賢者の塔28F/No.0080
「コマンド入力式AVG」のシステムが抱える問題点の解決を試みた意欲作。果たしてその方法とはどんなものだったのか?
≫ENTER
いらっしゃいませ!

管理人じゃ。

謎の妖精よ。

明けましておめでとうございます!

おめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!

というわけで2023年最初の更新は、リメイク記事にはなってしまうがT&Eソフトの「惑星メフィウス」という作品についてじゃ

ふむ、わざわざこの作品の紹介記事をリメイクするってことは、近いうちに同じシリーズの別作品を取り扱う可能性が…?

…ということじゃな?
では準備ができたら入るがよい、賢者の塔28Fじゃ!
本記事を読み進める前に…
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「惑星メフィウス」とは

基本情報
タイトル | スターアーサー伝説I 惑星メフィウス |
シリーズ | スターアーサー伝説 |
ジャンル | コマンド入力式アドベンチャーゲーム |
発売年 | 1983年 |
発売/開発 | T&Eソフト |
発売機種 | PC-6001mkII、PC-8801、PC-9801、FM-7、X-1、MSXなど |
前作 | なし |
後作 | スターアーサー伝説II 暗黒星雲 |
作品概要
「スターアーサー伝説I 惑星メフィウス(以下、惑星メフィウス)」は、1983年7月にT&Eソフトから発売されたコマンド入力式のアドベンチャーゲーム(以下、AVG)で、「スターアーサー伝説シリーズ」の第一作目となる作品だ。
- スターアーサー伝説I 惑星メフィウス
- スターアーサー伝説II 暗黒星雲
- スターアーサー伝説III テラ4001
スターアーサー伝説シリーズは、上記の三作品で主人公「スターアーサー」の一つの大きな冒険物語になっており、各作品のストーリーも前後が繋がっている。
本作「惑星メフィウス」では、惑星メフィウスにあるという伝説の剣「レイソード」を手に入れるのが一旦の目的となっており、そのためプレイヤーは主人公「スターアーサー・ミルバック」となって、様々な障害を乗り越えつつゲームクリアを目指していく。
この時代のAVGが抱えていた問題をユーザーの為に軽減しようという意図が感じられるシステムが用いられていたが、同時にユーザーを苦しめる酷い尺稼ぎもあったりと、スタンスが些かチグハグな感のある、本作はそんな作品である。
ストーリーと人物紹介
ストーリー
宇宙歴3826年、銀河連邦は外宇宙からの敵ジャミルと交戦中であった。非武装の惑星は、凶悪なジャミルの宇宙艦隊によって、次々と滅ぼされていった。惑星シークロンもそのひとつで、惑星の各主要都市は今や壊滅状態にあった。
戦況の中、一隻の宇宙船がシークロンから飛び立った。スターアーサー・ミルバックの操るクラプトン2世号である。クラプトンIIは、惑星シークロンに伝わる伝説の剣を求めて、銀河辺境の惑星メフィウスへと向かった。
この伝説の剣とは、反物質で構成され、サイコエネルギーによって強大な力を発揮し、手に入れば惑星の一つや二つは破壊できる超兵器となりうるもので、惑星メフィウスの広大な砂漠地帯に眠っていると伝えられている。
この物語は、スターアーサーが惑星メフィウスに降り立つところから始まる。もちろん、本編の主人公スターアーサーはあなたです……。
人物紹介
スターアーサー・ミルパック
その名が示す通り、本シリーズ通しての主人公。
故郷の惑星シークロンを滅ぼした「ジャミル」を倒す為、惑星メフィウスにあるという伝説の剣を探している。なかなかのイケメンなのだが、劇中でその顔が表示されるのは2回のみという残念さ。
謎の老婆
本作において、唯一のスターアーサーの味方(仲間ではない)といえる人物。
彼女からあるものを渡されないと、ゲームを進めることもままならなくなるだろう。
っていうか女性だったのか…。

登場人物少なくない?なんかこういうスペースオペラ的な話なら、相棒とかヒロインとか出てきそうなものだけど?

