これは何を意味するのか?

この作品に登場する3人の「サラ・シールズ」。彼女たちの死と謎を追っていく事で、あなたは華やかなマンハッタンの裏に、金、憎悪、そして麻薬という"闇"が蠢いていた事を知るだろう。

そして彼女たちも、そういう闇に飛び込んでしまった…のかもしれない。

《最後に》コマンド総当たりでクリア可能?

コマンド総当たりとは

では最後に、本作が"コマンド総当たりでクリアできてしまう"という話について意見を述べさせて貰おう。

あ、私が最初に言っちゃった話ね

そうじゃな、またちょっと長くなるんじゃが是非読んで欲しい

1980年代前半のAVGは、キーボードから実行する命令(コマンド)を直接”単語で入力”する「コマンド入力式」が主流であった。しかし1980年代中盤頃からは、事前に画面に一覧で表示され、数字やアルファベットが振られているコマンドを”キーで選択”する「コマンド選択式」が主流になっていった。

コマンド入力式のAVGは、プレイヤーがその場その場で正しい命令(動詞や名詞)を自分で思いついて入力する必要があり、肝心な動詞が思いつかなかったり、当時のまだ貧弱なグラフィックのせいもあり、目の前にあるものが何なのかという名詞が出てこなかったりすることもあった。

「ジャグラーストーン(1984年/リバーヒルソフト)」
コマンド入力式はプレイヤーが「動詞+名詞」の形でコマンドを入力する必要があるため、何よりゲームが反応するワードを探し出すのがゲームの目的と言ってもよかった。

一方でコマンド選択式のAVGの多くは必要な動詞も画面に映っているものの名詞も、画面にコマンドとして自動的に表示されるので考える必要が無く、コマンド入力式のAVGで言えばゲームの回答が画面に既に表示されているようなものなので、プレイヤーにとって非常に遊びやすいシステムだったのだ。

しかしこれには副作用もあり、画面に表示されるコマンドを上から順番に片っ端から実行(つまり”コマンドを総当たり”)していくことで、特に何も考えなくても悩むことなくエンディングまで行けてしまうという作品も存在したのである。

そしてこの「マンハッタン・レクイエム」も、それに該当する作品であった。

コマンド総当たりを防ぐには

確かにコマンドを考えなしにただ順番に実行していってクリアできてしまうのであれば、それはあまり良いAVGとは言い難いかもしれない。ではそういった”コマンド総当たり”はどうやって防げば良いのか?主に考えられるのは2つの方法だ。

1つはプレイヤーに「トラップ」を仕掛けることだろう。例えば、あるタイミングで特定のコマンドを実行してしまうとゲームオーバーになる。またはゲームオーバーではないがそれ以上ゲームが進行しなくなる(所謂「ハマり」)といったものだ。

「ゾーディアック(1985年/リバーヒルソフト)」
コマンド入力式のAVGが主流だった時代ではプレイヤーが不正解のコマンドを実行すると、その場で「ゲームオーバー」になるタイプのトラップが結構多く仕掛けられていた。

もう一つはプレイヤーに「テスト」をさせることだ。例えば、ゲーム中に誰かが言った暗号などを特定の場所で入力させたり、最後に犯人や凶器、犯行動機などをプレイヤーに選択させる。つまりただコマンドを連打してテキストを読み飛ばしていると、必然的に先に進めなくなるものである。

前者については他社の作品でそういうトラップを仕掛けているものも存在するが、正直この作品というかこのシリーズとは極端に相性が悪い仕掛けだと思われる。なぜならここまでの話でも説明したように、本作は兎に角多くの場所で多くの人から多くの情報を足で稼ぐタイプのゲームだからだ。

「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ(1984年/ログインソフト)」
ある場面でコマンドを上から順番に総当たりで実行してしまうと、ゲーム進行が不可能になる「トラップ」が仕掛けられていた。

そういうタイプのゲームなのに、誰かに何かを聞いたらゲームオーバーやハマりになるかもしれないなどというトラップが仕込まれていたら、絶対安心してゲームが進められなくなるだろうし、恐らくこのシリーズも長く続かなかっただろうと思う。

実は後者については、「J.B.ハロルドシリーズ」の次回作である「殺意の接吻」にて近いものが取り入れられているので、リバーヒルソフトとしても"コマンド総当たり"でクリア可能という事に思ったところもあったのだろう。

J.B.をロールプレイするAVG

では本作にもそういった仕掛けが必要だったか?という点について、個人的な意見を言わせてもらえば"必要ない"と私は考える。それはなぜかというと、本作の面白さは"J.B.をロールプレイする"ことにあったと思うからだ。

確かに上から順番にコマンドを実行していけばクリアできてしまうかもしれない。中にはそれを理由として本作を低評価にする人もいるかもしれない。だがそれは自分自身でこの作品の楽しさを損なわせているだけではないだろうか?