ああ、そういうのは第二部からじゃなw
「惑星メフィウス」の基本的な進め方
ゲーム全体の《流れ》
まずこの「惑星メフィウス」という作品は大きく3つのシークエンスに分かれており、さらに1つのシークエンスが2つのシーンに分かれて存在している。つまり本作はシークエンス1のシーン1「入国税関」から始まり、順番に進んでいって最終的にシークエンス3のパート2「ピラミッド」で終了する事になるのだ。
シークエンス1 | シーン1 | 入国税関 |
シーン2 | 牢 獄 | |
シークエンス2 | シーン1 | スラム街 |
シーン2 | シティ | |
シークエンス3 | シーン1 | 砂 漠 |
シーン2 | ピラミッド |
※「シークエンス」及び「シーン」という単位は、筆者が便宜上勝手につけたものである。
因みに一度移動したシークエンス、及びシーンは遡って移動する(つまり戻る)事ができないので注意。

これがどういうことかと言うと、前のシーンやシークエンスでやり忘れた事、取り忘れた物があった場合…

"詰み"じゃないですかヤダー!
ゲーム中の《操作》
コマンド入力式
本作「惑星メフィウス」はコマンド入力式AVGであり、各シーンで画面に表示されている状況から、プレイヤー自身がゲームを進行させるために行うべき事を考え、それを命令(コマンド)としてキーボードから入力、ゲームを進行させていく。

最初の手順として、画面のメッセージ部に"*"が表示されているのは「どうするのか?(動詞コマンド)」の入力待ち状態なので、ここに「キク(聞く)」や「シラベル(調べる)」などの実行したい動詞コマンドを入力する。
次の手順として、入力した動詞コマンドにより画面上にカーソル、またはメッセージ部に"_"が表示されるので、カーソルを操作して対象に合わせる、または文字を入力する事で「何を?(名詞コマンド)」の指定を行う。
本作ではこの手順を1セット(1コマンド)とし、これを繰り返ながらゲームを進めていくのだ。
場面の移動・方向転換
本作では同じシーン内に複数の場面がある場合、先程の動詞コマンド受付状態の際に、キーボードのカーソルキーを押す事で、押した方向に移動(または方向転換)が可能になっている。
また場面の移動方法には、動詞コマンドの「ハイル(入る)」で行うものも存在し、こちらはカーソルで入りたい場所への入口を直に指定する事で移動が可能になっている。

ゲーム中にカーソルキーで移動するのか、方向転換するのか、または「ハイル」を使うのか、これは今いるシーンによって変わるので注意が必要じゃぞ

それは結構混乱しちゃうわね…
ちなみにシークエンス3のシーン1「砂漠」における場面移動については、その移動方法がやや特殊で非常に混乱するのだが、それについては後述する。
ゲームオーバーと《詰み》
ゲームオーバー
本作では、プレイヤーであるあなたが実行するコマンドを誤ると、それによってスターアーサーが死んでしまいゲームが終わりを迎える場面もある。

つまり「ゲームオーバー」だ。
ただし何の脈絡もなく突然一発ゲームオーバーというパターンは無く(昔のAVGはそういうトラップもあった)、明らかに危険な状況の中で適切ではない行動をとった場合に、そうなってしまうパターンがほとんどなのでそこは安心して欲しい。
詰み・ハマり
またゲームオーバーとは別に、本作にはゲームは継続しているが実はゲームクリアが不可能になっており、ただプレイヤーだけがそれに気が付いていないという所謂「詰み(ハマり)」と呼ばれる厄介な状況も存在した。
ゲームが詰む最も多いパターンとしては、あるシーン内で必要な行動を行わずに次のシーン(またはシークエンス)に移動してしまったパターンだろう。前述のように本作では前のシーン(またはシークエンス)に戻る事が不可能なので、その時点で詰みが確定してしまうのである。

プレイヤーがゲームに詰んでいる事に気がつかない。そんな状況で延々とゲームを続けさせるというのは個人的にも昔のAVGの悪しき習慣だと思っっておる

まさに"詰み"ならぬ"罪"ってわけね?
ゲームオーバーになってしまった場合はそのシークエンスのシーン1から、詰み状態については場合によりゲームの最初からやり直すことになるので、できる限りそうならないようにゲームを進行してほしい。
プレイヤーの方を向いていたゲームシステム
AVGが抱えていた《問題》
この「惑星メフィウス」という作品では、従来のコマンド入力式AVGが抱えていた問題を軽減してくれるような仕組みが用いられており、そこが本作の大きな特徴だったと言える。
ここではその、問題を軽減してくれるような仕組みについて説明していく。
ちなみにコマンド入力式AVGが抱えていた問題などについては、別記事の「【参照用記事】「アドベンチャーゲーム(AVG)」について(コマンド編)」を参照していただきたい。
動詞コマンド入力の《限定》
入力式なのに選択式?
コマンド入力式のAVGでは、プレイヤーが自分で動詞コマンドを入力しなければいけない為、その言葉(コマンド)探しに時間と労力を費やすことにストレスを感じがちだった。
それに対し、本作では入力可能な動詞コマンドをを以下の10個に限定してしまう事で、ユーザーが言葉探しに費やす労力やそれによるストレスを軽減しようという試みが行われていたのである。
▼入力可能な動詞▼
聞く、投げる、置く、取る、調べる、撃つ、叩く、開ける、入る、買う

この試みはコマンド入力式AVGが持つ自由度を、やや損なう試みではあったが、決まっている動詞の中から選べば何とかなるというのはやはりストレスを感じにくく、かつ遊び易いものになっていたので、概ね成功だったと言えるだろう。
ちなみに本作の動詞コマンドは入力はするものの、結果としては決められた動詞の中から選択している事になるので、ある意味で本作は「コマンド選択式」の要素も持ち合わせていたとも言えるかもしれない。

ちなみにこの作品が登場した1983年時点では、「コマンド選択式」のAVGはまだ登場しておらん

ほえー、結構先を見ていた作品なのね?
簡易入力機能も搭載
またコマンド入力式AVGの別の問題として、ゲーム中何度も同じ動詞を入力する必要があり、その都度毎回1文字ずつ入力しなければいけないと言うのは、ゲーム全体で見ればこれも結構な労力とストレスになっていた。
この問題に対して、本作では最初の1文字だけを入力すればOKという仕様にすることで、ここでもプレイヤーの労力やストレスを軽減しようという試みを用いていたのである。
これはつまり簡易入力機能で、例えばだが従来のAVGであればキーボードから"タタク"と3文字入力する必要がある場合でも、本作では最初の1文字の"タ"と入力するだけで自動的に"タタク"と入力されたのである。

確かに便利だけど、最初の1文字だけだと同じ文字の動詞コマンドとかありそうだけど
…あ!

そう、動詞コマンドを限定したからこそ可能な仕掛けってとこじゃろうな
そしてこういった試みは、動詞コマンドだけでなく名詞コマンドの指定部分でも見ることができる。
実行対象の《視覚的》な指定
ポイントアンドクリック方式の採用
従来のコマンド入力式のAVGでは動詞コマンドを実行する対象を指定する際も、その対象の名前をいちいち1文字ずつ入力していく必要があり、積み重なるとそれも結構な労力とストレスだったのである。
これに対し、本作では対象を従来のAVGのように文字入力で指定するのではなく、画面上に表示される「カーソル」を動かして画面からダイレクトに指定する、後の「ポイントアンドクリック方式」と呼ばれる方式を採用していたである。

これを採用した事により、本作では対象の名詞もいちいち手入力する必要が無くなり、またしてもプレイヤーの労力やストレスが減少されるような作りになっていたのだ(ちなみに動詞コマンドが「聞く」の場合は、普通に聞きたい内容をプレイヤーが手入力する必要がある)。
またこのポイントアンドクリック方式を採用したことで、画面上に同じものが複数ある中からひとつを選ぶ、またはひとつの大きなものの特定のポイントだけを選ぶといったやり方が可能になり、ゲーム側でもそれを利用したギミックや謎解きが用意されゲーム性にも厚みが増したと言えるだろう。
ただし、本作が「マウス」に対応していなかった為、カーソルは「カーソルキー」を使って動かすしか無く、その影響で思うように動かし難いこともあって、快適とまでは言えないものだったのは残念である。

特に本作後半では、このカーソル操作で画面中を探し回らなければいけなくなるので、操作性がもうちょっと快適だったら神機能だったんじゃがのう…

惜しい。
とはいえ、従来のAVGにおいてプレイヤーに大きく労力やストレスを与えていた部分を、コマンドの限定や簡易入力への対応、対象のカーソル指定などの新たな試みで緩和したことは本作の非常に高く評価できる点であろう。
プレイヤーの方を向いてない?ゲーム部分
先ほどは本作のシステム面においてユーザーの方を向いていた、つまりユーザーフレンドリーだった部分について説明をした。しかしそれと同時に本作には、ユーザーの方を向いていなかったのでは?と思ってしまう部分も存在していたのである。
それが最も現れていたと思われるのが、シークエンス3のシーン1「砂漠」だ。ということで、ここではこの砂漠での問題部分について説明していこう。
兎に角広大だった《砂漠》
484マスからピラミッドを探せ!
まずこの砂漠では伝説の剣「レイソード」が眠っているピラミッドを探すことになるのだが、なんとこの砂漠は22×22マス、つまり合計484マスからなる巨大なマップになっており、この484マス中のどこか1マスにあるピラミッドを探し出さなければいけないのだ。
しかもピラミッドの場所のヒントがゲーム中に存在してないので、ひたすら1マスずつ移動して確認していくしかない。