私は本作、というか「J.B.ハロルドシリーズ」を"ProjectEGG"などでプレイするときには、常にメモ帳アプリを横に開き、登場人物から聞いた情報をその人物毎に分けてメモを取りながらプレイしている。そうすることで、自分自身が「J.B.ハロルド」になった気分でプレイできるからだ。

またメモを取る理由はそれだけではない。本作の物語は、複数の事件に絡んだ複雑な人間関係などにより非常に高く評価できる内容に出来上がっている。それを一つも見逃さないようにメモを取りながら自分で情報を整理し、犯人を推理し、次の行動を考えてみる。

そのうえで最終的に事件を解決した時の楽しさと感動は、ただコマンドを総当たりでクリアした時のそれとは全く別物だと100%断言できるのだ。

ゲームをしっかりJ.B.の気持ちになって考え理解しながら進めていくと、捜査を進展させる新しい情報が飛び込んできたときに鳥肌が立つほどの感覚を味わうことができる。

また、実はメーカー側もそれを考えていたのではないかと思う部分がある。というのも当時本作のパッケージを購入するとゲームディスクとは別に、

  • J.B.ハロルドの黒い手帳
  • マンハッタンの地図
  • 登場人物の顔写真シール

という付録がついてきていた。これは何を意味していたのか?

これは恐らくプレイヤー自身に、ゲームをプレイしながらマンハッタンの地図を広げ、手帳を開いてゲーム内で出会った人物の顔写真を貼り、そこに得た情報を書き込んでいくという、J.B.ハロルドのロールプレイを推奨していたのではないだろうか。私はそう考える。

本作は確かにコマンド総当たりでクリアできてしまう作品かもしれない。しかし、この作品を楽しめるか、クリアして感動を味わえるかどうかはプレイヤーのゲームへの向き合い方次第なのだ。なので皆さんも、本作「マンハッタン・レクイエム」をプレイする際には、是非J.B.ハロルドのロールプレイをしながら遊んでみてほしい。

きっと私と同じように、この作品が大好きになることだろう。

AVGとしてこれが"正解"かはわからんが、実際この時代からは"謎解きを味わうAVG"よりも"物語を味わうAVG"というのが主流になってきておるんじゃよな。AVGにしてもRPGにしても、時代が進めばジャンルの形も変わっていくものじゃて

私もコマンド総当たりがどうとか考えずに、J.B.になりきって「マンハッタン・レクイエム」を味わってみるわ!

よいぞ、よいぞ

遊びたくなったら?

もし今回の記事を読んで「マンハッタン・レクイエムという作品に触れてみたい」とか、「またマンハッタン・レクイエムを遊んでみたい」と思った方は、以下のサイトを参考にして欲しい。

パソコン版

レトロゲーム配信サイト「ProjectEGG」にてPC-8801版、PC-9801版、FM-7版、X1版、X68000版が現在配信中。ただし対応OSが古いものもあるので、そちらを確認の上で購入を検討してみてはいかがでしょうか?

Nintendo Switch版

2010年頃にiOS/Android用アプリとして発売されていたものが、現在Nintendo SwitchでもDL購入が可能になっています。現在ならばこちらのほうが遊びやすいかもしれません。

≫EXIT

お疲れ様でした!

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コメント

  1. 名無しの冒険者 より:

    ストーリー的に引き込まれるものがあるので、そのあたりは総当たりになるから頑張ってたのかなとも思ってしまいます
    現に私もPCでやったのにDS版を
    DS版でもやったのにswitchでも・・・という具合に購入していきましたので・・・
    ガラゲーの時代にアプリとして配信されていた、JBハロルドの外伝シリーズも移植してほしいですね。

  2. ソンゴスキー より:

    >>1
    実際総当たりでプレイするにしても相当苦労するんですが、それでもちゃんと事件の内容を把握しながら進めば、おっしゃるように内容に引き込まれて苦ではなくなるんですよね。でも多分ですが、ただ総当たりで脳死プレイするほうが苦痛かもしれませんね。
    >ガラゲーの時代にアプリとして配信
    「シアトル・パープル・ヘイズ」と「サンフランシスコ・ブラック・ベル」ですね。私は残念ながらアプリ版もそうですが、DSでも発売されていた「ブルー・シカゴ・ブルース」も遊べてなかったんですよね。こちらもswitchなどで発売されないかなー?と期待しています。
    あ、あと「1920シリーズ」のほうもw

  3. etc. より:

    PC98版とswitch版とをプレイしました。操作性(マウスの使用で)はPC98版
    遊びやすさ(サポート・ヒント機能が充実。ストーリーの把握が容易)ではswitch版
    といった印象です。
    switch版のCGも良いのですが、PC98版の容量不足のためにおきた色数制限を逆手にとりシックの色調に整え、世界観を構築したのは見事ですね(←偉そう。
    こういう色調のゲームはもう出ないかもしれませんね、メーカー別ですが「カサブランカ愛を」とか、SLGだと「ロード・オブ・ウォー」とか。
    インディーズだと何とかなるのでしょうか、クラシック調の作品も多い印象があります。
    最近は、コーラスワールドワイド(メーカーさん)の「コーヒー・トーク」をだらだらプレイしています。
    関係ないまとめですみません。

  4. 名無しの冒険者 より:

    Win95版の再販……は難しいんでしょうね。
    メモや進行表がデフォであり、フルボイス&256色フルカラーが売りでした。
    当時は新人でも、今は有名·大物の方が声担当してたりでギャラが凄いことになりそう。

  5. マーフィ大尉 より:

    J.B.ハロルド・シリーズは一作目しかプレイしなかったのですが
    >J.B.ハロルドのロールプレイを推奨していたのではないだろうか
    この解釈には目から鱗が落ちる思いです。
    以前に紹介されていた『原宿アフターダーク」でも一軒、一軒聞き込みをして回る
    という、昔の刑事ドラマでは定番の“足で稼ぐ”を再現していましたね。
    そういえばあのゲームにも手帳が小道具としてついていましたっけ。
    刑事ドラマ・映画が大好きな私につかの間の刑事気分を味わせてくれました。

  6. ソンゴスキー より:

    >>3
    >操作性(マウスの使用で)はPC98版
    Switch版は内容はiPhone版と同じだと思うのですが、Switch版はタッチ操作できるんですかね?あ、でもTVに映して遊ぶ事も考えればコントローラー操作か。だとしたらちょっと不便ですね。
    >サポート・ヒント機能が充実。
    iPhone版だと、新しい情報が入ると一瞬画面が光るんですよね。なんかJBがひらめきを感じたような演出で好きなんですよね。
    >色数制限を逆手にとりシックの色調に整え
    何も知らん人からすればショボくて地味な背景にしか見えないんですが、あれがハードボイルドな世界観にマッチしてるし、余計なものに神経が行かずに会話に集中できる効果もあるんですよね。
    >「カサブランカ愛を」
    シンキングラビットの名作AVGですね。システムはコマンド入力式とあの時代でもう古いものでしたが、ストーリーがよく出来ていて引き込まれる作品でした。

  7. ソンゴスキー より:

    >>4
    >Win95版の再販
    現在、旧リバーヒルソフトのゲーム事業はアルティという会社が引き継いでいるようですが、基本的にアーカイブではなくリメイクなんですよね…
    >ギャラが凄いことになりそう。
    フルリメイクでキャストも同じ人でやるなら凄いことになりそうですよね、ギャラ。ただアーカイブ化しただけの場合だと、声優さんへのギャラってどうなるんだろ…?

  8. ソンゴスキー より:

    >>5
    >この解釈には目から鱗が落ちる
    実際はどうなのかわかりませんが、まあ手帳くらいならオリジナルグッズみたいな感じで付録として付いてくるのはあるでしょう。しかしマンハッタンの地図やわざわざ登場人物の写真シールまで付けたと言うことは、やはりロールプレイを推奨してるのでは無いかとw
    >昔の刑事ドラマでは定番の“足で稼ぐ”
    世代的に「太陽にほえろ」なんかも見てましたから、刑事が町中を走り回ったりしながら聞き込みをしているのに憧れを感じたりもしてました。
    >刑事ドラマ・映画が大好きな私につかの間の刑事気分を味わせてくれました。
    ファンタジーRPGは、やっぱり冒険者になった気分が大事ですからね、刑事探偵ものの作品は、やっぱりこういう気分を味わえるの大事だと思います。

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