砂漠で必須のアナライザー
そこで活躍するのが砂漠に来る前にシティで購入している筈の「アナライザー」というアイテムである。これがあればいつでも"M"キーを押すことで現在の、位置情報、方角、そして周囲の特別なマスの有無を確認することができるのだ。
そしてこの特別なマスは、ピラミッドの可能性(あくまで可能性)があるので必ず確認しておこう。

砂漠はその殆どのマスが特徴も無い砂漠の風景であるため、自分の居場所をすぐに見失ってしまいがちであり、加えて砂漠での移動の仕方がやや特殊(詳しくは後述)である為余計に迷いやすい。アナライザーを使わずに、ピラミッドを探し出すのは恐らく不可能と考えた方がいい。
だがしかし、アナライザーで探し出すのは、実はピラミッドの場所だけではなかったのである。
砂漠での《暗号+α》探し
残り2桁の暗号
この砂漠に来るまでの間にちゃんと人と会話して情報を得ていれば、ピラミッドに入るには6桁の暗号コードが必要だということを知っている筈で、さらに4桁のコードはもう知っている筈である。
つまりピラミッドに入る為には、あと2桁コードが必要になるのだ。

もしこの時点で、4桁の数字を知らなかったら…?

ご愁傷さまです。
そしてネタバレにはなるが、この砂漠ではピラミッドの場所を探す前にその残りの2桁の暗号コードも探し出さなければいけないのである。そしてそれが隠されているのは、先ほども出てきたアナライザーで色が変わる場所だ。

そういう場所を見つけたら動詞コマンド「シラベル」を実行し、カーソルで画面上の怪しいところを調べて行く。もしそれが正解の場所なら2桁の暗号(または他の何か)が見つかるのだが、もし正解の場所でなければ見つかるまでそれをひたすら繰り返すしかない。
しかもその正解の場所はゲーム中に何のヒントも無い上に、もしかしたら本当に何もないマスという可能性もあるのだ。カーソルの移動と選択を何度も繰り返すのも苦労だが、それ以上に本当に何もないマスだったときの徒労感たるや尋常ではない。
折角コマンド入力周りでユーザーフレンドリーな試みをしていたのに、このユーザーにひたすら苦労を強いる砂漠シーンで全てを台無しにしてしまっている感すらあったと言える。
謎の9枚のプレート
ちなみにだが、砂漠には暗号コードだけでなく、謎の9枚のプレートというのも隠されており、実はこれもピラミッドの中に入る前に見つけておかないと最後の最後で…となってしまうものだ。
プレートの探し方については暗号コードと全く同じなのだが、プレートの場合は見つけ出した後に必ず「トル」で取得しなければ意味が無い。ここは注意が必要な点であろう。

ここまででこの砂漠の大変さが伝わったのではないかと思うのだが、最後にもう一つだけ砂漠に関してちょっとだけ特殊な事を説明しておこう。
特殊な砂漠での《移動方法》
左右には方向転換+1歩
さて、砂漠では484もあるマスを移動して回らないといけないのだが、この時の移動方法がちょっと特殊で非常に混乱する。砂漠での移動にはこれまで通りカーソルキーを使用するのだが、その仕様が以下のようになっているのだ。
- ↑キー:現在向いている方向に1歩進む。
- ←キー:現在向いている方向から左を向いて1歩進む。
- →キー:現在向いている方向から右を向いて1歩進む。
- ↓キー:使用しない。
お解りいただけるだろうか?左右のキーを押したときの行動が「右(左)を向く」ではなく、「右(左)を向いて1歩進む」なのだ。これはAVGの中でも恐らく非常に珍しい移動方法だと思うし、RPGなどで疑似3Dダンジョンに慣れている人には理解できない移動方法だろう。

この特殊な移動方法を知らないと、砂漠では一瞬で迷ってしまうだろう。ちなみに念のために説明しておくと、この移動方法については説明書の中に記載がちゃんとあるので、もし本作を遊ぶときはちゃんと説明書を読んでから遊ぶようにしたい。

プレイヤーによっては、説明書なんてゲームの起動方法さえわかればあとは何とかなるっしょ?とか思っちゃいそうね…

実は本作では、他の部分でも説明書をちゃんと読んでいない人が酷い目にあった話があるんじゃが…まあそこは後にしておこうかのう
砂漠について
以上が本作における「砂漠」の問題点なのだが、如何にこれがプレイヤーの方を向いていなかった部分だったかというのが理解していただけたのではないだろうか。まあゲームの容量の問題もあるこの時代、少ない容量でできるだけプレイヤーの足止めを行わなければいけないという事情もあったのだろうが…もうちょっとなんとかならなかったのかと思ってしまう。
「惑星メフィウス」その他のトピックス
ここまで本作「惑星メフィウス」の良いシステムと問題の部分について説明してきたが、最後にそれ以外の本作に関するちょっとした話をトピックスでまとめてみよう。
いきなり《詰んだ》人がいた?
説明書を読まないから…
本作は始まるとすぐに税関で、パスポートの有無、自分の名前、出身、目的を立て続けに聞かれるのだが、当時ここで何と答えたらよいのかわからずに適当に入力してしまい、そのせいでゲームがクリア不可能になってしまったプレイヤーが結構いたそうである。

ここで正しい答えを入力できないと、この後で現れる協力者から大切なものが受け取ることがず、結果的にゲームがクリアできなくなってしまう"詰み状態"になってしまうのだ。そしてこの正しい答えは、実はゲームに付属する説明書の「ストーリー」を読めばちゃんと書かれているのだ。
詰まってしまったプレイヤーは説明書を読まなかったのか、それとも説明書が無い状態で遊んでいたのか…。
《ルート》が一つじゃない?
頭を使えば別の正解も…
本作内のシークエンス2のシーン1「スラム街」での目的はスラム街から「シティ」に侵入する事なのだが、スラム街からシティへの入口には「鍵」かかかっており入ることは出来ない。しかも周囲にはポリスがウロウロしていて、下手に動くと厄介なことになる危険な状況だ。
実はここでシティに侵入する方法は2通り存在しており、うち一つはプレイヤーがシティの住人であることを証明するものを手に入れるという、比較的簡単な正攻法。そしてもう一つは何とかして「鍵」を入手するという、ちょっと考えないと難しいまさに奇襲戦法といえるものだ。

当時のこういうAVGでは先に進むルートが1つしかないのが普通だったので、このように頭を使う別なパターンでも進行できるというのは自由度があって面白い部分であった。
《スタッフ》がカメオ出演?
開発プロデューサーが!
本作内のシークエンス2のシーン2「シティ」にてプレイヤーが訪れるあるショップには、様々な宇宙人たちが登場するSF作品である本作においては異色ともいえる「普通の人間」が登場する。この人は本作の制作プロデューサーである「横山英二」氏で、なんと作品中にカメオ出演していたのである。


オープニングのスタッフロールにも、トップバッターで横山英二氏の名前が登場している。
ちなみに、ゲーム内で横山英二氏が座っている机の前にあるモニターに映っているのは、本作「惑星メフィウス」の5か月ほど前に発売された「3Dゴルフシミュレーション」という作品の画面で、この作品も横山英二氏が制作したものである。

《VHD》は何者だ?
東映アニメーション制作

本作「惑星メフィウス」は、様々な機種でカセットテープやフロッピーディスクなどの媒体で発売されたのだが、X1とMSXのみ「VHD(VHSではない)」というレーザーディスクに近い珍しい媒体でも発売されている。
VHD版はテープ版やFD版と異なり、ゲームをプレイするとテレビ画面に本作のグラフィックを元にして「東映動画(東映アニメーション)」が制作した本物のアニメーションが再生され、特定のポイントになると画面下に"*"が表示されコマンドを実行できるようになるという、アニメとゲームが融合したタイトーの「タイムギャル」のような特殊な作品だった。
ちなみにVHDと言う媒体はレーザーディスクとの規格競争に敗れ、1980年代末にはほぼ姿を消している。
おまけ
喋ったぁぁぁぁぁ!!!
最後に、本作の「PC-6001mkII」版のみの話になるのだが、PC-6001mkIIというパソコンには元々音声合成機能という機能が備わっており、これによってテキストを音声として喋らせたりすることができたのだ。これは今では大抵のYoutubeやらニコニコ動画やら様々な動画でも見かける機能だが、当時は非常に珍しいものだったのである。
とはいえ現在ほど綺麗な音声ではないモヤモヤした音声ではあるが、それでも本作「惑星メフィウス」ではキャラクターによって喋る音声が少し変わっていたりなどし、また登場するのが宇宙人ばかりだからか妙にその変な音声がマッチしていたように思う。
PC-6001mkIIギャラリー






【最後に】思ったことをもろもろと
「惑星メフィウス」という作品を纏めると?
「惑星メフィウス」は1983年にT&Eソフトから発売されたコマンド入力式AVGで、「スターアーサー伝説」という三部作シリーズの第1作目であった。
また当時のコマンド入力式のAVGが抱えていたシステムの問題を解消し、プレイヤーの労力やストレスを軽減する試みを行っていたことが、システム面で高く評価できるポイントだったと言える。
ただ終盤でゲームクリアの足止めをして、ただひたすらにプレイヤーに労力を強いてしまった事で、システム面で得た高い評価を台無しにしてしまった。そういう評価になるのではないだろうか。
媒体がテープという事も
ただフォローをしておくと、この時代はまだゲームの媒体がカセットテープとフロッピーディスクとが共存している時代で、テープとFDでは性能に差があり、その両方で同じものを発売するならば当然低い方の性能に合わせなければいけないだろう。
カセットテープは総容量的に言えば当時のFDとそこまで差はないかもしれないが、問題はデータを読み込む容量とそれに掛かる時間だ。テープでは90kbのデータを読み込むのに10分程掛かってしまうそうで、その為FDのようにデータに頻繁にアクセスするのは現実的に難しい。
従ってテープ媒体の場合、最初に5分とか10分かけてデータを読み込み、ある程度まではその時読み込んだ容量分だけで何とかするしかないのだ。そういう状況で、可能な限り容量を使わないでプレイヤーを足止めするとしたら、あの砂漠のシーンのようにするしかなかったのかもしれない。
ちなみに本作のテープ版はテープ3本組で、各シークエンス毎にテープを変えていく仕様になっており、テープ媒体の作品としては結構な規模であった。
「惑星メフィウス」という物語の完成
個人的に以上のような評価をした本作ではあるが、最初からエンディングまで通して遊んでみるとその評価としては、ちゃんとユーザーに物語を完成させてくれる良いAVG作品だと感じられた。
と言うのもAVGの中には、物語としての目的と画面に表示されるの状況との関連性が薄く、画面に謎っぽい状況があるから「とりあえず何とかする」というのをただ積み重ねて、それでいつの間にかゲームクリア。言ってしまえば「謎解き集」のような作品も少なくなかったからだ。
それはそれで面白いかも知れないが、内容が本作のような「冒険活劇モノ」のAVGであれば、プレイヤーは自分(=主人公)の行動の積み重ねがこの物語を完成させたという感覚を得たい筈だし、それが所謂ゲームに「感情移入」できるということだろう。
誰だって、折角頑張ってゲームをクリアしたのに「結局これはどういう話だったんだろう?」と振り返って考えてしまいたくは無い筈だ。そしてそのためには、画面に現れる状況は物語と脈絡のあるものであり、謎解きはその状況を打破する手段であれば良いと筆者は考える。
その意味で本作は、主人公が「レイソード」を手に入れるという目的のため、レイソードやそれが眠るピラミッドの情報を集め、協力者からの援助を得て、先に進むために必要な物や暗号を揃え、過酷な砂漠を超えてピラミッドに辿り着くというように、ゲーム内で起きる状況に物語との脈絡があり、その状況をプレイヤーが謎解きで打破していくという作りになっていた。
だからこそプレイヤーが本作をプレイし頑張ってクリアすることで、この「惑星メフィウス」という物語を完成させることができたと実感できたのである。これはこの時代のAVGとして大きく評価したいところであり、本作がゲーム史に残るAVGであると言われても個人的に納得のできるところなのだ。
今回はここまでに
と言ったところで、「惑星メフィウス」という作品についての話はここで終了としたい。皆さんは、この作品について、なにか思い出や思うところはあっただろうか?良ければコメントに残していただきたい。
遊びたくなったら?
もし今回の記事を読んで「惑星メフィウスに触れてみたい」とか、「惑星メフィウスをまた遊んでみたい」と思った方は、以下のサイトを参考にして欲しい。
PC-6001mkII版
PC-8801/mkII版
FM-7版
MSX版
レトロゲーム配信サイト「ProjectEGG」にて現在配信中。対応機種が版Win10より古いものになっていますので購入については自己責任でお願いします。
≫EXIT
お疲れ様でした!

今回の記事はどうだったかの?何か感じた事があればどんなことでもコメントに残してくだされ。それと当ブログは以下のブログランキングに参加しておる。クリックして貰えるとわしの「やる気」がめちゃアップするぞい!

いつもバナークリックや拍手していただいて、誠にありがとうございます!
コメント
EGGは改善されてるかもしれませんが、80年代当時私が遊んだP6版はとにかく描画が遅くてイライラした記憶が。
砂漠ではコード迄は自力で見つけましたが、プレートは無理だったんで結局、T&Eソフトに手紙を出して答えを見ました。いや、あれ無理。
今遊ぶとしたら喋られなくても描画が多分早いだろう別機種の方が良いかもですね。
>>1
>P6版はとにかく描画が遅くて
確かに当時の人の話を探してみたら、やっぱり描画の遅さが…っていう意見はありましたね。ただおっしゃってるようにEGG版は改善されていました。
>プレートは無理だった
いやー、あれは厳しいっす。仮に暗号だけ集めてピラミッドに入れても、その先に進むためにプレートが必要だなんて思いつきませんものw
>別機種の方が良いかも
そうですね、私は今回喋るというのを聞いてみたかったのでP6版でやりましたが、もし今後「暗黒星雲」をやるなら他の機種でやると思います。
あけましておめでとうございます。
新年最初が惑星メフィウスとは、エッジが聞いている。
私は、FM7版で遊びました。サラトマやデゼニランドを
遊んだあとでのプレイでしたので、遊びやすい印象でした。しかし、あの砂漠は…。
>詰み…
個人的には、詰み肯定派です。ゲームの中で時間の経過を感じられるからです。プレイヤーもゲームの中に入り込んでしまったのですから、失敗も物語の終焉と言えるかもしれません。と言いつつも、先の展開なんて読めませんよね、サラトマなんか今後のことを考えれば、最初に武器を手放すなんてあまり考えません。
>>3
>あけましておめでとうございます。
明けましておめでとうございます。
>新年最初が惑星メフィウスとは
本当は2022年最後の更新にする予定でしたが、その作業過程で「AVGとは」の記事を思いついてそっちを先にしたんですよね。
>あの砂漠は…。
ですよねー?w
>最初に武器を手放すなんて
確かに。明らかにプレイヤーの過失と分かる行動についてはペナルティはあって然るべきだと思います。ただ「ゲーム」である以上、プレイヤーはどんどんアクションを起こすべきで、「何かしたら詰むかも…」と萎縮させるのはゲームをつまらなくする要因のようにも感じます。
まあこの時代のゲームは、ユーザーに極力クリアさせないのが凄いゲーム、みたいな風潮もあったのでそれはそれで時代に合っていたのかもしれないですけどね。
思わせぶりに引っ張ってすみません。
もう一つの提言、それは
「イベントの解決方法に複数の手段を用意して欲しい」
でした。
黎明期の『惑星メフィウス』で複数の解決手段が用意されていたのは驚くべきことです。
この先見性がさらに発展しRPGの流行がもう少し遅れて、T&Eソフトがもう少しAVGに
傾注していたら、ひょっとしてアクティブロールプレイングではなくアクティブ
アドベンチャーが登場していたのでしょうか?
>>5
>思わせぶりに引っ張ってすみません。
なるほどこっちに続くわけですねw
>「イベントの解決方法に複数の手段を用意して欲しい」
>『惑星メフィウス』で複数の解決手段が用意されていたのは
これは私も凄いと思いましたね。例えば一つの画面で違う動詞コマンドでも同じような効果があるというくらいならあり得たとしても、惑星メフィウスの場合は解決手段への「ルート」が完全に別物になっていますからね。この時代のAVGでは画期的でした。
>アクティブアドベンチャーが登場
ある意味これは次回作がそれにあたるのかも…しれませんね?